「絶対、謝らないぜぃ!!」
オレはそう叫んで食堂を飛び出した。 今日は日曜日で、今は午前7時30分。 さっきまでオレと兄サマは朝食をとっていた。
なのに、オレは兄サマと喧嘩して、勢いで邸を抜け出してしまった。 歩きながらオレは喧嘩の原因を思い返した。
兄サマが昨日のことでオレを叱ったんだっけ。 オレだってちゃんとわかてったのに・・・。
昨日の夜、オレは遊戯の家で夕飯を食べた。
学校の帰りにたまたま遊戯たちに出会い、遊戯の家で、ゲームでもしないかと誘われたからだ。 本当は夕飯までに帰るつもりだった。
でも、思ってた以上にそのゲームが面白くて、やめられなくなってしまった。 大勢でやるゲームは、とにかく盛り上がる。
普段、1人でやるテレビゲームなんかとは比べ物のなならないくらい・・・。
オレは、あまりにも熱中してしまい、時のたつのも忘れてしまった。
「遊戯ー!!ご飯よー。お友達の分も作ったけど、どうするか聞きなさーい。」という遊戯の母親の声で初めて時計をみたくらいだ。
時計は8時をまわっていた。 「みんな、夕飯、僕んちで食べていかない?」
遊戯の誘いに、すぐさま城之内と本田がのり、御伽と杏子が断った。 「モクバ君は?」 遊戯がオレに尋ねてきた。
オレは少し考えた。 確か兄サマは今日も仕事で遅くなるっていってたな・・。 だったら、ここで食べてもいっか。
兄サマにばれなければ・・・。
オレは一応、邸に電話して、今夜は外で食べるとだけ告げておいた。
その日の夕飯は、すごく楽しかった。
大勢で食べるなんて本当に久しぶりだったし、遊戯の家族もとても優しくしてくれた。
帰りは、城之内が送ってくれた。
別にいいって言ったのに、「ガキ1人じゃ、あぶねえだろ。」とかいって。
家に帰ると、9時を過ぎていたので、オレはさっさと風呂に入り、寝てしまった。
そして、次の日の朝(つまり今日)、いつもどおり食堂にやってきたオレに兄サマの雷が落ちたのだった。
「モクバ!!昨日の夜、どこで何をしていた!!今すぐそこに座って、俺に答えろ!!」
兄サマの向かいの席、いつものオレの指定席を指差しながら、兄サマが怒鳴った。 やれやれ・・・。
昨日の夜、メイドやSPどもに口止めしとくの忘れてたぜぃ。 オレは席に座りながら、そう思った。
「昨日の夜は、遊戯たちと遊戯の家で、ゲームをして・・」 そこまで言った瞬間、オレはしまった!と思った。
なぜなら、兄サマの顔がさっきよりももっと険しくなったからだ。
「遊戯たちと、ゲームをしていただと・・?モクバ、お前はそんなことで、オレとの誓いを破ったというのか?俺がいつも何時までに帰ってくるようにいっていたか、答えてみろ、モクバ。」
「6時・・・。」 オレは力なくそう呟いた。
これからどんなめにあわされるのかは、もう想像がついていた。
「その通りだ。オレは6時に帰って来いといっていた。だがモクバ、おまえが昨日帰宅したのは、9時15分だったそうだな・・。朝食がすんだらオレの部屋に来い。お前に罰を与えてやる。だがその前にこれだけはいっておく。今後、一切遊戯たちに関わるな。いいな。」 「そんな兄サマ、ひどいよ!・・。お願い・・。」
予想外の兄サマの言葉にオレは困惑した。でも、兄サマはそんなこと気にせずにこういった。
「モクバ、これは命令だ。そむくことは許さん。」 「兄サマのバカ!!大っ嫌い!!」
気づいたときにはオレはそういって席をたって、駆け出していた。 そして最後にはこう叫んでしまった。
「絶対に謝らないぜぃ!!」 「はぁ・・・」 ここまで思い出しておれはため息をついた。 「どしようかな・・。」
今、家に変えれば間違いなく兄サマにお仕置きされる。 でもここでボーっとしていても。 「いい加減に気づいたらどうだ?」
突然の聞き覚えのある声・・。 振り返ると、やっぱり兄サマがいた。 「兄サマ・・・。」
「モクバ、さっきの件はオレも言いすぎた。すまなかった、帰ってきてくれ。」 え・・・・??いま、兄サマが謝った・・・?
嘘だ。信じられない。 「兄サマ・・・?」 「モクバ・・・。帰って来い。」 なおもやさしく兄サマが繰り返した。
オレはすっかりうれしくなって、兄サマにこういった。 「兄サマ、オレの方こそ、さっきはごめんなさい。」
わかってくれてうれしいよと手をさしだした瞬間・・・! ガシッと腕をつかまれた。 「兄サマ・・!?」
「フハハハハ!!もう逃がさんぞ、モクバ!邸に戻り次第、お前に罰を与えてやる。」
勝ち誇ったように笑う兄サマに、嘘つきといいながらもオレは少し安心していた。
もしこのままオレたちの絆が切れてしまったら、どうしようって・・。 でも、そんな心配、必要なかったんだね。 ありがとう兄サマ。そして、ごめんなさい。
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