お題( 愚者)
かさね様



愚かなる抱擁者




 
   「ねえ兄サマ、オレのコト好き?」
   「・・・・・・何だいきなり・・・;」
  社長室でパソコンに向かっていた瀬人は、ソファに座っているモクバに目を落とす。
  モクバは、ニコニコ笑って瀬人を見ていた。
   「オレのコト好きかって聞いてるんだよ」
   「・・・なぜ俺がそんな事言わねばならん・・・」
   「・・・? 兄サマ、オレのコト嫌い?」
  くるんとした大きな黒い瞳。その瞳が、瀬人を見上げる。
  とても愛らしいその姿に、溜め息をつく。
   「好きと言えばいいのか?」
   「・・・そう、だけど〜・・・!」
  少し不満そうに頬を膨らませるモクバを見て、瀬人の心に秘められた感情が騒ぎ出した。
  机から離れ、モクバのいるソファに腰を下ろす。
   「お前はわかっていない」
   「!? 何がわかってないのさ!」
   「じゃあ お前は・・・俺の事が好きか?」
   「当たり前だよ!オレ、兄サマのコト大好きだぜぃ?」
  必死で言うモクバの髪に、瀬人が指を絡ませる。
   「・・・兄サマ・・・?」
   「ほらな、やはりわかってなどいない・・・」
   「なに、ソレ・・・どういう意味・・・?」
  全く理解のできない瀬人の言葉に、モクバはきょとん、としているばかりだった。
 
  狂おしい程に愛しい存在が 自分の弟であること。
  それに気が付いたのは、いつだろうか?
  『好き』の言葉では終わらせる事のできない気持ちを持ってしまったこと。
  この過ちを犯してしまったのは、いつだろうか?
  この感情は、確実に『兄弟愛』などではない。
 
   「お前には、到底理解できんだろうがな・・・」
  冷たく、穏やかに笑った彼は 既にモクバの唇を噤んでいた。
  最初、大きく目を見開いていたモクバだったが、キスから開放されるとまるで天使のように微笑んだ。
   「わかるよ・・・兄サマ」
  その一言だけで充分だった。
  すべてを許そうとする瞳に、瀬人は 再び大きな愛しさを感じた。
   「モクバ・・・」
  瀬人は モクバの小さな身体を包み込むようにして抱きしめる。
  優しく、強く。
  モクバもそれに答えるように、瀬人の首に手をまわす。
  そして、子供を窺わせる瀬人の抱擁に静かに目を閉じた。
 
 
   『兄サマも、オレも・・・結局は一緒だったんだね・・・』
 
 
 
  過ちを犯しても 許してくれる誰かがいるなら
  それだけで 今は満ち足りていると・・・そう思うのは、自分勝手なのだろうか・・・?
 
 



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 コメント

 ぐっは〜! 書いちゃいましたわ〜!!一応シリアスのつもりなのですが・・・。
  どうもクソ甘いのになってしまいましたわね・・・。なにより言いたいのは、
     愚者はアタシだよ!!
  ・・・ってことです。 ああ、スミマセンでした・・・。
 
       では、失礼致します☆

 

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