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12月13日は正月事始め


昔は、お正月の準備を始める日のことを「正月事始め」といいました。12月13日が正月事始めの日にあたります。

すす払いや松迎えなどは、正月事始めの12月13日に広く行われていました。今でも、大きなお寺や神社などのすすはらいがTVニュースに取り上げられるのは12月13日です。

お正月準備については、「これは」という独特の風習が千倉にあるわけではありません。 一般的にお正月の準備は12月28日までに終わらせます。残った作業があったとしても、29日は「苦の日」ですから避けます。どうしても残ってしまった作業は、30日に行います。31日は一夜飾りということで、飾りものやお供えなどの準備はしません。

すすはらいは、大掃除のことです。一年の汚れを払う作業です。
大掃除のウラワザは、WEBを検索すれば、かなりの情報が得られます。キーワードは「大掃除 裏ワザ」「大掃除 裏技」などです。
テレビの後ろなどのコンセント周りは、火災防止の上からも年に一度、この機会に掃除をしたいものです。

障子の張り替えは、水を使いますし、面倒くさいとお感じの方も多いでしょう。私のお勧めは、夏から秋にかけての障子の張り替えです。つまり、夏に障子紙を破いてしまい、桟だけにしておきます。こうすると風が通り、涼しい夏を送れます。そうして秋風が立つ頃に障子を貼るのです。その頃はまだ水も冷たくないので、合理的な方法だと思いませんか。

松迎えも正月事始の一つで12月13日に行われていましたが、現在では全国的にほとんど消えてしまったとのことです。松迎えというのは、来年の年男が、来年の恵方にあたる方位の山から、門松にする松を切って来る風習です。切ってきた松は、家の近くの清い場所に保存し、年末に門松を作ります。
千倉でこの行事があったのか、どうかはあいにく知りませんし、記憶にもありません。ただ、わが集落では12月31日夜から翌元旦にかけ、水神社(すいじんじゃ)で年始の接待を青年会員が行うようになりました。この準備のためマキ集めをするのが13日前後の日曜日ですので、もしかするとこの伝統を受け継いでいるのかも知れません。

鏡もちのことを、我が地域では「おそなえ(もち)」と言います。もちつきは、12月25日から28日までに行うところが多いようで、29日は「苦の日」として避けるようです。
おそなえは、半紙の上に「うらじろ」というシダの葉をしき、その上に丸いもちを3段に重ねます。我が家では、橙(だいだい)をお供えの上にはおきませんが、橙には、家が代々栄えるように、という意味が込められています。
おそなえは、各部屋の一番尊い場所に置くのだそうですが、寝室には飾りません。
もちを搗くときには、当然もち米を蒸すのですが、この蒸しあがったもち米を、塩や醤油をかけて食べるのが子どもの頃の楽しみでした。今でも、もちつきの日には、必ず食べます。なかなかおいしいものです。

昔の家の門の両脇には太い樹木が植えられています。この門木を結ぶようにしめ縄を張りました。しめ縄は、結界を表し、その内側は清浄な状態に保たれていることを示します。神様をお迎えするとともに邪悪なものを追い払うということでしょう。

しめ縄の両脇には、松飾りを立てます。つまり門松です。
ただこの松飾りは、お店の前などにある竹を裁ち切ったものではなく、ちょうど七夕飾りのように枝葉のついた竹の胴に松や椎の枝など巻いたものです。しめ縄も松飾も余り見かけなくなりました。
古来、門松は、椿や榊などの常緑樹が使われており、ここを目印に神様が降りてくるのだそうです。その後、「門松」の名の通り松だけを門につけるものが出てきて、江戸時代に竹を組み合わせる方法も現れてきたそうです。

また玄関やおそなえ(もち)を上げる場所にはお飾りを飾ります。お飾りは「正月飾り」「しめ飾り」といわれるものです。
色々なお飾りがあるようですが、我が家では、今年のワラを三つ編みにしたものをクロスさせ、中央に橙(ダイダイ)、椎葉、ウラジロを付けたシンプルなものです。この地域では、お飾りに使うウラジロのことを「お飾り」という場合もあります。新しいわらは古い年の不浄を払い、ウラジロは長寿あるいは子孫繁栄、だいだいは家系繁栄などの意味をもつのは全国的に同じです。

今は、大概仕事納めが12月28日以降ですから、お飾りを作ったり、もちを搗いたり、しめ縄や門松を作る時間もありません。コンビニやスーパーで買ってきてしまった方が却って安上がりかも知れません。