ナースのお仕事♪

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人の業

病院は生と死の狭間にあります。
勤務していると、もちろん、たくさんの死に直面します。

ある日の夕方、男性患者(仮にMさんとしましょう)が急変しました。
ナースステーションに設置した監視用のモニターが警報を発し、ナースは走り、ドクターが駆けつけます。
ただちに救急カートが広げられ、処置が始まりました。
私の勤務していたその病院では、末期の患者さんの場合、急変時の処置をあらかじめ患者さんの家族に決めて頂いていました。

すなわち「ナチュラル」か「フル」か。

「ナチュラル」は家族が臨終に間に合わなくても特に延命措置はせず静かに最後を迎えられるもの
「フル」は最低でも家族が駆けつけるまでは延命処置を講じるものを言います。

そしてその患者さんは「フル」を希望されていました。

自発呼吸が下がり、MEから呼吸器が運ばれて来ます。
ベッドのヘッドボードが外され、挿管のためにドクターがMさんに向かってかがみこみました。
介助につくナースも慣れており、特に指示が無くとも必要なものは手際よくドクターに差し出されます。
戦場のような勢いで人が動いているのに、聞こえるのはベッドサイドのモニターが刻むMさんの鼓動と、忙しく行き交うナースの衣擦れだけです。

と、その時、ドクターが白衣の袖をまくるために動かした手がMさんの頭をかすめ、瞬間、ばさっ、と大きな音がして、床に何かが飛んで落ちました。

その場にいた全員がふと床に目をやるとそこに落ちたのは、Mさんの髪の毛でした。

・・・・・いや訂正しましょう。
Mさんの豊かな「カツラ」がばっさりと広がっておりました。

私達もプロですからそんなことでどうということもございません。
さりげなくその場にいた新人ナースにそれを拾うようにと言い、さらに家族への連絡を指示します。
新人ナースは慌ててカツラを拾い、Mさんの荷物の入ったロッカーに入れ、電話に走りました。

電話のあるナースステーションは、今処置している重症部屋と隣り合わせです。
結構電話の声も聞こえます。
看護記録に記載してある、緊急連絡先に彼女は電話をかけています。
「あの。○○病院の△△と申します。Mさんの奥様でいらっしゃいますか?急いで病院にいらして下さい。Mさんが…」

そこで彼女は言葉をためらいます。

慌てて急変という言葉が出てこないのか、それとも「急変」が専門用語なので何という言葉に置き換えて良いのか迷っているのか、どちらかでしょう。
近くにいた先輩ナースが電話を替わろうと手を伸ばした時、新人ナースはすっかり上がりきってしまい口走りました。

「Mさんのカツラがっっっっっっっ・・・!」

その場にいた全員が驚愕して新人ナースを振り返りました。
新人ナースは情けない顔で、受話器を見つめ、先輩を振り返ります。

「奥さんに、『主人はカツラじゃありません!』って切られました」

その後、先輩ナースが謝罪と急変のお知らせの電話をかけ直したのはもちろんです。
しかしまぁ、反射で出てくる言葉がソレってのは……。

すごいですね、人の業(チョットチガウ)

【投稿者】きなりさん [HP]

::: 逸冊 :::

どちらも説明不要なくらい有名ですよね。2冊とも主人公のナースがとってもステキックナースで、そんな主人公を通 して看護のイロイロを知ることが出来ます。軽く読めるけれど中身は濃い!とゆう、充実した逸冊なので気になるおヒトはぜひチェック!
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