No1.南軍連合旗(2002年9月8日)

ロックの話なのに政治や思想の話を持ち込むのは、21世紀においては馴染まないのかもしれない。1970年代までは、ロックと言えば「反体制」といった色合いが強かったが、1980年代からは、完全に音楽産業のひとつのジャンルと化してしまった。「産業ロック」と言われ始めたのもこの時代である。私自身はそのことを悪いことだとは思わない。1980年代以降のロックは、それまでとは違った良さを持ち合わせていると思う。

さて、「mt_gemのコラム」の第一回目は、レーナード・スキナードがライブ・ステージのバックに掲げる大きな旗“Confederation Frag”について。日本では「南軍旗」とか「南部国旗」、「南部連合旗」と呼ばれている。正式な日本語訳としては「南部連合旗」が正しいのだろう。

時は1861年、アメリカでは奴隷制度を起因として、アメリカ連邦とアメリカ連邦から離脱した11州との内戦が始まった。いわゆる南北戦争(Civil War)である。南部連合の11州とは、サウスカロライナ州、フロリダ州、ジョージア州、ミシシッピ州、ルイジアナ州、テキサス州、ノースカロライナ州、ヴァージニア州、テネシー州、アーカンソー州である。南部連合旗には13の星が描かれている。正式には連邦を離脱しなかったが、北軍のみならず南軍にも多くの兵を提供したケンタッキー州、ミズーリ州の2州を星に加えている。

スキナードは、フロリダ州ジャクソンビルの出身で、ライブステージでこの南部連合の大きな旗をステージの後ろに掲げていた。南部連合旗を掲げ始めたのが、いつ頃かわからないが「南部の荒くれロックバンド」というイメージを植え付けたいレコード会社の政策的な戦略もあったように思う。スキナードは、レコード会社が変わった1991年の再結成後のライブステージでも、「スウィート・ホーム・アラバマ」の演奏開始時に、アラバマ州歌の演奏と共に南部連合旗を掲揚している。

この南部連合旗は、アメリカ、特に北部では好まれないようである。アメリカ国民同士が戦った証拠でもあり、この旗が現在でも人種差別の旗印に使用されることがあるからだろう。アメリカの白人至上主義者の集会を収録した映像でも、この南部連合旗をよく見かける。映画フォレスト・ガンプでは、主人公を追い掛け回す悪ガキどもが乗った自動車に、南部連合旗のプレートが貼り付けてあった。また今なお、ジョージア州など南部州の州旗には南部連合旗をあしらったものが多くある。

日本のサザンロックを演奏するアマチュア・ロックバンドのライブでも、この南部連合旗を目にすることが多い(私のホームページにも多数を掲載しているが)。北部人の方がご覧になると、仰天する光景かもしれない。ただスキナードなどサザンロックのファン意識は、外国の方が意味もわからずベースボールキャップの正面やTシャツに、漢字で「風」とか「強」とかを刺繍していたりするのとそれ程変わらない。

ある方から「スキナードの音楽は好きだが、あの南部連合旗は好きになれない」とメールを頂いたことがある。スキナード・ファンである限り、スキナードのレコードジャケットやビデオなどで目にするこの南部連合旗から目をそむけられないが、少なくともこの国旗にはこのような歴史的背景があることを知っておくことが必要かもしれない。