天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)
 この神は古事記開巻の始めに、天地の初発(はじめ)の時、高天原に成り坐せる神とあり、書紀一書にも同様に述べている。
 御名義、天上すなわち宇宙の真ん中を領し一つに纏める神である。世の中の宇斯(うし)たる神の意で、宇宙に偏在する絶対的の至大至上の大元神であり、宇宙の根元を神格化したのである。
 かくの如く高く尊き神であるに拘わらず、この神を祀りたる神社は古史にも伝わらず、現今も官国弊社になく、まれに県社以下に見える。その理由は、この神の奇麗(たへ)なる神徳が宇宙に遍く充ち亘り、また神という神はこの大神の分霊だからである。また、我が国の神社が祖先神中心である所にも、重大な原因があると思われる。
 尚、諸国に多い妙見社はこの神を祀るが、後世陰陽道による附会であろう。

 (『伊那の御祭神(小笠原 賢太郎 著)』より抜粋)

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