お題(傷痕) かさね様
傷痕
傷が痛む。 オレたち兄弟に刻み込まれた見えない傷が。 それでも、夜はゆっくりと心を侵蝕する。 わかってるよ兄サマ。 痛みを忘れるために身体を重ねても 結局、傷を抉ることにしかならないこと・・・。 癒えない傷痕と 永遠の苦しみ。 オレたちを支配するのは、負の感情ばかり。 共に生き、共に求め合う。 その度に傷は深くなっていくのに。 甘美な夜に抱かれて、躯を闇に沈めていく。 押し寄せる快楽と絶望は、 傷痕となって同じ夜を繰り返えさせる。 それでも解放されることは望まない。 傷痕が深くなればなる程、熱は増していくのだから。 これは愛なんていう綺麗なものじゃない。 ただ、互いの存在が欲しいだけ。 手に入れる手段がないのなら、 ねぇ兄サマ。せめて、 その傷痕でオレを縛っておいて・・・。
★この作品の感想は掲示板にどうぞです!