アトピー性皮膚炎
 大人の方に
●皮膚はとてもデリケートで、ストレスや環境の変化によっても
 治りが遅くなってしまいます。
症状が悪くなっても恐れないでください アトピー性皮膚炎 イラスト
全身のむくみと赤み・黒ずみ
黄色い汁がでる
いろいろな大きさの皮がはがれる
夜も眠れないような痒みがある
首がひび割れて痛くて曲げられない
…など、症状はさまざまです。
ステロイドや保湿剤を中止してからしばらくはひどい状態になります。
しかし個人差はありますが徐々によくなっていきますので、悪化を恐れず心にゆとりを持ってお過ごしください。


掻いてしまっても悔やまないでください
脱ステロイド療法中は、激しい痒みが起こります。
痒み止めの薬を飲んでも抑えられない場合もあるので、どんな人でも掻いてしまいます。
掻かない方が早く治りますが、掻いてしまったとしても自分を責めないでください。
皮膚が乾燥して少したつと、だんだん掻いても傷がつきにくくなるので、皮膚が強くなっていくことがわかります。
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不安があれば相談をして下さい
不安なことや気になることがあれば、メモをとっておきましょう。
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●食事について
滲出液の多いときや、かさぶた・落屑の多く出るときは、高蛋白の食事をとりましょう。
成人の一日蛋白必要量は80gですが、上記の場合はこの1.5〜2倍位摂取しましょう。(特に動物性蛋白を取るのが望ましい)
【たんぱくを多くとる目的】
水分制限のところで述べたように、色々な理由で蛋白質が減少します。又、けがをしたり、不安があったり、睡眠不足やストレス、環境の変化などにより、体内の蛋白が多く使われます。
そのため、蛋白を多く摂取する必要があります。
【蛋白の働き】
動く力、体温となるエネルギーをつくる。
筋肉・骨・血液はもちろん、皮膚も作ります。
体の各機能をスムーズにする。
食塩を排出してくれる。(むくみの解消、予防になる)
長時間空腹を感じなくさせてくれます。(間食を防ぐ)
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塩分を控えましょう。
塩分をとりすぎると、のどが渇き余分な水分を取りたくなります。ポテトチップスなどスナック類には塩分が多く含まれています。できるだけスナック類は控えて、間食では牛乳、チーズ等摂取するのが望ましいです。


その他注意する事
糖分をとりすぎると太る原因になります。太ることで皮膚に負担がかかるため注意しましょう。ごく少しのお菓子、飴、チョコレートなどは問題になりません。
規則正しく3食きっちりたべましょう。
朝食をとらないと太る原因にもなります。体のバランスを整えるためにも朝食は必ずとり、1日3回の食事をしましょう。
好き嫌いをなくし病院食をがんばって食べましょう。
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成人のアトピーの方は、食事アレルギーはほとんどの場合ありませんので、アレルギーについては気にする必要はありません。食事アレルギーについては症状を聞いてその有無を判断いたします。
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●水分制限について
【目的】
血液の蛋白が薄くなるのを防ぐためです。
以下に記されているどの項目からでも低蛋白血症は起こります。低蛋白血症が起こると掻いた傷が治りにくくなります。

アトピー性皮膚炎 水分制限について

そのため、水分制限をするのです。

アトピー性皮膚炎 イラスト夜間の水分摂取は皮膚がむくんだり、滲出液増量の原因になるので控えましょう。しかし、成人では1日2500ml程度の水分は必要ですので、きちんと一日三食食べると約1500mlの水分があり(これは全量とる必要があります)、その水分以外で取ってもいい水分(お茶、水、その他に牛乳、ヨーグルト、果物など)は1日に合計で1000〜1500mlです。だから食事に摂取した物はその都度こまめに記入してください。なお、食事を全量取れなかった場合は不足分を、発汗が多かったり発熱のある日は余分に出た水分を補充する必要があります。

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●入浴について
【目的】
健康な人間の皮膚には、普段から細菌がたくさんいますが、バランスを保っているので悪い菌だけが増え過ぎる事はありません。しかし、皮膚に亀裂があったり、皮膚が滲出液でジクジクしていると悪い菌の病的な増殖の場所になりやすいのです。又、汗の成分に細かいほこりなどが付着すると同じ事が起こりやすくなります。そこで、毎日入浴する事で病気のもととなる細菌が増えにくい状態を作り出す事が大切になります。 アトピー性皮膚炎 イラスト

【入浴方法】
保湿作用の少ない固形石鹸を使いましょう。
(薬用石鹸・ボディーソープ・液状の石鹸などは控えて下さい)
やわらかい綿タオルに石鹸をよく泡立てて洗いましょう。
(ナイロンタオルやスポンジで洗うと、皮膚を傷つけてしまうので避けましょう。)
肌は優しくなでるように洗いましょう。
(強くこすり洗いしたりカサブタを無理にはがしたりすると、とてもデリケートな皮膚はすぐ傷ついてしまいます。)
手に石鹸をつけて洗うのは避けましょう。
(意外とカサブタの下などに石鹸のつぶが残り、その石鹸が皮膚をがさがさにします。)
顔は最も症状の強く出る場所の一つです。体を洗う時と同じ固形石鹸を使ってよく泡立て、優しくしかししっかりと洗いましょう。
石鹸は十分洗い流しましょう。
(石鹸分が残っていると、皮膚に刺激をあたえるので、皮膚の状態が悪くなってしまいます。石鹸分を落とす為には、必ず湯船につかり軽く手で体をこすります。その後シャワーをさっと浴びて下さい。)
体を拭く時は、綿タオルでそっと押さえる様に、水分を取りましょう。

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●衣服について
生活する中で衣服は欠かせないものです。毎日直接肌に触れる物ですから、肌への影響はかなりあります。
そこで、少しでも皮膚への刺激を和らげるため、衣服に対しての注意点を上げてみました。
刺激の少ない綿や絹素材を選びましょう。
文字や絵柄のプリントされた物は、かぶれ(接触性皮膚炎)を起こす原因となるので避けましょう。ジーンズなど硬い布やピッタリひっつく服地は皮膚とこすれたとき痒みの原因となるのでやめましょう。
下着は吸湿性の良い柔らかい綿が良いです。
下着(パンツやシャツ)は裏返しにして着用すると、縫い目や素材の凹凸が肌に触れないため刺激が少ないです。
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清潔な物を身に付けましょう。
毎日こまめに洗濯することが大切です。洗剤は通常使用量の8割に減らして下さい。
すすぎは十分に行い、柔軟剤など洗剤以外のものを使用するのは控えましょう。


厚着せず、通気を良くしましょう。
温暖・発汗で皮膚症状が悪化しやすくなります。
また、肘や膝の関節は皮膚と皮膚が直接触れ、汗がたまりやすくなります。
そこで、衣服の袖や丈は、発汗の多い暑い時期でも、その汗を吸収するよう長めで通気性のよい物が望ましいです。

そで…5-6分袖
丈…膝下3-5cmのもの

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しめつけないようにしましょう。
たとえば、ウエストのゴムや袖口のボタンなど、ゆとりを持たせましょう。
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●皮膚の治りを早めるためにも日常生活で注意して頂きたいことをお話します。
昼型生活に戻す
昼夜が逆転している人は皮膚の治りが遅くなってしまいます。
昼は出来るだけ活動し、夜はぐっすり眠るというリズムをつけるようにしましょう。
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睡眠は十分に取る
かゆみがひどくて夜眠れない時は、必要な期間のみご本人の希望で安定剤や睡眠薬を飲んでいただくことがあります。
眠れない時は遠慮せず、看護婦に申し出てください。


顔からの液を減らすための頭部ベッド挙上
顔や首から液が出ている時は、その量を減らすため、ベッドや枕などで上半身を持ち上げて眠るようにしましょう。


顔はたたかないように
顔が痒くても目のまわりは決してたたいたり強くこすったりしないようにしましょう。
結膜炎や白内障・網膜はく離になりやすいからです。
滲出液が出ている時はティッシュなどでふきとらず、ガーゼを当てたり、滲出液が固まるまでそのままにしておきましょう。(ふき取ることで皮膚刺激となったり、皮膚の治りを遅らせることになります。)
鱗屑、痂皮は無理にはぎ取らないようにしましょう。
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自分の部屋は自分できれいに
毎日生活する部屋も清潔が大切です。
ベッド周りはこまめに片付け、寝具が汚れたら洗いましょう。


日焼け予防
外出時は急に強い光に長時間あたると、皮膚症状が悪化するため、避けるようにしてください。
外出時は長袖・長ズボンを着用したり、帽子を着用する・日傘をさすなどして、直射日光を浴びないようにしましょう。
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●リハビリ(理学療法=運動)について
リハビリの目的
元の生活に戻るとき、無理なく日常生活ができるように少しずつ体を慣らしていきます。また、皮膚の治りを早めて再発を防止します。 アトピー性皮膚炎 イラスト
リハビリを開始する時期
運動を始める時期としては、身体の大きな関節(首・肩・ひじ・膝・太ももの付け根)のひび割れが少なくなり、動かしても痛くなくなった頃です。


リハビリの内容としては
ウォーキングや柔軟体操(ストレッチ)くらいから始めるのが良いでしょう。
また、外出や外泊時に運動・気分転換されるのも良いでしょう。
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●おまけのコメント
成人型アトピー性皮膚炎とは
アトピー性皮膚炎にステロイド依存性皮膚症を合併した状態


外来での治療
できれば外来での治療が望ましい
・ステロイド依存症、保湿依存症 (脱保湿から間歇ステロイド外用へ)
・保湿依存症
(理解してもらうのが難しい。後で納得。入浴後、時間から日へ外用をあける)
・共に過ぎて不明の原因で悪化(今後の検討課題)
これで耐えられなかったら入院。前後させる要因:住所、精神状態、家族関係など


離脱症状の一般的経過
ステロイド離脱後、平均7日で悪化のピーク
保湿剤離脱までは2-3週
保湿離脱後、平均5日で悪化のピーク
(この後、ある程度落ち着いた時点が回復期の始まり)
2ヶ月で安定


皮疹の経過
顔: ステロイド皮膚症で表面ツルツルの安定(萎縮、毛細血管拡張など) 離脱
糜爛面から滲出液、発熱、倦怠、食欲不振
痂皮形成と亀裂からの滲出液、痛みが強くなる
痂皮が小型化
痂皮が鱗屑に変化、紅斑の消失
鱗屑が小型化
皮脂が出始める
頚: ビラン 皺と皺の間の乾燥と亀裂(痛みを強く感じる)
亀裂の小型化 紅斑の消失と鱗屑化
苔癬化(肘窩、膝膕、腋):滲出液 乾燥亀裂 苔癬化の減高と面積の狭小化
丘疹: 個々のものは 三角錐 ドーム状と発赤の現象 小型化 数の減少
痒疹: 大きさ、高さがそのまま小さくなる
減高し、面積が拡大し、貨幣状湿疹と変わる 中央から治癒傾向でリング状紅斑、亀裂、丘疹の混合局面


細菌感染
毛嚢炎様の長径5-8mmの円形膿瘍
境界明瞭な美慢性の滲出性紅斑
カポシ水痘様発疹症:一部に集簇した水疱群とそれを中心として遠くなれば疎になる分布を示す臍窩を有する水泡


退院指導
平均2週間をピークとして一時的に皮疹のある程度の悪化を見る。これを医師のいない不安の中で精神的に乗り切ることが大切
水分制限は上の悪化を乗り切るまで約一ヶ月続け、その後は水分摂取を少し控えめにする程度。
高蛋白は落屑や滲出液が減れば必要が無い
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