脱線空間
第2回 「居場所」のコスト。
前の記事へ|次の記事へ
- 「子ども・若者たちの居場所づくり」などと言うと、その柔らかい語感のためかどうしてもそうした居場所(フリースペース)におけるコミュニケーションの方面にばかり関心が集中しがちで、居場所を社会的・物理的に準備するための様々なコスト(具体的に言うなら、「資金」や「労働力」のことだ)の問題について見過ごされがちになる。もちろん居場所づくりには、ハードウェアとソフトウェアの二つの側面があるわけで、その両方について考察してみないことには、記述として不十分である。そこで今回は、居場所づくりの財政・運営に関して、私なりの考えをまとめてみたいと思う。
- 当然ながら、いつでも誰でも気軽に立ち寄れる拠点としての居場所をつくる場合、そのための空間をまずは物理的に確保しなくてはならない。「ぷらっとほーむ」では山形市内の借家がそのスペースにあたり、そのための家賃がまずは必要だし、さまざまな備品等も必要である。当然、そうした空間の恒常的な維持・整備のための諸々の事務作業に専従するスタッフの確保のためにもコスト(事務職員の人件費)が必要だ。ではそうした活動に必要な「資金」をどうやって調達するか。方法は三つある。すなわち、@行政・財団等からの援助助成、A受益者からの利用料収入、B支援者からの寄付。順に説明しよう。
- まずは、@行政・財団等からの援助助成。こうした公的な援助助成とは、もとは公的機関が担ってきた機能・権限の一部が現場のNPO活動に委譲されたもの。つまりは、公的資金の再配分だ。このような再配分にあずかるということは、公的なお金の使いみちを問い直す過程(政治の過程)に参画するということでもあるため、「ぷらっとほーむ」でもこの方向は模索していきたいと考えている。しかしながら、そこを主な資金調達先にしてしまうと、活動それ自体のフリー・ハンドが損なわれてしまう可能性が伴う。つまりは、資金調達先(行政・財団等)の思惑・思想への依存の危険性だ。ではどうするか。
- 次は、A受益者からの利用料収入について見てみよう。そこにあるのは、フリースペースの利用者(当事者)自らが居場所開設に必要なコストを分担する(自分たちが必要としているものは、自分たち自身で負担する)という、当事者主義。「ぷらっとほーむ」のコンセプトは「当事者自身による、当事者自身のための居場所づくり」であるゆえ、ある程度のコスト負担はむしろ必要だというのが私たちの発想だ。しかしながら、そうしたコスト負担が過重になってしまえば、居場所の敷居それ自体が高くなってしまう。富裕者のためだけの居場所。そんなものはフリースペースとは呼べない。ではどうするか。
- これら(@、A)の代わりに私たちが積極的に採用したいと考えている(そして実際に採用している)のが、B支援者からの寄付という方法だ。「ぷらっとほーむ」には、その活動理念に賛同する個人・団体からの定期的な支援資金供給の仕組みとして「後援会員/賛助会員」制度が存在する。そこにあるのは、理念に共鳴した(当事者ならざる)人々が少しずつ幅広く出し合ったお金によって支えられた居場所というイメージだ。この方法は、私たちの理念・目的を、当事者ならざる人々に理解してもらうことと不可分。ゆえに、活動理念の普及と財政基盤の整備とが正の相関関係にあるというメリットがある。決して当事者ではないものの、当事者の痛みや苦しみを理解し共感しようという「想像力」や「寛容さ」にみちた人々。彼(彼女)らの存在がなければ、現在の私たちはいない。深く感謝したい。
- (たきぐち)
前の記事へ|次の記事へ
▲ページトップへ