童(わらし) そこには、白装束を着た子供が居た・・。 おかっぱ黒髪に、白い肌・・足は裸足。 年齢は8才前後か? 見た目より幼く見える、可愛らしい少年だ。 彼は、ポケー・・っとした表情で、宙に逆さに浮いていた。 宙にさえ浮いていなければ、普通の子供にしか見えないが・・その状況を見れば、 間違いなく、人外の者であるコトが分かる。 だが、仮に視えるとするならば、それは無垢な子供か、高名な霊能力者か・・。 彼の視線の先には、ダンボールに入った5匹の子猫達の姿が・・。 箱にはボロボロの毛布が敷かれ、箱のフタ裏に《どなたか拾って下さい》の文字が 刻まれている。 早い話が、捨て猫だ。 そこに1人の青年が立ち寄り、捨て猫達の前にしゃがみ込む。 「はぁ・・。なんて、勝手な飼い主だ。育てられないからって、こんな可愛い 子供達を捨てるなんて・・」 『!・・・(視線)』 青年は、子猫達を全員その懐に抱え込み、歩き出す。 『・・・(視線、追う)』 「お前、なんか用か?」 『・・・(視線)』 青年は、その視線を感じ取っていた。 そして、少年の正面に向き直る。 「お前だよ。空中で逆さ立ちしてる子供!お前のコト!」 『・・えっ!?おらが、視えるだか?』 その光景は、周囲の人が見たら、アレは何と話してるんだろう?とさえ思える状況 だった。 なにしろ、普通は誰にも見えないハズだから・・。 「そう。お前。つーか・・お前、何者?」 『おら・・座敷わらしだ。あー・・でも、前に住んでた家が無くなっちまった がら、今は、ホームレスわらしか・・』 「ふぅん・・。座敷わらしって、ホームレスにもなっちゃうんだ・・」 『んだなぁ』 「何処にでも、気に入れば住めるのかい?」 『う〜ん・・まぁ、おらと反発するようなのが居るトコだと無理だけんど、だ いたいのトコには住めるだな』 「そっか。じゃあ、お前も一緒に来るか?」 『えっ?』 「住めると思ったら住んでけばイイし、住めそうなトコが見付かるまでの間だ け居てくれても構わないし・・なんだったら、俺んトコの子供になってくれ ても構わんぞ」 『・・子供はともかく、ホントに、住んでもええだか?』 「構わんよ。今回は、猫だけ拾いに来ただけなんだが、この際、座敷わらしの 1人ぐらい、珍しくてイイかもしれん」 『・・。だば、ちぃっと世話になるだ』 「そっか。じゃあ、一緒においで。・・お前、名前は?」 『座敷・・』 「じゃなくて!お前が、まだ人だった頃の名前が有るだろ?」 『あぁ・・。えーっと・・何だっけ?もう、800年ぐらい前のコトださげ、 すっかり忘れちまってるだ・・』 青年は、宙に浮くホームレスの座敷わらしを引き寄せ、その胸に手を充てると・・ 「・・・。太助」 『ぁ。・・そうだ。おら、太助だ・・。子沢山の貧乏家に生まれで、口減らし さいで死んだあど・・座敷わらしさなっただ・・』 「そうだな。座敷わらしの正体は、大昔に口減らしで死んだ子供の魂が転生し た姿だ。だから、純真無垢な心のままで妖怪化するんだ」 『そったらごど、よぐ知ってだなや!?・・んだぁ。おらぁ・・転生して、こ うなっただ・・』 「まぁ・・妖怪化っても、ほとんど霊体なんだけどな。だから、座敷わらしが 居る旅館とか、たまに話題になったりするコトも有るんだよな」 『そんなトコが有るだか・・?おらの居た家とは違うけんど、他にも仲間が居 るだなぁ・・』 「そうだな。さて・・そろそろ行くか!」 『あ。そういやぁ、家主様の名前は?』 「俺は、セイル。幻皇セイルだ」 セイルは、子猫もろとも、座敷わらしの太助を抱いて、その世界から跳び去った。 これは・・幻楼界の神、幻皇セイルが世界を跳び周り・・養子となる子供達を集め ていた時代の・・そんな、物語である。 ・・・現時点での養子・・長男:キアス,次男:太助。 『父っちゃ。おら、キア兄ぃと風呂入って来るだ』 《つづく》?