鉄斎の描いた神坂神社

 明治43年に、園原古蹟保存会の代表者である熊谷直一翁によって「園原和歌集」が出版されたことは、郷土年表や園原の資料によって知っていましたが、実物を手にしたことはありませんでした。最近になって飯田市立図書館でお聞きしたところ、ベテランの司書の方が、たちどころに探し出して下さって借用することができ、うれしく読みふけりました。

 その和歌集の巻頭写真に、鉄斎筆のこの絵がありました。説明するまでもなく神坂神社を描いた即席画ですが、まだ拝殿のない頃の社殿と、日本杉、園原碑が描かれています。左端下の二本の斜線は栃の木でしょう。

 ただ一つ不思議なことは、こうして紙に書かれた文字と、園原碑に書かれた整然とした楷書との相違が、納得できません。もしかしたら鉄斎は「石に彫る字」と「紙に書く字」を使い分けていたのでしょうか。  (S63・4)

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