私達の思い

私達の思い

訴状より

      

 町へ申し入れ事項説明文
 私達志免五町内会に居住する住民は、ゴミ焼却場とし尿処理場を長年に渡り受け持って来ました。
約30年前、行政は、煙突の高さと同じぐらいの高台に団地が広がっているのを解っていながら、住民の必死の抵抗も虚しく施設の建設を強行しました。
人が生活する上で必要な施設との説明を受けて、地域住民の健康等の確保と1日でも早く撤去する事を条件に仕方なく承諾したのに、最初5年で撤去する約束が修理に修理を重ね今日まで稼動して来ました。 そのために、地域住民は他の地域にはないいろんな被害を受けてきました。
黒煙や悪臭により平穏な生活は妨げられ,健康を害しその上、将来に渡ってダイオキシンの恐怖が続くのです。その不安は筆舌に尽くし難い物があります。
この事はNHKの「クローズアップ現代」と言う番組や、平成9年9月月刊誌「現代」でも取り上げられたほどです。(参照、ダイオキシン汚染列島を行く.。)また、2つの施設が発生する被害を防止し、生活や健康を守る為に、町内会と住民は、志免町のために長い間特別の犠牲を強いられてきたのです。


 再三の住民の訴えも、施設を建ててしまえば「勝ち」と言うような行政の「おごりの姿勢」によって軽視されてきました。住民の生活を守る為にある行政が、住民を苦しめる、こんな理不尽が罷り通っていいか、と私達は幾度となく怒りの念を禁じ得ませんでした。


 昨年の3月、し尿処理場がやっと他所へ移転しました。当時の志免広報には、「異臭は漏れない最新式のすばらしい施設であると新施設の事が写真入で紹介されています。言い換えれば肥溜め同然の旧施設がいかに悪臭を発生させていたかと言う証明なのに、2ページに渡るそのわずか1行にも旧施設の記事は有りませんでした。「旧施設の地域住民には、長い間迷惑を掛けてきてほんとうににご苦労さまでした」という配慮の1行でもあったなら、どんなにか心が癒されたか知れません。本年末にはもう1つの施設であるごみ焼却場も役割を終えます。


 この時期に、志免町行政の責任者である町長が明確な見解を表明される事は、私達地域住民と志免町行政双方にとって重要な事です。誠実な謝罪と今後の適正な環境行政の推進に向けた決意が込められた見解が表明される事によって、私達地域住民は、これまでの約30年に渡る苦難の持つ意味を受け止め、又ダイオキシンの影響等による将来の不安に立ち向かっていく勇気を持つ事が出来ます。又、町行政への信頼を回復して行く第1歩となります。志免町行政にとっても、過去の過ちを真摯に受け止めてこそ、今後の適正な環境行政の推進や町民の町行政への信頼の増進が真に実現できるものと私達は考えます。


 新施設の住民には、施設を建てると言う事で、いろんな補償がなされました。しかし、同じ志免町の住民でありながら、30年間も旧施設を受け持ち、又被害を受けて来た住民には、「既成の施設には補償は出来ない」と言う事だけで何の補償もされません。補償が欲しければ、20トン焼却炉に「それ以上のゴミを燃やさせてくれ」と何のためらいも無く要求してきます。こんな行政の体質に住民として誇りや信頼が持てるでしょうか。


 本年末には、ゴミ焼却場も移転する事になっています。しかし、施設に翻弄され特別な犠牲を強いられてきた約30年間は,何の報いも無く放置されたままです。煙突を恨みながらガン等で亡くなった人達,悲しみのその家族、喘息やアレルギー疾患、子宮内膜症の重い症状や将来の不安等で今も悩まされている住民の心は少しも癒される事が無いままです。
 

 私達地域住民が、志免町のために永年負担して来た犠牲を考えれば、適正な補償措置を講ずる事は正義と公平に合致しています。新施設の移転先の住民には、補償措置が講じられていますが、町は、新施設は近隣の住民に被害をもたらさないと説明しています。現実に被害をもたらしてきた住民に何の補償措置を講じないでは、新施設の住民も真に安心して施設の受け入れを行うことにならないと考えます。
 

 前町長も勇退前の住民との話し合い(定例会)でやっと長年の住民の苦悩に感謝し、「今後話し合って行きたい。新施設以上の補償も考えている。」と表明されました。
 確かに補償措置が講じられても長い苦悩には比べようが無く、ましてや病気が治るわけではありません。しかし私達の長い苦しみを行政が認めてくれ適正な補償措置が講じられる事は、私達住民がこの間の問題にけじめをつけ、未来に向けて歩みだす上でも大切な事です。


 以上のような思いで、志免町町長に要求書を提出しました。しかし、受け入れられず残念ながら、同町内会の支援を受けて、約300世帯のうち160世帯から1名の原告ら住民が提訴に至りました。