十返舎一九の園原の絵
〜訪ねまほしき園原や〜と、県歌「信濃の国」にも歌われていますが、古歌にいざなわれて園原へ杖をひいた文人墨客が多くいます。彼らが一夜の宿を乞うた民家へ書き残した寄せ書き帳の中に、十返舎一九の署名が入った写生画があります。山また谷を青と緑の淡彩で比較的細かな筆づかいで描写し、住吉明神の森(現在の神坂神社)と箒木、それに数戸の家が描かれ、右上に、
箒木にうきよのちりをはらふては
清きみやまにすみよしの神
と狂歌調の一首が美しく散らし書きされ、左下部に「東武 十返舎一九」の署名と、独特の花押があります。十返舎一九は有名な滑稽戯作者ですが、来訪時期には諸説があって、初代一九ではないようです。
(S60・3)
→ 『足あと』 9章
「十返舎一九筆の神坂神社」