敗残のメダル
 昭和20年の終戦の日、私は南太平洋のソロモン群島にいて、17日になって日本の敗けたことを知らされました。自活戦のためにジャングルを切り開いたサツマイモ畑で見上げた熱帯の太陽が、額に冷たく感じたことを今でも忘れません。

 武装解除で対空機銃や弾薬をオーストラリア軍に引渡して、10月1日収容所のある未知の孤島に向かいましたが、払暁のブインという浜辺で、オーストラリア軍の監視の中でこの捕虜番号札を渡され、自分の首にかけました。
 すし詰めに乗せられた乗陸用艇が岸を離れ、悪戦苦闘の島が遠ざかって行く時、第三種軍装の金ボタンにこの番号札が触れて音を立て、思わず目がうるみました。図版では黒くなりましたがステンレス製で、今でも銀色に光っています。
 JA280272、それが私の捕虜番号でした。  (S59・6)
 
はじめに 総合目次 足あと10章 リンク集 さんまのメモ 更新記録