欲しかったのは、大切な人からのプレゼント…
「兄サマ、これとってもおいしいぜぃ!」
今日は7月7日。モクバの誕生日。
兄である瀬人は、モクバのために高級レストランを貸しきり、二人だけでの食事を用意した。
そして今、二人が食べているのは、食後のデザートだった。モクバはチョコレートパフェ、瀬人は洋梨のシャーベット。
「モクバ、口の端についてるぞ。」
そう言うと瀬人は、腕を伸ばしモクバの口の端をハンカチでふいてやった。満面の笑みで「ありがとう」と言う
モクバは本当に可愛いと実感しながら、瀬人は椅子から立ち上がった。
「兄サマ、どうしたの?」
「ちょっとな、おまえはここで待っていろ。」
不思議そうな顔をして、問いただすモクバにそれだけ言い残し、瀬人は厨房の方へと向かった。
(兄サマ、遅いなぁ…)
チョコレートパフェを食べ終わり、モクバは窓に少しもたれながら瀬人を待っていた。何度も厨房に行こうとしたが、待っていろと言われているので待つしかない。
数分後、瀬人が戻ってくるのが見えた。
「兄サマ、それ…」
瀬人は手に二つのグラスを持って戻ってきた。中身は、シャンパンのようである。
「待たせたな。さあモクバ、飲むぞ。」
瀬人は妖しげな笑みを浮かべて、モクバにグラスを渡す。
(兄サマ、これを取りに行ってたのかな?頼めば持ってきてもらえるのに…)
そんなことを考えながらも、モクバはグラスを口にした。瀬人が笑みを浮かべ、見ているとも知らないで。
少しづつ飲んでいたモクバは、グラスの中の異変に気付く。中に何か浮いているのだ。
(何だろ?)
モクバは飲みかけのシャンパンの中に、手を入れそれを出してみる。
それは…
シルバーのリングに、綺麗に輝いたサファイアの宝石が付いた、サファイアの指輪だった。
(ななな何これ!?どうしてグラスの中に…)
そこまで考えてはっとする。このグラスを持ってきたのは瀬人だ。
「兄サマ、これって…」
「やっと気付いたか。どうだ気に入ったか?」
気に入ったかと言われても、自分はまだ小学生だ。
指輪をもらっても素直に喜べない。どう返事をしようか
考えているとき、瀬人が声を掛けてきた。
「指輪を貸せ。はめてやろう。」
「えっ!うん。」
言われた通り瀬人に指輪を渡し、手を差し出した。
満足そうな笑みを浮かべ、瀬人はモクバの白く細い左手の薬指に指輪をはめた。
「兄サマこれって…」
言い終わらないうちに、瀬人に腕を引き寄せられ、唇が重なり合っていた。
「んっ…!」
ゆっくりと唇を放され、瀬人に耳元で囁かれる。
「愛してる。」
愛する人から捧げられた、最高のプレゼント…
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