ナースのお仕事♪

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「医師」を辞めた研修医

これはわたしが看護師になって2年目になった時の話。

看護師2年目になって、ようやく周りの先輩看護師達に「仲間」とみなされ始めたある日、先輩看護師達が「すっごい役立たずの研修医がもうすぐうちの病棟に回ってくるんだって。」と噂し始めた。
わたしはまだ2年目で、リーダー業務も始めたばかり。
自分自身にいっぱいいっぱいの時だったから、先輩看護師の言う事には余りぴんとこなかったし、「役立たずな研修医って一体どんな感じなんだろ?」 なんて思いながら聞いていた。

5月になって、その噂の研修医・高田(仮名)先生がやってきた。
ゆうに180cmはあるその先生は、がたいがごつくてとても声の大きな人だった。
そんな大きな身体を精一杯曲げて「よろしくお願いします。」と周りの看護師に挨拶をしてまわっていた。

「変わった先生だなあ。」というのが、わたしの第一印象。

その当時、高田先生の他に一緒にきた研修医は2人。
ひとりは女性の医師で、医学部を卒業後すぐ結婚して専業主婦をしていたけど、1年前に国家試験を受けて研修医になったという、ちょっとお姉さんな前島(仮名)先生。
もうひとりは、某国立大学医学部を首席で卒業した超エリートで真面 目な田中(仮名)先生。
そして、高校教師を辞めて医師に転身したという高田先生。

この3人の研修医は、前にいた研修医達よりとても個性的だった。

しばらく一緒に働いていくうちに、高田先生が「役立たず研修医」と 言われるのが、このわたしですら何となくわかるようになった。
というのも、指示を出すのがとにかく遅い。
一回で出せばいいのに、何度も何度も検討するから小分けしてだしてくる。
そして、やっと看護師が指示を処理し終えたと思ったら、何度も訂正指示を出してくる。
さらに、やることなすことが馬鹿丁寧で、朝の点滴を回ってもらうと昼までかかってしまう、高田先生の行う処置につくと確実に1時間以上は かかるという有様。
他の2人の研修医がとてもてきぱきこなしているタイプだったので、余計「高田先生を何とかして。」というクレームが病棟看護師の中で広がっていった。

けれど、わたしは高田先生が「役立たず研修医」とは思わなかった。
それは、高田先生の一生懸命さが空回りしているという事が、看護師2年目のわたしには痛いほどわかったから。

高田先生は、毎日病院に泊まり込んでいた。
よく「研修医室」に遊びに行くと、高田先生がいつもソファで寝ていたような気がする。
そこで色んな話をする内に、わたしは高田先生とご飯を食べに行くような仲になった。
周りの先輩看護師には奇異な目で見られてたなあ。

ある日の準夜帯で、高田先生の受け持ちの患者が亡くなった。
わたしは2人しかいない時間帯でのお見送りで、慌ただしく死後処置の準備をしていた。
「患者さんの処置の準備をしているの?」と、ふいに側にやってきた高田先生に、「そうです。」と、わたしはつい忙しくて素っ気なく答えてしまう。
しばらく無言でいた高田先生が

「患者さんの身体を綺麗にするの、よかったら一緒にさせてくれないか?」

と言ってきた。
わたしはあまりに突然の申し出に固まってしまった。

だって、そんなことを言ってきた医師は初めてだったから。

「今まで僕は、自分が担当した患者さんの死後の処置を一度もしたことがないんだ。
それっておかしいと思わない?
でも、今までは他の先生の手前もあって一緒にさせてもらうことを頼んだことはなかったけど、流風ちゃんにならお願いできるかなと思って。」

と、必死でお願いしてくる高田先生。

わたしはこんな事を言ってくる高田先生に最初は呆気にとられたけど、 先生の真摯な態度に納得して一緒に処置をすることにした。

処置をしている間、高田先生は患者に向かって一生懸命話しかけていた。
そして、慣れない手つきで、やっぱりとても丁寧に身体を拭いていた。
そして、いつもは大きな声の先生が、話しかけながら静かに泣いていた。

わたしは一生忘れられないと、何故かそう思った。

そんな高田先生が次の研修病棟へ行った数ヶ月後に、医師を辞めた。

わたしは、高田先生が医師を辞めたことが信じられなかった。
信じられなかったけど、「やっぱりな」とどこか納得する自分がいた。

高田先生は辞めたことを後悔していないと、わたしは確信している。

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