訴状より

国家賠償法第1条1項の責任(歴代町長の故意・過失)

  そもそも被告は、地方公共団体として 「住民の福祉の増進を図る事を基本として地域における行政を自主的、かつ、総合的に実施する役割を広く担う」者である(地方自治法第1条の2第1項)。その上、被告は、本件焼却施設及びし尿処理施設を設置し、運営してきた主体そのものである。、

●  地方公共団体の責任

●  廃棄法上の責任

 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下、廃棄法と言う)第4条1項で市町村は、「一般廃棄物の適正な処理必要な措置を講ずるよう努めるとともに、一般廃棄物の処理に関する事業の実施に当たっては、職員の資質の向上、施設の整備及び作業方法の改善を図る等その能率的な運営に努めなければならない。」とされている。 また、当然の事ながら、このような施設の設置を行った市町村は「当該一般廃棄物処理施設に係る周辺住民の生活環境の保全及び増進に配慮するものとする」(同法第9条の4)とされているのである

●  悪臭防止法の責任

 悪臭防止法は「既成地域内に事業場を設置しているものは、当該既成地域についての規制基準を遵守しなければならない」(第7条)「規制地域内に事業所設置しているものは、当該事業所において事故が発生し、悪臭物質の排出が規制基準に適合せず、又は適合しない恐れが生じたときは、直ちに事故について応急措置を講じ、かつ、その事故を速やかに復旧する様に努めなければならない」(第10条)「何人も住民が集合している地域においては、みだりにゴム、皮革合成樹脂、廃油その他の燃焼に伴って悪臭が生じる物を野外で多量に焼却してはならない(第13条)と定めており、被告は、本件焼却施設及びし尿処理施設の設置を行った者として、悪臭防止法の前記規定を順守すべき責任がある。

●  杜撰きわまりない設置と運営

 ところが、前記第2記載の通り、本件焼却施設及びし尿処理施設は当初から周辺地域の生活環境に対する配慮の全く無い施設であり、かつ、被告はその運営に当たって周辺地域の生活環境に対する配慮を全く欠如させてきたものである。その結果、前記第3記載の本件被害を発生させたばかりか、被害の発生が分かっていながらその対策をも放置してきたものである。

●  本件被害発生の認識(故意)及び予見可能性(過失)

 本件焼却施設については、設置前から住民らによって被害発生の危険が指摘され、反対がなされたにもかかわらず強行建設されたものである。しかも、住民らが危惧したとおりの、また、危惧した以上の被害が現に発生したものであった。本件し尿施設にについても、周辺住民から、悪臭被害の訴えが繰り返し被告になされて来た。被告に被害発生の予見可能性があった事は明らかであるが、被害発生後もその対策を放置した事は、故意責任意外の何者でもない。

●  被告の責任

 被告は組織として、故意或いは過失行為を行ったものであって、国家賠償法第1条1項によって原告等が被った損害を賠償すべきである。尚「公務員」の特定は不要と考えるがあえて特定しなければならないとすれば、本件焼却施設及びし尿処理施設設置後の被告の歴代町長の故意、過失、というべきである。町長は、被告を統括し、補助機関たる職員を指揮監督する権限と責任を有する者であり(地方自治法第147条、第154条)しかも本件の施設の被害について十分過ぎるほど知っていた者だからである。

●国家賠償法第2条第1項の責任(公の営造物の設置管理の瑕疵)

焼却施設やし尿処理施設の備えるべき安全性

 焼却施設やし尿処理施設は、国家賠償法第2条にいう「公の営造物」にあたりその設置・運営によって周辺の生活環境を悪化させる危険があるからこそ、上記のとおり廃棄法上の配慮義務や悪臭防止法の事業場を設置している者等の義務が規定されているものである。従って焼却施設やし尿処理施設によって本件のような被害が発生する事は、本来あってはならない事である。そのような被害の発生しない施設であり、運営でなければならない。

被害の発生と瑕疵の存在

 ところが、本件では前記被害が発生した。このこと自体において、本件焼却施設やし尿処理施設・管理に瑕疵があったことが明らかなのである。

被告の責任

従って、被告は、国家賠償法第2条第1項によって、原告らが被った損害を賠償する義務がある

責任