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「インファナル・アフェア 無間序曲」

上の画像は「無間道U」香港版ポスターです。前作と比べると登場人物がやたらと多いですね(笑)。


2003年 原題:無間道U 英語題:Infernal AffairsU
監督:劉偉強(アンドリュー・ラウ)、麥兆輝(アラン・マック)
脚本:麥兆輝(アラン・マック)、荘文強(フェリックス・チョン)
撮影:劉偉強(アンドリュー・ラウ)、伍文拯(ン・マンチン)
美術:雷楚雄(ロウ・チョウホン)
音楽:陳光榮(チャン・クォンウィン)
出演:黄秋生(アンソニー・ウォン)、曾志偉(エリック・ツァン)、劉嘉玲(カリーナ・ラウ)、呉鎮宇(フランシス・ン)、胡軍(フー・ジュン)、陳冠希(エディソン・チャン)、余文樂(ショーン・ユー)、杜文澤(チャップマン・トウ)※、張耀揚(ロイ・チョン)
※「文」は「さんずい」が付く

ストーリー
  1991年、香港の黒社会はガイ家によって牛耳られていた。7月14日の夜、ガイ家の当主・クワンが何者かに暗殺される。クワンには5人の幹部がいたが、そのうち4人の幹部はクワンの死をきっかけにガイ家の配下から抜けようと企てる。ただ一人、新参の幹部・サム(曾志偉)だけはガイ家への忠誠を示す。しかし、クワンの暗殺はサムの妻・メリー(劉嘉玲)が企てたものだった。サムを愛し彼の黒社会での出世を願うメリーは、サムに内緒で入門したばかりの若者・ラウ(陳冠希)を使ってクワンを殺させたのだ。
  同じ夜、警察学校のイップ校長の誕生パーティが盛大に行われていた。パーティには組織犯罪課の刑事・ルー(胡軍)と訓練生・ヤン(余文樂)も出席していた。そこへガイ家の次男・ハウ(呉鎮宇)が部下のローガイ(張耀揚)を伴って現れ、ヤンに向かってクワンの死を告げる。実はヤンはクワンの愛人の子で、ハウとは異母兄弟の関係だった。黒社会と縁を切ることを誓ったヤンは母方の姓を名乗り、身分を隠して警察学校に入学していたのだった。
  当主を失ったガイ家は、ハウが跡目を継ぐことになった。ハウは会計士を務めており外見は紳士然としているが、内には狡猾で残忍な一面を秘めていた。4人の幹部が造反を企てていることを察知したハウは、幹部たちの弱みを握って彼らの造反を抑える。サムはハウに対しても変わらぬ忠誠を示し、彼の信頼を得る。
血を流さずに造反を抑えた切れ者のハウに対し、組織犯罪課のウォン(黄秋生)とルーは警戒心を強める。
  黒社会の血縁者であることを知られてしまったヤンは、イップ校長から退学を命じられる。警察官への道を断たれ涙を流すヤンだったが、ヤンの優れた観察力、記憶力に目をつけたウォンから黒社会への潜入捜査を命じられる。表向きは退学処分を受け警察学校から去っていくヤン。彼と入れ替わりに入学してきた若者たちの中にサムの部下・ラウがいた。ラウはサムの命令で警察への潜入を言い渡されていたのだった。
  ヤンは事件を起こし、刑務所に服役する。そこで、ヤンはかつて駐車場で車を盗もうとして彼に捕まったチンピラ・キョン(杜文澤)と再会する。当初は反目しあう2人だったが、父親の死に目に会えず獄中で泣きじゃくるキョンをヤンが慰めたことから2人の間に友情が芽生える。

  1995年、警察学校を卒業したラウは刑事としてウォン警部と同じ署内に勤務していた。サムから黒社会の情報を流して貰う事でラウは順調に昇進していた。一方、刑務所を出たヤンは、相変わらず喧嘩に明け暮れる日々でいつ命を落としてもおかしくなかった。ヤンの恋人・メイは彼との将来に不安を感じ、お腹に宿していた彼の子を中絶したと告げる。それを聞いて更に荒れ狂うヤン。メイはそんなヤンに別れを告げる。
そのとき、ハウの部下・ローガイが現れ、ヤンをハウの元に連れて行く。ハウは異母弟のヤンのことを気にかけており、自分の下で働かないかと話を持ちかける。ヤンはハウの申し出を受け入れるが、これはハウの側にいて彼の情報をウォンに流すためであった。
  ヤンの情報でハウが重要な取引を行うことを知ったウォンとルーは取引の現場を押さえ、ハウたちを署に連行する。しかし、ハウは犯罪の証拠となるような物は何も持っていなかった。ハウは1本のビデオテープを出し、ウォンとルーに見るように告げる。ビデオテープにはホテルの一室でクワンの暗殺について語り合うウォンとサムの妻・メリーの姿があった。4年前、メリーがクワンを暗殺するように仕向けたのはウォンだったのだ。ビデオテープを見て、愕然とするウォンとルー。この一件からウォンは殺人教唆の罪で内部調査を受け、自宅謹慎を命じられる。
  その頃、かつてハウに対して造反を企てた4人の幹部の粛清が実行された。指令を下したのはハウだが、彼は警察で取調べを受けている最中なので立派なアリバイがある。サムはハウの命令でタイに行っていたが、メリーからの電話で自分の命も危ないことを知る。サムはタイの組織から殺されそうになるが、人質を取りキョンと共に逃亡、行方不明になる。そして、メリーの元にもハウの刺客が現れ彼女を殺そうとするが、ラウによって救われる。ラウはメリーを連れて郊外の隠れ家に身を隠す。
  証拠不十分で釈放されたハウは、ヤンの目の前で部下のローガイを撃ち殺す。実はローガイはルーが送り込んだ潜入捜査官だった。兄の冷酷な一面を目の当たりにして愕然とするヤン。そのとき、バイクに乗った刺客がハウの命を狙うが、咄嗟にヤンは身を挺して彼をかばう。この一件からハウはヤンに対する信頼を更に深める。
  一方、メリーは行方不明になったサムの身を案じ、隠れ家を出てタイに行こうとする。ラウはメリーの前に立ちはだかり、彼女の行く手を阻む。ラウは密かにメリーに恋心を抱いていたのだ。4年前にクワンを暗殺したのもメリーの役に立ちたいと言う一心からだった。メリーに自分の想いを告げるラウだったが、彼女は冷たく「私はあんたのボスの女なのよ」と言い放つ。去っていくメリーの後姿をラウは恨めしそうに見つめる。

  1997年、香港の中国返還が数ヵ月後に迫っていた。ハウは香港の名士として表の世界にも君臨しつつあった。ヤンはハウの片腕として働き、尖沙咀のボスに出世していた。ラウは出世を重ね、情報課への配属が決まっていた。ウォンは内部調査を受けたものの免職は逃れ、ハウを摘発するため再び動き出した。サムがタイで生きていることを知ったウォンは彼をハウの悪事を暴くための証人として香港に連れ帰る。窮地に追い込まれたハウはサムを呼び出し、過去の経緯を水に流し懐柔しようとするが...。

この作品の見所
  「インファナル・アフェア」の大ヒットを受け、2003年10月に「インファナル・アフェア 無間序曲」が香港で公開されました。元々、「無間道」の脚本は10年以上にわたる壮大なストーリーで3部作として考えられていたようです。今までの香港電影のような「ヒットしたから、急遽続編を作っちゃいました」的な作品ではありません(^_^;)。通常の続編は「その後の物語」を描くことが多いですが、 「インファナル・アフェア 無間序曲」は1991年から1997年にかけての「過去の物語」を描いています。、若き日のラウとヤンが潜入になる経緯、そしてウォンとサムとの因縁が語られ、彼らの4人のストーリーに新たな登場人物としてサムの妻・メリー、ヤンの異母兄で黒社会のボス・ハウ、組織犯罪課の刑事でウォンの親友・ルーが絡んでいきます。

  物語の発端は「インファナル・アフェア」から10年以上前、1991年に遡ります。組織犯罪課のウォンも黒社会の幹部・サムもまだ若く、2人は友人というか「付かず離れず」という奇妙な関係を保っています。ウォンを演じた黄秋生(アンソニー・ウォン)は若く見せるためにダイエットして体重を落としたそうです。サムを演じた曾志偉(エリック・ツァン)も前作の大ボスの雰囲気とは違って、「まだ下っ端の幹部」という感じで若々しく感じました。
  映画の冒頭でウォンとサムが警察署内で対峙するシーンが出てきますが、サムはウォンの目の前で弁当を食べています(^_^;)。このあたりは「インファナル・アフェア」を見た人だったら意味が分かるので、クスッと笑ってしまうと思います。他にもシンクロするシーンが何箇所か出てくるので、この作品を見る前に「インファナル・アフェア」を見ておいた方が更に楽しめるでしょう(笑)。

  サムの妻・メリーは美人で頭がよく、サムのことを深く愛しています。日本で言えば「極道の妻」ですが、劉嘉玲(カリーナ・ラウ)は存在感たっぷりに演じています。夫の出世を望むメリーは、サムに内緒で前科の無いラウに命じてガイ家の当主・クワンの暗殺を実行します。ラウはメリーへの想いから暗殺に加担したのですが、彼の恋心は後に大きな悲劇を起こす原因になってしまいます。若き日のラウを演じた陳冠希(エディソン・チャン)ですが、この作品ではボスの妻に恋してしまった葛藤みたいなものをもう少し表して欲しい気がしました。雰囲気が劉コ華(アンディ・ラウ)に似ているので、若い頃から成長したラウに変わっても違和感が少ないので、心理面の部分もシンクロさせていれば更に良かったと思います。

  警察学校の訓練生・ヤンはガイ家の当主・クワンと愛人の間に生まれた子供でした。彼は黒社会と縁を切るために身分を隠して警察学校に入学したものの、クワンの死を異母兄のハウが知らせに来たことで秘密がバレて警察学校を退学することになってしまいます。絶望するヤンの前に現れたウォンは「そんなに警察官になりたいのか?」と問いかけます。ヤンは「自分は善人になりたい」と答え、黒社会への潜入捜査官になることを受け入れます。
  ハウの信頼を得て彼の側で働くことになったヤンですが、血の繋がった兄を裏切る形でウォンに情報を流していきます。「自分は警官だ」という正義への執着心の元に潜入捜査を続けるヤンですが、ハウがローガイを潜入捜査官であることを見破り、殺すのを見たときに愕然とし絶句します。これは「自分も身分がバレたら殺される」という恐怖を改めて感じたのだと思いました。セリフのない場面でしたが、ヤンの心情がよく伝わってくるシーンでした。
  そして、ハウの片腕に成長したヤンはどこから見ても分かる黒社会の一員に変貌します。それでも彼の心は警官であり続け、ある人の墓前で再会したウォンに対し長年集めたハウの犯罪の証拠を渡すのです。この時の余文樂(ショーン・ユー)の表情は前作の梁朝偉(トニー・レオン)を彷彿とさせるものがありました。余文樂(ショーン・ユー)は梁朝偉(トニー・レオン)の役を演じることのプレッシャーに悩まされたそうですが、表情だけ、眼だけの演技も上手かったし、この作品で演技力が大きく進歩したように感じました。

  ヤンの異母兄・ハウは黒社会のガイ家で生まれたものの、元は会計士だったので学識があり見た目は知的な紳士です。愛人の子であるヤンにも分け隔てなく気を配り、自分の娘の誕生パーティでは優しい父親の表情を見せます。しかし、その内面には狡猾で冷酷なものを秘めており、警察から見れば非常に危険な人物です。
  ハウを演じた呉鎮宇(フランシス・ン)も香港電影界では名優のひとりとして知られており、私の好きな俳優のひとりです。監督の劉偉強(アンドリュー・ラウ)は本当は前作に呉鎮宇(フランシス・ン)を出したかったらしいのですが、スケジュールの都合で叶わなかったので、「インファナル・アフェア 無間序曲」を撮る事が決まったときに、すぐ彼にオファーを出したそうです。「インファナル・アフェア 無間序曲」ではハウが重要なキーパーソンですが、呉鎮宇(フランシス・ン)の「過剰にならない抑えた演技」でより一層ハウの「外面と内面の違い」が強調され、役に重みが出てきたと感じました。余文樂(ショーン・ユー)も呉鎮宇(フランシス・ン)と共演する場面が多かったので、演技の面で大いに参考になったようです。

左・ハウ(呉鎮宇)、右・ヤン(余文樂) 異母兄弟とはいえ似て無さ過ぎ(^_^;)

  ウォンとサムの関係はお互いの利害の一致(ウォンはハウを摘発したい、殺されかかったサムはハウに復讐したい)で何とか均衡を保っていましたが、最後には今後2人が敵対していくことが示唆されます。そして、ラウとヤンも直接の接点こそないものの、実は10年以上前から交差する運命にあったということがこの作品で描かれています。4人の「無間道」の始まりを知って、「インファナル・アフェア」を見るとまた違った感想を持つことでしょう。

上の写真は2003年9月に香港の映画館にあった「無間道U」の立て看板です。香港版DVDジャケットも同じデザインでした。


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