折角、佐々木さんが掲示板に掲示しておられるのに、反応がないので、私のあやふやな
記憶を辿ってみました。
といっても、私はプロ同士の対局なんて見たことはない(公開対局は別として)ので、
専ら昔の囲碁雑誌や観戦記に書かれていた事を、あやふやな記憶から呼び戻すだけで、
別の人に、「あなたの言っている事は違う。こうなんだよ」と言われれば、「はぁ、そう
ですか」と引き下がるしかないのですが。
結論から言います。プロ棋士があぐらをかいて公式対局するようになったのは、昭和
26〜27年頃からではないでしょうか。
昭和24年に日本棋院囲碁規約が作られました。これは囲碁が国際化するにつれ、平成
元年に改定が行われています。これらについては、インターネットをお使いの方なら、ど
こかのプロパイダーのホームページから「日本囲碁規約」で検索すれば、辿り着くことが
出来ます。この24年の囲碁規約には囲碁規約付属というのがあって、これには盤外の事まで細かく規定されていますが、なかにこういう条項があります。
対局開始及び対局中 第4条
対局者は、相互に一礼した上対局を開始する。(立会人がある場合は、立会人に対し
ても同様にする)
2 対局者は、対局中、正座の姿勢を保ち、対局上必要な言辞以外は沈黙を守り、特に相
手方の思考を乱したり、又は不快な念を与えたりする言動を慎しまなければならない。
3 対局者が一時退席する必要が生じたときは、相手方にその旨を告げ、一礼をした上で
退席する。復席の場合も同様とする。
4 対局者は、考案がまとまり、着手しようとするまでは、自己の碁器にある碁石に手を
触れてはならない。
5 対局者は、対局中において自己の碁器内に「ハマ」以外の相手方の石が混入している
ことを認めたときは、直ちにその石を相手方に交付しなければならない。この石を
「出石」(でいし)という。
6 対局は、一旦着手した自己の石を、再び他の点へ置き換えること(俗に「待った」と
いう)をしてはならない。とあります。
余談ですが、時間切れが迫ってくると、片手に石を沢山持って、権兵衛の種蒔きよろし
く、相手が打つやいなや間髪を入れずに打つ、私がよくやる打ち方も規約違反だったので
すね。この昭和24年当時はちゃんと畏まって打っていたと思うのです。
私は昭和24年に碁を覚えましたが、その当時、割りに碁を大事に考えていて、初心者
で下手なくせに畏まって打っていたものです。それが崩れてきたのは、対局姿勢の模範としていたプロがあぐらをかくようになったからという想いが強いのです。
私は昭和27年頃は、畏まって打ったり、あぐらをかいて打ったりしていたようです。
昭和28年には殆どあぐらで打つようになったかと思います。
盤外の所作は雑誌等の情報によって、プロの真似をしていた私ですから、プロのあぐら
の時間的な流れも、そんなふうじゃなかったのかなと思うわけです。
ただ、プロがあぐらに移行していく段階で「あくらは正座かどうか」という議論はあった
ようです。ただそれが、議事録に残るような正式な議論なのか、責任のない雰囲気的な
議論なのか、それは分かりません。長時間の対局で終始畏まっているのは疲れるし、楽な
姿勢に移行していくのは自然かも知れません。ただ、規約には正座でと書いてあるので、
「あぐらは正座なんだろうか」となったのかもしれません。
呉清源さんが、あぐらで対局したというのは聞いたことがありません。ただ、呉清源さん
は椅子対局を、盛んに提唱しておられたようです。それと持ち時間の短縮も。24年規約で
も椅子対局は認められているようですが、呉清源さんが盛んに打っていた頃は、椅子対局は
まだ、少なかったようです。でも、椅子で打ったこともあったようで、「これはいいものだ」
と言ったとか。
以上
塚本 昇