長野県 千曲市
さとう動物病院
さとう動物病院 トップページに戻る
病院案内

キリンのキリコ


 真っ青な空には白い雲がぽつり、ぽつりと浮かび、草原のあちこちで、たくさんの動物たちが、楽しそうに遊んでいます。その草原を、ライオンのパカパカ王子が、ノッシ、ノッシと歩いていました。
「よしよし、今日は平和だぞ」
 シンバ帝国の中で、なにか問題や争いごとがないか見て回るのが、パカパカ王子の仕事だったのです。
 ひときわ大きなアカシアの木の下では、首の長いキリンのお母さんが、アカシアの葉をおいしそうに食べていました。
「こんにちは、パカパカ王子様」
 お母さんキリンが、通りかかった王子に、うやうやしく、あいさつしました。
「チュウ、チュウ、チュウ」
 お母さんキリンの足もとでは、かわいい赤ちゃんキリンのキリコがオッパイを飲んでいます。
「チュウ、チュウ、チュウ、お母さんのオッパイはおいしいな」
 キリコがいいました。
「キリコ、あなたもそろそろ葉っぱを食べなさい。アカシアの葉っぱはチョコレートのようにおいしいのよ」
 お母さんキリンがいいました。
「だって、だって・・・・・・、わたし、首が短いから食べられないんだもん」
 キリコは少し悲しそうにいいました。
「どれ、どれ」
 と、パカパカ王子がいいながら、キリコをよく見ると、キリンのくせに首がカバのように短かったのです。
「どうりで、あなたは葉っぱを食べられなかったのね」
 お母さんキリンは、のんきにいいました。自分の娘のことなのに、首が短いことに気がついていなかったのです。そして、パカパカ王子に、
「尊敬するパカパカ王子様、私の娘の首を長くしてくださいな」
 と、頼みました。
 パカパカ王子はうなづくと、
「ガオー! ガオー!」
 と大声でほえました。その顔は悪魔のように恐ろしく、開いた口は怪獣のように大きく、お母さんキリンさえもぱくっと一口で食べられそうです。そして、
「キリンのキリコ、首を長くしないと食べちゃうぞ!」
 と、うなるように、それはそれは怖い声で叫びました。
「キャー! こわいよー! お母さん、こわいよー!」
 本当は首が縮むほど怖かったのですが、キリコは必死で首を伸ばそうとしました。首を伸ばさないと、王子に食べられると思ったからです。するとどうでしょう。不思議なことにキリコの首は、竹の子のように、にょきにょきと伸びはじめたのです。
「わーい、首が伸びた。私の首がお母さんの首のように長くなったわ」
 キリコは大喜びです。
「尊敬する王子様、どうもありがとうございます。いつの日か、キリコが王子様のお手伝いをすることでしょう」
 お母さんキリンは、パカパカ王子にお礼をいいました。喜んでもらえたので、王子も満足です。
 でもパカパカ王子はエネルギーをたくさん使ったので、おなかがすいてしまいました。キリコの首が伸びなかったら、本当は食べてしまうつもりだったので、よけいにおなかがすいた気がするのでした。
「仕方ない、キリンのビスケットでも食べよう」
 パカパカ王子はそういうと、頭の中でキリンの形をした大きなビスケットを思い浮かべました。そして目を閉じると、頭の上に手を伸ばし、そのビスケットを取って食べてしまいました。
「あー、おいしかった」
 おなかがいっぱいになったパカパカ王子は、ノッシ、ノッシと草原を歩いて行きました。

シマウマのプンダ

 ある日、パカパカ王子はいつものように草原をノッシ、ノッシと歩いていました。その日も空はよく晴れています。
 しばらく行くと、遠くからしくしく泣く声が聞こえてきました。どこかに困った動物がいるようです。耳を澄ませながら歩いて行くと、草陰でシマウマお親子が泣いていました。
「君たち、どうしたんだい?」
 パカパカ王子は声をかけました。
「王子様、こんにちはでございます」
 お母さんシマウマは頭を下げながら、うやうやしくあいさつしました。その隣では、シマウマの男の子がエンエン泣いていました。
「実はでございます。息子のプンダが川で水を飲んでいたときでございます。大きなワニが出てきて『プンダ君、ジャンケンしよう』といったもでございますから、息子は『ジャンケンポン』といってグーを出しました。ワニはパーを出したものですから、『おまえの負けだ。負けたものはこの川で泳げ』といったのでございます。考えてみますと、シマウマはグーしか出せないのでございます。パーしかだせないワニは、川でカニとジャンケンポンをして、負けてばかりいるものですから、そうやってシマウマに意地悪しているのでございます。くやしいでございます、シクシクシク・・・・・・」 
 お母さんシマウマは、そういうと息子のプンダと一緒に泣き始めてしまいました。
「それがどうして悲しいんだい?」
 パカパカ王子は、訳がわかりません。
「息子を見ればわかるでございます。私たち一家は貧しいものでございますから、息子が生まれたとき、本物の毛皮を買ってあげられなかったのでございます。安物の絵の具で描いた毛皮だったものでございますから、川で泳いだら黒の絵の具が流れ出してしまい、こんなに醜いロバのようなシマウマになってしまいました。情けないやら、くやしいやらで、悲しいでございます」
 確かに、お母さんシマウマの陰で泣いていたプンダを見ると、シマウマのくせにシマがありません。黒の絵の具が流れ出して、身体中がくすんだような灰色をしています。お母さんシマウマがいうように、これではまるでロバです。
「偉大なる王子様、どうか私の息子をシマシマのあるシマウマにしてください。そうすれば、うれしいでございます」
 お母さんシマウマは、パカパカ王子に頼みました。
 パカパカ王子はうなづくと、
「ガオー! ガオー!」
 と大声でほえました。その顔は悪魔のように恐ろしく、開いた口は怪獣のように大きく、お母さんシマウマさえもぱくっと一口で食べられそうです。そして、
「シマウマのプンダ、シマシマにならないと食べちゃうぞ!」
 とうなるように、それはそれは怖い声で叫びました。
「キャー! こわいよー! お母さん、こわいよー!」
 プンダは本当に食べられてしまうと思い、恐ろしさのあまり、目をシロクロさせ、身体が赤くなったり青くなったりしました。するとどうでしょう、不思議なことにプンダの毛皮は、しだいに横断歩道のように白と黒のシマシマに変わりはじめました。
「あーよかった、うれしいな。もとのシマウマに戻ったよ」
 プンダは大喜びです。
「尊敬する王子様、どうもありがとうでございます。いつの日か、プンダが王子様のお手伝いをすることでございましょう」
 お母さんシマウマは、パカパカ王子にお礼をいいました。喜んでもらえたので、王子も満足です。
 このときもパカパカ王子はエネルギーをたくさん使ったので、おなかがすいてしまいました。プンダのシマシマが戻らなかったら、本当に食べてしまうつもりだったので、よけいにおなかがすいた気がするのでした。
「仕方ない、シマウマのビスケットでも食べよう」
 パカパカ王子はそういうと、頭の中でシマウマの形をした、おいしそうなビスケットを思い浮かべました。そして目を閉じると、頭の上に手を伸ばし、そのビスケットを取って食べてしまいました。
「あー、おいしかった」
 おなかがいっぱいになったパカパカ王子は、再び草原をノッシ、ノッシと歩いて行きました。

ゴンタとモンスケ

 チンパンジーのモンスケ軍団とゴリラのゴンタ軍団が、鉄砲を持って戦争を始めました。
「ババババーン!」
「ズキューン、ズキューン!」
「ダダダダダダ・・・・・・」
 平和なサバンナはたちまち血の海となってしまいました。
「ガオー! ガオー!」
 そこにパカパカ王子が駆け足でやってきました。
「だれだ、だれだ、平和を乱すものは?」
 パカパカ王子は大声で叫びました。
「ゴリラが悪いんだ」
 チンパンジーのモンスケが王子にいいました。
「チンパンジーの方が悪いんだよ」
 ゴリラのゴンタもいい返しました。
「いったい何があったのだ。どうして戦争なんか始めたのだ」
 パカパカ王子は恐ろしい顔をして、モンスケとゴンタをにらみました。
「王子様、ゴンタのやつが、『チンパンジーはあほだ。ゴリラよりも毛が三本足りないよ。毛が三本足りないから、脳みそも足りないよ』といったのです」
 モンスケがいうと、すかさず、
「いえいえ、王子様、モンスケのやつが『ゴリラの方がチンパンジーより毛が三本足りないよ。その分だけ頭も悪いよ』と、ばかにしたのです」
「だまされてはいけません、ゴンタのやつが『チンパンジーの毛が三本足りない』といったのです」
「いえいえ、モンスケが先に『ゴリラの毛が三本足りない』といったのです」
「そうではありません、ゴンタが先です」
「ずるがしこいモンスケが先です」
「ゴンタが先だ」
「モンスケだ」
「ゴンタだ」
「ええい、ぜったいモンスケだ、うそをいうな」
 ゴンタはそういうと、
「スドーン!」
 と、チンパンジーに向かって鉄砲を撃ち始めました。
 モンスケ軍団も負けてはいません。
「ダダダダダダ・・・・・・」
 機関銃で激しく反撃しています。
「ガオー、ガオー! おまえら、戦争をやめないと食べちゃうぞ!」
 パカパカ王子はそう叫ぶと、悪魔のような恐ろしい顔をして、口を大きく開きました。ゴリラの百匹や二百匹は楽に飲み込めそうなほど、それはそれは大きな口です。
「キャッキャッキャッキャ! 大変だ! 大変だ! 戦争をやめろ!」
 あまりの恐ろしさに、モンスケ軍団は機関銃をほうり出し始めました。
「もう戦争はやめます。どうかお助けを、どうかお助けを!」
 ゴンタ軍団も、鉄砲を捨て始めています。
「こんな武器なんか食べちゃえ」
 パカパカ王子はそういうと、山のように集まった銃をぱくっと食べてしまいました。
「モグモグモグ、銃もなかなかおいしいな」
 パカパカ王子はこれでシンバ帝国に平和が戻り、おなかもいっぱいになったので満足そうです。またいつものように、ノッシノッシと草原を歩いて行きました。

ペケヤコ少年

 モンスケ軍団とゴンタ軍団の戦争を終わらせたパカパカ王子の活躍は、世界中の新聞に大きくのりました。それを見たニチニチ国の勇敢な少年ペケヤコは、一人でパカパカ王子に会いに来ました。
「尊敬するパカパカ王子様、どうか人間も助けてください」
 シンバ帝国のマニヤラ宮殿に案内されたペケヤコは、すぐさま王子に相談を始めました。
「人間は愚かです。キノコバクダンという恐ろしい兵器をたくさん作っているのです」
 ペケヤコは悲しそうに訴えました。
「キノコバクダンとはどういうものだ?」
 パカパカ王子がたずねると、
「今からお見せいたします」
 そういいながら、ペケヤコはポケットから銀色の小さな箱をとりだし、窓際の陽のあたるところに置きました。すると箱にあたって反射した、にじ色の太陽光線は、パカパカ王子の目の前に広がり、立体テレビのような映像が現れました。
「パカパカ王子様、これがニチニチ国に落とされましたキノコバクダンです」
 緑に囲まれた美しい町の光景が映し出されたかと思うと、目がくらむほどのまぶしい光がピカッとひかり、しばらくしてドーンと地面の底から響いてくるような、鈍い大きな音がしました。そして町の上空には、巨大なキノコの形をした雲がモクモクとたち昇り、そのキノコ雲の下には、目をそむけたくなるような恐ろしい光景が広がっていたのです。肌の焼きただれた大勢の人々が、もがきながら苦しんでいます。水を求めて集まった人間や動物の死体が、川を埋め尽くすように転がっています。まるでこの世とは思えない地獄のような光景です。
「人間は、ゴリラやチンパンジーより毛が三本どころか、三万本も足りないので、きっとこんなに愚かなことをするのだろう」
 キノコバクダンの恐ろしい映像を見たパカパカ王子はつぶやきました。
「パカパカ王子様、キノコバクダンはグジタイ国がたくさん作っているのです。平和を愛しているニチニチ国にはひとつもありません」
 ペケヤコは、自分の国にキノコバクダンがないことを、誇りに思っているようにいいました。
「私たちは、キノコバクダンをたくさん持っているグジタイ国が恐ろしくてたまりません。今のうちになんとかしてください」
 ペケヤコは、必死になってパカパカ王子にお願いしました。
「それじゃ、一緒にグジタイ国へ行くことにしよう」
 パカパカ王子はそういうと、宮殿の窓から身体を乗り出し、口をお化けのように大きく開き、
「ガオー、キリコ! ガオー、プンダ! おまえたちの出番だぞ!」
 と大声で叫びました。マニヤラ宮殿はシンバ帝国を一望できる丘の上にあったので、その声は国中に響きわたりました。パカパカ王子に助けてもらったことがあるキリンのキリコと、シマウマのプンダは、その声を聞きつけると、駆け足で宮殿にやってきました。
「キリコとプンダ、これからグジタイ国に行くからお供しろ」
 パカパカ王子は、喜び勇んでやってきた二匹に命じました。こうして、パカパカ王子はキリコに乗り、ペケヤコはプンダに乗って、グジタイ国へと向かいました。
 サバンナを横切り、砂漠を突き抜け、数日の後、グジタイ国の都につきました。
「こんにちは、パカパカ王子様!」
 街の人は、キリコに乗ったパカパカ王子に、気軽に声をかけています。
「グジタイ国といえども、人々は悪くなさそうだ」
 パカパカ王子はペケヤコにいいました。
「この国の人は、キノコバクダンなんか欲しいと思っていないんだ。悪いのはきっと、チャフチャフ大統領だ」
 ペケヤコはいいました。
「それではチャフチャフ大統領に会うことにしよう」
 パカパカ王子は、キリンのキリコに大統領官邸へ行くよういいつけました。ペケヤコを乗せたプンダも後に従います。
 官邸に着いたパカパカ王子は
「チャフチャフ大統領、どうしてキノコバクダンをたくさん作っているのだ」
 とたずねました。
「パカパカ王子、平和を愛するグジタイ国は、決してキノコバクダンをよその国に落としたりはいたしません」
「落とさないバクダンなら、必要ないではないか」
 再びパカパカ王子はたずねました。
「平和を守るために必要なのです。でも約束します。決してよその国に落としたりいたしません」
「わかった、バクダンは決してつかわないというのだな。使わないバクダンなら、必要ないではないか」
 そういうと、パカパカ王子は口を大きく開き
「ガオー、ガオー! チャフチャフ大統領、キノコバクダンを出さないと食べちゃうぞ!」
 と悪魔のような恐ろしい顔をして、叫びました。
「ははー、パカパカ王子、すぐキノコバクダンを持ってきます」
 チャフチャフ大統領は、大急ぎでキノコバクダンを地下室から持ってきました。
「ムシャ、ムシャ、ムシャ」
 パカパカ王子はグジタイ国のキノコバクダンをすべて食べてしまいまいました。
「王子様、ありがとうございます。これで世界中の人々が安心して暮らせます」
 ペケヤコは心からお礼をいいました。
 グジタイ国のキノコバクダンを食べ尽くしたパカパカ王子は、再びキリンのキリコに乗り、シンバ帝国に戻りました。そして今日も草原のなかをノッシ、ノッシと歩きながら、なにか問題や争いごとがないか、見て回っているのです。
  
 (注) パカ    スワヒリ語でネコの意味
    シンバ   ライオンの意味
    チャフ   汚いの意味
トップページに戻る