お題 テレホンカード タカツキミコ(pytie)
テレホンカード
顔を見たらきっとうまく言えないから さっきからずっと電話ボックスを見上げている 昔は素直に言えた言葉が今は喉の奥につまってでてこない 雨が降りだしそうだ。 雨が降ってきてしまいそうだ。 もうどうでもいいやって気分で オレはまだ緑の電話を見つめている。 ポケットの中にはカードが一枚だけ入っている こんな日に携帯を忘れるなんて、ついてない。 雨が降る 冷たい雨。 でもきっとこれは罰だから。 あれほどまでに正しい兄サマに逆らったオレが悪いのだから まだ踏ん切りがつかないで、見上げる緑の電話ボックスの隣に、 現れた黒い影。 言葉もなくして見つめるオレを少し怒ったような顔で 包み込むアナタ 乱暴だけど確かにつたわってくるぬくもりが 喉の奥でつまっていた言葉を溢れださせる ごめんなさい・・・ アナタは何も言わなかった。 何も言わないままオレを抱きしめていた。 いつも感じていたぬくもりに安堵するオレの指からすべりおちる 一枚のテレホンカード