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「インファナル・アフェアV 終極無間」

「無間道V終極無間」のポスター。6人の「影帝」の揃い踏みは壮観です(*^_^*)。


2003年 原題:無間道V終極無間 英語題:Infernal AffairsV
監督:劉偉強(アンドリュー・ラウ)、麥兆輝(アラン・マック)
脚本:麥兆輝(アラン・マック)、荘文強(フェリックス・チョン)
撮影:劉偉強(アンドリュー・ラウ)、伍文拯(ン・マンチン)
美術:雷楚雄(ロウ・チョウホン)
音楽:陳光榮(チャン・クォンウィン)
出演:梁朝偉(トニー・レオン)、劉コ華(アンディ・ラウ)、黎明(レオン・ライ)、陳道明(チェン・ダオミン)、陳慧琳(ケリー・チャン)、黄秋生(アンソニー・ウォン)、曾志偉(エリック・ツァン)、杜文澤(チャップマン・トウ)※、林家棟(ラム・カートン)、鄭秀文(サミー・チェン)
※「文」は「さんずい」が付く

ストーリー
  2003年10月、潜入捜査官・ヤン(梁朝偉)の死から10ヶ月あまりが過ぎていた。ひとり生き残ったラウ(劉コ華)はヤンの死に関して上層部から内部調査を受けるが、「部下の大B(林家棟)が実は黒社会のボス・サム(曾志偉)のスパイであることをヤンに知られたために彼を殺した」と証言し懲戒免職を逃れる。しかし、事件のほとぼりが冷めるまで閑職の庶務部に異動させられ、毎日、単調なデスクワークに明け暮れる。ラウとメリー(鄭秀文)は結婚し子供も生まれていたが、彼らの結婚生活は破綻し離婚調停が進んでいた。仕事も結婚も失ったラウは心身ともに疲れ果て、かつてのエリート警察官の面影はなかった。

  その頃、警察署内ではひとりの若いエリート警察官がめざましい功績を挙げていた。男の名前はヨン(黎明)。保安部の課長で、事件解決のためには黒社会の人間を利用するなど手段を選ばない一面も持っていた。ある日、警察署内においてヨンの目前で部下が自殺するという事件が発生する。自殺した男は死んだサムが送り込んだスパイだった。内部調査課に復帰したラウは、ヨンもサムと関係のある人間ではないかと疑いを持ち身辺捜査を始める。捜査を進めるうちに、大陸の武器商人・シェン(陳道明)とヨンが密かに会っていたことを突き止める。サムが生前にシェンと組んで大陸との密輸ルートを開拓しようとしていたことが分かり、ラウはますますヨンに対する疑いを強めるのだった。

  その頃、ラウの元にヤンの治療を担当していた心理科医・リー(陳慧琳)から電話が入る。2人は一緒にヤンの墓前を訪れる。リーはヤンの死のショックからオフィスを閉じていたが、再び診療を行うために戻って来たのだった。ヤンとの思い出を涙を流して語るリーを見て、ラウはヤンに対する羨望の気持ちを強くする。
  保安部のオフィス内に隠しカメラをセットしたラウはヨンの行動を逐一監視する。ヨンが自分のオフィス内の金庫に沢山のカセットテープを保管していることを突き止め、金庫のダイアルナンバーを解読する。ヨンの隙を突きラウは、金庫からカセットを盗み出すことに成功する。カセットの内容はヨンとサムの会話の内容を録音したものだった。動かぬ証拠を手に入れたラウは内部調査課のメンバーを引き連れ、保安部のヨンの元に行き逮捕を告げるが...。

この作品の見所
  「インファナル・アフェア」の大ヒットを受け、2003年の香港では続編として「インファナル・アフェア 無間序曲」、「インファナル・アフェアV 終極無間」の2本が製作、公開されました。「インファナル・アフェア 無間序曲」はウォン警視(黄秋生)とサム(曾志偉)の過去の因縁、若き日のラウ(陳冠希)、ヤン(余文樂)の姿を描き、彼ら4人の「無間道」の始まりを示した作品でした。「インファナル・アフェアV 終極無間」は「インファナル・アフェア」の後日談として、ひとり生き残ったラウ(劉コ華)を中心に過去と現在が錯綜するストーリーで、新たな登場人物として黎明(レオン・ライ)、陳道明(チェン・ダオミン)が加わるということで公開前から大きな話題になっていました。
  私も「インファナル・アフェアV 終極無間」は「無間道」三部作の最終章として一体どんな作品になるのか気になっており、公開されたら香港に必ず見に行こうと心に誓っていました(笑)。

  2003年12月に「インファナル・アフェアV 終極無間」は公開され、予想通り大ヒットを記録しました。しかし、その一方で「ストーリーが分かりにくい」という噂もチラホラと耳に入ってきました(^_^;)。過去と現在が交差しながらストーリーが展開するので、ついていくのが大変だというのです。そんな評判に影響されたのか、監督の劉偉強(アンドリュー・ラウ)と麥兆輝(アラン・マック)が12月末から未公開シーンを追加して再編集した「終極加長版」を上映することを発表しました。これは「ストーリーが分かりにくい」という声が多かったこと、大陸のネットで未公開シーンの一部を追加した「インファナル・アフェアV 終極無間」が勝手に流されてしまったので、海賊版対策として正式上映することに踏み切ったようです。しかし、大陸はすごいですね(^_^;)。未公開シーンなんて、一体どこから見つけた来たんでしょう(笑)。おかげで、2004年1月に香港に行った私は「終極加長版」を見ることが出来ました。

  覚悟して(?)見た「インファナル・アフェアV 終極無間」ですが、「終極加長版」でもかなりストーリーは分かりにくかったですね(^_^;)。私は1回見ただけでは十分に理解できず、2回見てきました。それでやっと人物関係やストーリーを理解しました。個人的には過去の回想シーンはもっと短くして、「その後のラウ」を中心に描いて欲しいと思いました。従来の登場人物に加えて、新しい登場人物がいるので話が本当にあっちこっちに飛びます(笑)。
実は上記のストーリーもどの部分を書くか迷ったのですが、ヤンの死後、「その後のラウ」に関わる部分だけ書きました。過去の回想シーンまで書いたら、私の拙い文章力では収拾がつかなく恐れがあるからです(^_^;)。

  「その後のラウ」は、かつての颯爽としたエリート警察官の面影はなく、ヤンの事件のほとぼりがさめるまでとはいえ庶務部の仕事をくり返す単調な毎日を送っています。私生活でも妻のメリーと離婚話が進み、自分の子供と会うことすらできません。心身ともに疲れきったラウの姿は哀れで、「インファナル・アフェア」とは別人のようでした。

閑職の庶務部で働くラウ(劉コ華)。広いフロアには彼の机しかない(^_^;)。

  そんなラウとは対照的に出世街道を驀進しているのが黎明が演じるヨンです。保安部の若きエリートであるヨンは事件解決のためには黒社会の人間を利用することも厭いません。決して清廉潔白ではなく、善人と悪人の境界線上にいる人間です。ラウはヨンの姿に、かつてサムの情報を元に出世を続けた自分を重ね合わせます。
  内部調査課に復帰したラウはヨンの身辺調査を進めていきますが、実はこれもヨンがラウに対して仕掛けた罠だったことが後半明らかになります。黎明(レオン・ライ)は「天使の涙」、「ラヴソング」、「玻璃(ガラス)の城」などの作品で素晴らしい演技を見せていますが、今回も銀縁メガネにスーツ姿でクールなエリート警察官のイメージにピッタリだったと思います。実はヨンは死んでしまったヤンと浅からぬ因縁があったのですが、詳細は映画を見てのお楽しみにしておいた方がいいでしょう(笑)。

保安部の若きエリート・ヨン(黎明)。彼が向ける銃口の先は...。

  ヨンの身辺調査を続けるラウの元に心理科医・リーから連絡が入ります。「インファナル・アフェア」では「偽りの生活」に疲れきっていたヤンが唯一人心を開く相手としてリーが描かれていましたが、陳慧琳(ケリー・チャン)本人はゲスト出演の気楽さであまり深く役作りはしなかったようです(^_^;)。「インファナル・アフェアV 終極無間」では過去と現在を繋ぐという重要な役割を持ち、彼女が残した治療記録から彼女とヤンが徐々に惹かれあっていた様子が描かれます。
  しかし、この治療記録を盗み読みしたラウは死んでもなお人々の心に残るヤンに対して羨望を強くしていき、徐々に奇怪な行動を取るようになってしまうのです。

ヤン(梁朝偉)のカウンセリングを行うリー(陳慧琳)。

  ウォン警視からの命令で渋々リーのカウンセリングを受けることにしたヤンですが、リーが若くて美人だったためにコロッとご機嫌になってしまいます(笑)。ところがリーのカウンセリングの中に催眠治療があることを知ったヤンは、催眠状態の中でうっかり自分の正体を話してしまうかもしれないと思い、あの手この手を使って催眠治療を妨害します。このときのヤンの行動があまりにもおかしいので、香港の映画館では大爆笑でした(笑)。梁朝偉(トニー・レオン)は「第1作ではヤンの明るい面を出せなかったので、第3作ではそういった面を演じてみた」と何かのインタビューで語っていたのですが、あまりにも明るすぎて私はちょっと違和感を覚えてしまいました(^_^;)。これは私が「インファナル・アフェア 無間序曲」を見たばかりで、運命に翻弄される若き日のヤン(余文樂)に肩入れしていたからかも知れません(笑)。

  過去の回想シーンには「インファナル・アフェア」で死んでしまったヤン、ウォン警視、サム、キョン(杜文澤)が登場して展開します。2002年6月(ヤンが死ぬ5ヶ月前)にサムは大陸への密輸ルートを確保するため、大陸の武器商人・シェンに近づきます。シェンを演じる陳道明(チェン・ダオミン)は中国のNo.1男優です。張藝謀(チャン・イーモウ)監督の「HERO」では秦王(後の始皇帝)を演じていたので、ご覧になった方も多いと思います。この作品では色々と謎の多いシェンという役を存在感たっぷりに演じており、「さすが!」という感じでした。私は「HERO」の秦王よりも今回演じたシェンの方が渋くてかっこいいと思います(笑)。

大陸の武器商人・シェン(陳道明)。実はその正体は...。

  サムはシェンとの取引を部下のキョンとヤンの2人に任せます。この頃のヤンはサムに仕えて3年近く経っているのですが、サムからの信用を得られていません。これは「インファナル・アフェア 無間序曲」との関連ですが、ヤンがガイ家(かつて香港の黒社会を牛耳っていたが、サムによって一族全員が皆殺しにされた)の血筋を引く人間なので、いつか自分を裏切るのではないかと用心しているからだと思いました。サムはヤンの忠誠心を試すためか、シェンとの取引の中でヤンが窮地に陥るような行動を取ります。キョンはボスであるサムに対して「ヤンが死んでもいいのか?」と抗議しますが、サムは全く耳を貸しません。サムの冷酷な態度に「お馬鹿のキョン」も実はこの時から不信感を抱いていたのかも知れません。「インファナル・アフェア」でキョンがヤンを庇って自分の命を落としたのもこの事件が端を発しているのではないかと見ていて思いました。

ヤン(梁朝偉)と語り合うサム(曾志偉)。笑顔でも目だけは笑っていない(^_^;)。

  「インファナル・アフェア」のラストで去り行くヤンの後姿に向かい、ラウは「俺はあいつと代わりたい」と呟きます。私はこのセリフは「ヤンのように、俺も善人の道を歩みたい」という意味だと解釈し、「ラウはこれからも善人になるためにイバラの道を歩み続けるのだろう」と漠然と考えていました。しかし、「インファナル・アフェアV 終極無間」でのラウは私の想像以上の「無間地獄」を彷徨っていました。皮肉にも「俺はあいつと代わりたい」というヤンに対する羨望が更なる「無間地獄」を生む結果になってしまったのです。この作品の終わり方については色々な意見があるかと思います。私も最初に見たときは納得いかなかったのですが、2回目に見たときに「これがラウの無間道なんだ」と思い直しました。

  「インファナル・アフェアV 終極無間」は本当にストーリーが複雑なので、このレビューも勘違いがかなり多いと思います(^_^;)。香港では「無間道」の小説本(ノベライズ)も出版されており、これを読むと映画には出てこなかったエピソードや登場人物の心情が詳細に描かれています。この小説本、日本でも発売してほしいですね。小説本を読むのと読まないのとでは、大分作品に対するイメージが違います。もしも、出版関係の方がこのレビューをご覧になっていたら、ぜひご一考下さいm(..)m。
  

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