自分は本当に愛されているのだろうか。そんなことを考えてしまうことがある。本当にあの男に愛されているのだろうか と。
この部屋に閉じ込められて数カ月が立つ。ペガサス島から帰還したその日に自室に外から鍵をかけられ、外に出ることはなくなった。食事は決まった時間にメイドが持ってきてくれる。だが、自分から外へは連絡手段がない。すべて、あの兄がしたことだった。そして、時々部屋を訪れては瀬人がすることはモクバ抱くことだった。
窓の外に夕日が見える。モクバはそれをぼんやり眺めていた。兄はここ二週間部屋を訪れていない。 だが、モクバは予感していた。 (兄サマは、今日この部屋へ来る)
この予感は外れたことがない。どうしてかはモクバ自身にも分からない。 「モクバ。」
不意に名を呼ばれ、一瞬どきりとする。振り返らなくても誰だかすぐに分かる。 「どうした、外になにかあるのか?」
窓際に座っているモクバに近付いてくる。モクバはこれからされるであろう行為を考え、窓際から離れ瀬人の横にたつ。 「何でもないよ」 「そうか。では行くぞ。」
当たり前のようにモクバの手を取り、寝室へと連れていく。いつまで、こんなことが続くのか。モクバはふと考えることがある。おそらく、一生続くだろう。モクバは考えることを放棄し、快楽に身を委ねた。
自分の隣で眠っているモクバの顔を瀬人はそっと見た。
この安らかな寝顔を見る度、モクバを誰にも渡したくないと思う。だから、この部屋からはださない。一生自分だけの傍にいさせる。 「おやすみ、モクバ」
モクバの耳元にそう囁くと、瀬人はモクバを胸元に抱き寄せ意識を手放した。 この瀬人の思いはモクバにはいつ届くのだろうか。
瀬人の偽りのない気持ちを。
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