転生者 俺の名は神野正義(こうの・せいぎ)。 気付けば、仄暗い空間に居た。 上下の感覚は分からないが・・身体に異常は無いらしい。 さて・・何故、こんな所に居るのか? なんとか思い出そうと、記憶を探ってみる。 「・・・・・そうだ。俺は・・確か、階段から落ちて・・?」 当たり処が悪かったのか、そのまま意識を失ったのだろう。 気付いたら此処に居たワケだが・・どうやら病院ではなさそうだ。 「やべぇ。もしかして、ここが【あの世】ってヤツか?」 おそらく、自分は死んだのだろう。 階段落ちの挙句、当たり処が悪くて即死・・それが自身の辿る運命だったのだろう が、問題が有る。 それも、大問題と言うべき問題が・・。 PCの作業途中だったから、電源が入れっぱなし・・。 しかも、お宝フォルダの整理中で、趣味全開な18禁エロフォルダが!! 「マズい!俺の死体は、どうなった?まだ発見されてないのか!?こんな死に 様を晒すんなら、せめてフォーマットさせてくれ!!死ぬ未来は変わらなく てもイイから、やり直しを要求する!!」 そうして慌てふためく俺の前に、唐突に見慣れた端末とモニターが現れた。 それは、紛れもなく俺のPC・・。 某アニメキャラのBL性交画像を壁紙にした、煩悩マシン1号機だ! ちなみに2号機は猫画像塗れの全年齢対応機だから、見られても大丈夫♪・・じゃ なくて、とにかく1号機の証拠隠滅を図らねば!! なんだか知らんが、神様ありがとう!! 心の中で礼を言いつつ、お宝画像満載のHDDをガチャンしてから、フォーマット を開始すると、俺の前からPCが消えて行く。 さらば、我が煩悩の恋人よ!! 一仕事を終えて落ち着いたら、視界の片隅に黒衣の男性が出待ちしていた。 「あぁ、すみません、お待たせしてしまいまして・・。えぇと・・」 「あぁ・・気を楽に。私は、この空間の管理者だ。名は、ヴァルザード」 「あっはい。ヴァルザード様ですね。・・で、これからどうなるんですか?」 「ふむ・・。実はだな・・君は、まだ死んでない」 「えっ!?」 「階段から落ちて頭部を強打、及び、全身骨折の末、意識不明の重体だが・・ 運良く家族が気付いて救急搬送され、緊急手術の末に命は助かる。だが・・ ぶっちゃけ、植物人間と化す。ちなみに、脳死ではない」 「・・・」 「延々眠り続ける為、老化はしないが・・目覚めるのは250年後だ」 「おぉぅ・・」 「で・・だ。君には3つの選択肢を用意した」 「3つ・・ですか」 「ああ。このまま元の身体に戻って運命を受け入れるか、死を選択して輪廻の輪 に乗り、次の身体でゼロから転生するか・・記憶と性癖を残したまま異世界に 転移するか・・。無論、異世界転移を選択するのなら、新しい身体は用意する し、何某かの能力も与えよう」 「ちょっ・・ちょっと待った!記憶と性癖!?」 「うむ。記憶と性癖だ。記憶が残ってる以上、性癖はセットが基本だろう?」 「・・セットなんだ」 「そうだな。それに、その手に持った記録媒体も無駄にしたく無いんだろう?」 「手?・・の、記憶媒体!?」 言われて、左手の重みに気付くとそこには・・・・・あれっ? ガチャンの内蔵HDDが握られたままになっていた。 中身は当然・・お宝エロ画像満載の、アノHDDだ。 ・・つい、いつものクセで、重要ファイルをバックアップしてからフォーマットして しまったのだ。 閲覧可能なPCも無いのに、何故!? そこで俺は閃いた。 こういう異世界転移モノのセオリーとして、ステータスとかインベントリとか有った よな? 無駄にそのテのファンタジーノベルを読み漁ってたワケじゃない。 こうなったら、異世界転移を選択して文明レベルをジャッキアップしてやる!! そんな意気込みを胸に、俺は異世界への転移を申し出たのだった。 「転移か・・良かろう。では、時間停止のインベントリと言語能力は基本セット としよう。それ以外に、必要な能力を・・そうだな?3つで、どうだ?」 「あー・・その前に、転移先の世界って、どんな世界なんですか?」 「いわゆる【剣と魔法の世界】だな。私の加護も基本セットに含まれるから魔法 は全属性が使用可能だ。ちなみに文明レベルは、8・・といったところか」 「微妙に高いですね?地球で・・いや、日本で言う処の、どの時代ですか?」 「昭和中期だな」 「ぐはぁ・・ほぼ最近じゃん」 「まぁ・・次元神が頑張ってるらしいからな。我師の眷属の弟子が治める世界と 聞いている」 「ヴァルザード様の師匠の眷属の弟子・・ですか?」 「うむ。とはいえ、眷属の者達は全員が師の弟子だから、我にとっては兄弟子や 弟弟子でもある」 「こちらとしては、暮らし易ければ有難い限りなのですが・・」 そんな、他愛無い会話も挟みつつ、スキルを決めて行く。 そうして決まった俺のスキルは、以下の通り。 【ステータス内PC】・・ステータス展開中に、画面をPCと切り替える事が可能。 空中に手を翳すと、透明なキーボードとマウスが現れる。 色変更可。お宝HDD(16TB)内蔵済み。 オプションとして、カメラ機能も追加してもらった! 何でも言ってみるもんだな・・。 【クローンコピー】・・・どんなアイテムでも、MPを消費すればクローンコピーが 可能になる。但、神器と称されるようなアイテムは不可。 世の中には、神器を超えるアイテムも有るらしいが・・。 【消費MP0.1倍】・・全ての魔力消費量を0.1倍にする。 常駐スキル。 なにげに【消費MP0.1倍】は冗談のつもりだったんだけどなぁ・・。 ヴァルザード様に送り出された俺は、遠目に街が視認できる草原の傍らに居た。 どうやら、ここが異世界らしい。 新しい身体を確認しようと川面に立ってみたら、顔は以前のままだった。 年齢は据え置きって話だったから24歳だけど・・身体は違う。 うっすら筋肉質な感じの胸筋は、数年前の学生時代を思い出す。 だが、それ以上に驚いたのは、あの腹筋が、まさかのシックスパック!? 二段に割れた無様な腹は、見る影も無かった。 今までの人生で、腹筋が6つに割れてたコトなんか無いぞ!? そして、我が息子は・・おぉぅ・・基本が当社比1.5倍ぐらいになってた。 色々アレだが、ヴァルザード様ありがとう♪ というか、あの方は結局、神様だったんだろうか? ・・・まぁ、深く考えるコトでも無いし、イイか。 ちなみに服装は、上下共に緑のジャージだった。 靴はスニーカー・・。 この世界では、一般的な住人の服装にしてくれるという話だったが・・これで良いの か?異世界生活・・。 とりあえず、ここで悩んでても仕方が無い。 さっそく街まで行ってみよう♪ 街門に異世界で御馴染みの門番は居らず、基本的に出入りは自由だった。 街の通りには色々な店が並んで居て、看板には馴染みの無い記号のようなモノが書か れてるんだが、言語能力スキルのおかげで、まったく不自由なく読める。 そして・・理解した。 あぁ・・確かに昭和中期の街並みっぽいわ・・と。 しかも、ここ・・異世界のハズなのに、何故かレンタルビデオ屋が有る。 再生機器とか、どうなってるんだろう? そんな事を考えながら、街の中心部らしき噴水広場のような所に辿り着く。 広場に居る人の数は10人ぐらいだけど、意外に若い人が多いな。 さて・・とりあえずベンチにでも座って、ステータスの確認と行こう。 この身体のスペックと、所有スキルの確認は必須事項だろう。 そう思いつつ、ベンチに座ってステータスを展開しようとした瞬間!・・俺達は異変 に遭った。 そう・・【俺】、ではなく・・【俺達】だ。 その場に居た全ての人達が異変の発生を見ていた。 そして、俺を含めた5人が、魔法陣に因って攫われたんだ。 だが・・俺だけ隔離されたらしく、またしても仄暗い世界に立っていた。 「・・あれ?何、この展開・・?」 身体が猛烈に痛い。 しかも、焼けるような激痛レベルの痛みだ。 なんだこれ?? 死に掛けて転移したばっかなのに、もう俺死ぬのか!? 意味も分からず、理不尽な事態に巻き込まれ、俺は混乱の極みに居た。 そこに声が聞こえたんだ。 ヴァルザード様とは違う、地の底から響くような低い声が・・。 『力が・・欲しいか・・?』 「あっ、え?」 『貴様は、異世界からの勇者召喚に巻き込まれ、魔法陣と現世の狭間に挟まれて 死んだ・・』 「・・・・」 あまりにも衝撃的な内容に、思考が一瞬止まった。 ついでに、混乱した頭も冷静さを取り戻すが・・そうか、結局死んだのか・・。 転移先で召喚に巻き込まれて死ぬとか、どんだけラック低いんだよ!? そんな嘆きに応えるように、声が響く。 『理不尽なる死を迎えし者よ・・。運命にも抗える、力が・・欲しいか・・?』 「ち・・から・・?」 『欲するならば応えよ・・。欲するならば、我が力をやろう・・』 「どう・・すれば・・?」 『貴様のスキルを一つ差し出せ。さすれば貴様は生まれ変わり、我が力の後継者 となるのだ』 「・・分かった。好きなのを持ってけ!俺に、力をくれ!!」 『よかろう・・。契約は成就した。転生先に、力の使い方を教える者が居る。あ とは、その者を・・頼るが・・良い・・。さらばだ、次代の魔王よ!!』 「・・・・・・・・・・・・・・えっ!?」 それから、どれだけの時間が流れたのだろう? 転生し、物心が付いた頃・・俺は、セイルという名の魔法剣士に育てられていた。 あの時うっかり、何でも持ってけと言ってしまったが・・実は、ちょっと後悔した。 【何でも】って、要はランダムなんだよなぁ・・。 そういえば、ステータス・・どうなったんだろう? 確認した俺は、仰天した。 そこには・・。 名前 :セイギ・コウノ(5才) 種族 :光魔族 性別 :男 クラス:魔王 職業 :子供 レベル:1 HP :1050万39/1050万39 MP :1億983万6002/1億983万6002 ATX:25000 DEF:56億8000万11 DEX:20000 AGI:800 MIN:1億 LUC:38 VIT:1123万 装備 :ドラゴンローブ,柳の枝木,合皮のサンダル スキル:全属性魔法,ステータス内PC,クローンコピー,消費MP0.1倍, 全言語フリー,全魔法言語理解.魔族の理,魔王の魂,魔王城構築, 神理眼,神の魂,神域展開,誘惑の瞳,性技の極(同性特化), 肛技穏蜜(同性専用,肛淫特化),魔力超回復 称号 :転生者,魔王を継し者,幻皇の弟子 加護 :影神ヴァルザードの加護,魔王ヴィースティンの加護 消えたのは、インベントリである事にショックを隠し切れないが、それ以上に衝撃的 なスキルが有ったコトに、しばらくフリーズするセイギだった・・。 そんなツッコミ処満載なスキルはともかく・・ここに、最強中立神に育てられつつ、 其れを師と仰ぐ魔王が誕生したのだった・・。 「お前・・何気に色欲全開だな・・」 《つづく》?