はじめてのしゅぎょう

 俺・・風太。
連れ帰った2匹の瓜坊に、楓(♀)、柏(♂)と名付け、飼い始める
こと3日。
今日も朝から、山へ熊狩りに行って来た。
いやぁ・・けっこう居るもんなんだねぇ・・熊。
最近は、小太刀の扱い方にも慣れてきたし、魔法のイメージも上
達してきた気がする。
それに、《本来の》魔法も色々試してる。
なんというか・・《本来の》魔法は、MIN値に因って威力は上
がるが、消費MPは威力ではなく魔法のレベルに比例して増える
ので、いまいち使い勝手が悪い。
しかも、魔封じ系の魔法をレジストする為には、これまたMIN
に因る抵抗が必要で・・精神防御がオートレジストの対応スキル
とはいえ、どこまで信用できるのか・・?
逆に、《本来の》ではない魔法・・いわゆる、イメージ力を元に
発動できる《直伝の》魔法は、HPを消費して放つという変わっ
た特性がある所為で、魔封じの対象には成らない。
というか、そもそも効かない。
ちなみに、消費したHPは回復魔法で回復するし、VITで代替
消費に切り替えるコトも可能ってんだから・・。
魔封じが【魔法使いキラー】なら、セイル様に教わった直伝魔法
は魔封じが効かないのだから、【魔封じキラー】だな。
MP消費は、一律100ポイントとデカいが、使い勝手が良過ぎ
る時点で、利点しかない。
だから、《本来の》魔法を封じられても、《直伝の》魔法で迎撃
できるという点では、最強の初見殺しじゃないかな?
まぁ・・対人効果として、だけど。
ただ、調子に乗って使い過ぎると、うっかりピンチに陥るかも。
とはいえ・・そろそろ、対モンスター戦も経験しといた方がイイ
かもしんない。
熊肉も大量にストックされてて、正直、熊鍋は飽きた。
ジビエ料理専門店でも有れば、卸すのもアリかなぁ・・なんて思
い始めてる。
調理師免許は有るから、ラーメン屋でも始めようかしら・・?
狩猟免許は持ってるけども、銃砲類取り扱い免許無いから、どう
獲ったかツッコまれたら困るしなぁ・・。
しばらくは、インベントリの肥やしだな。
来年の、ダンジョン生成後の世界に賭けよう。
もしかしたら、モンスター肉の料理屋なんかが流行るかもしれな
いし、その頃にでも出せば熊肉も怪しまれないだろう。
そういやぁ、レベルも上がり難くなってきたしなぁ・・。
ちなみに、現在のレベルは35。
ステータス値は・・推して知るべし。
というか、桁が恐ろしいコトになってんだよなぁ・・。
これ、ゲームだったらバランス悪過ぎっしょ!

 名前 :式瑞風太   年齢 :28    性別 :男
 種族 :人間?    職業 :なし    属性 :中立
 Lv :35
 HP :3271951000/3271951000 
 MP :8963510000/8963510000
 STR:725300000
 DEF:880907000
 DEX:519840080
 AGI:424280000
 MIN:870907300
 VIT:359809420
 LUC:7777(固定)
 装備 :幻閃のハーフローブ,雷虎のハーフパンツ
     聖戟のサンダル,魁塵刀・轟炎,壊塵刀・曝氷
 スキル:身体能力上昇Lv Max,精神防御Lv、6
     魔力上昇Lv,5 長柄武器Lv,8 剣術Lv,8
     刀術Lv,8 小太刀Lv,8 投擲Lv,8
     二刀流剣術Lx,9 二刀流武器術LV,9
     全言語理解 全言語解読 鑑定Lv,Max
     異界通信 韋駄天 超幸運 農耕 筋力増強
     成長促進Lv,Max(取得経験値1000倍) 遅老化
     隠蔽 隠密 全属性魔法 一撃必殺 鍛冶 瞬着
 固有スキル:風太専用インベントリ(解体、合成機能付き)
 称号 :裸族,異世界転移者,異世界帰還者,神に遭遇せし者
     使徒(笑)
 加護 :幻皇セイルの加護,幻王レフィルートの加護
     幻王メイディスの加護
 装備 :ON

種族が【人間?】になってるのは、きっと気のせいに違いない。
・・ん?
いつの間にか加護が増えてる・・?
 「すんません、セイル様〜。ちょっと聞きたいコトが・・」
 「あいさー。どした?」
 「いつの間にか、メイディス様の加護が増えてるんですが・・
  セイル様んトコの関係者ですか?」
 「あ!?鬼神メイディスか!ちょっと待てよ・・今、問い質す
  から」
 「あ、はい」
・・・。
・・。
 「お待たせ。ウチの宴会隊長、風太の裸族っぷりに感銘を受け
  たとか言ってんだけど・・お前、何した?絶対、酒の勢いで
  加護与えてるぞ!?」
 「あー・・そのぅ・・ここ最近、自分の土地なのをイイ事に、
  全裸で熊狩りしてました」
 「それだ!!おそらく、裸族の効果、パワーアップしてると思
  うから、確認しとけよ?」
 「ぅぁー・・イヤな予感しかしない・・」
 「あとな・・そろそろ、ウチで修業しないか?全裸で熊狩りで
  きるほど余裕なんだろ?」
 「あー・・それも一応、考えてました。最近、レベル上がらな
  くなってたので、丁度良かったかもしれません」
 「じゃあ、明日の朝、拾いに行くから準備しとけよー」
 「お待ちしてます」
 「おう」
う〜ん・・便利。
さて・・裸族効果の確認・・と。

 裸族:属性ダメージ無効,全状態異常完全無効,
    体感温度最適化,全裸時物理ダメージ半減,
    有装備時の基本ステータス値をLv×100万に固定,
    全裸時の基本ステータス値をLv×1000万に固定,

 ステータス値の計算方法=基本値+LvUP時の上昇値+装備

やっぱり、恐ろしいコトになってた・・。
つーか・・今のレベルで基本値が3500万をベースにしてるの
に、まっぱで歩くと10倍の3億5000万って・・どおりで桁
が跳ね上がってたワケだよ・・。
装備で補正されてるとはいえ、数値がエグい!!
お願い、神様達・・自重してぇー!!
俺・・来年までに神様の仲間入りしてたりしないよな!?
 そして、翌朝・・庭先で全裸体操やってたら、お迎えが来た。
お迎えっても、黒尽くめの骸骨さんじゃなく、セイル様な。
 「お待『みぅ〜』たせ」
・・・なんか、変な声被らなかったか?
振り向きながらフル装備に換装したら、そこには大量の子猫を抱
えたセイル様が・・。
 「ど・・どしたんスか?その子猫・・」
 「日本中から回収してきた捨て猫だな。今、この時点で全員、
  ウチの子になるのさ」
 「は、はぁ・・」
 「さ、行こうか!」
そんな言葉と共に、俺の視界は暗転した。
暗転時間は、ほんの一瞬・・。
次に視界に飛び込んで来たのは、広大な草原に犇めく無数の猫!
そんな猫達は、突然現れた俺達の方に一斉に視線を向ける。
あまりにも大量に居過ぎて、ちょっと怖いんだが・・セイル様は
気にもせずに、両手に抱えた子猫達を降ろしていた。
先住猫達は、新入りの子猫達を普通に受け入れているようだ。
どうやらセイル様は、猫達に安住の地を提供してるらしい。
聞けば、この地は猫しか居ない神界らしい。
食事は、専用ゲートの先に用意されてて、いつでも食べに行ける
し、トイレや風呂まで用意されてるとか。
つーか、猫が自主的に風呂とか入るのか?
猫って、自分の毛が濡れるのを嫌がる傾向にあるんじゃなかった
っけ?
 「そんなの猫それぞれなゃよ」
そんな呟きに返答したのは、セイル様じゃなく、そこで暮らす猫
本人・・いや、本猫。
神界に住み始めると、1年もしないうちに人語が喋れるようにな
るらしい。
それ、神格化してんじゃないの?
それはそうと、修行に来たんじゃなかったっけ?
そう尋ねる前に、またしても視界が切り替わる。
そこには、猫耳の少年が2人と、その背後に高さ2mぐらいの扉
が設置された岩壁が有った。
 「えっ・・と。ここは・・?」
 「ここが、修行の場さ。こいつらは、今回のサポートを頼んだ
  探索メンバーで、リュートとレイだ。そこに風太と俺の4人
  で潜る。ダンジョンアタックの予習も兼ねて、修行に充てよ
  うと思ってな・・」
 「そうなんですか。あ、風太です。よろしくお願いします」
 「うん。ボクはリュート。ヨロシクね♪」
 「オイラはレイ・ヴィート。レイでイイよ。よろしく」
こうして俺は、異世界のダンジョンで修行するコトになった。

                       ≪つづく≫