顎の関節がカックンカックンするようになったなぁと思っていたら、少しずつ口が開かなくなってきた。

いつしかハンバーガーが食べられない、お寿司が食べられないということに気がつきました。
アイスキャンディーが食べられない。おにぎりが食べられない。カレーライスが食べられない。
そしてフランスパンなんて食べようものなら激痛が走るようになりました。

みんな小さくしてしまえば食べられる事は食べられるけど、日にちを追うごとに
耳の下あたりがこわばってきて、朝起きた時には顎がしびれるようになってきた。

同じ社宅に住む奥さんが
「私もそんなふうになったわよ。神奈川の大学病院で手術したら治ったの。
早く行った方がいいいよ。まだ珍しい病気だから大きい病院の方がいいかもね口腔外科のある。」

実際その病気にかかって治った人が目の前にいると心強い。
アイスキャンディーもおいしそうにほおばっているし。

よし、病院行くぞ!口腔外科ねぇ初めて聞いたなぁ。
大きい病院がいいって言ってたから、大学病院にしよう。
と、ダイレクトに浜松医科大学 口腔外科に行ってみた。
こんな大きい病院はじめてである。

受付を終えて診察室いくと私と同じ位くらいの小柄な女医さんがいた。
「紹介状は持ってますか?」
「いいえ」(そうか小さい病院から回されてくるのが普通だよな)
勧められた経緯を話して先生も納得。診察が始まった。
当初、開口は1cmと少しくらいです。

「いつからですか?虫歯はある?頬づえついたりしない?横向きで寝てる?
足を組んだりする?片方ばかりで噛んだりしない?」などなどの質問を受け、レントゲンをとったり顎の触診をしたりしました。
「とりあえずお薬を出します。」といわれ、痛み止めと筋弛緩剤をもらい、
次の予約をとり帰ってきました。

薬を飲んでいてもあまり変わらないのでスプリントというマウスピースのようなものをはめて、噛み合わせの矯正をすることになりました。→

口、開かないんですから型とるの大変でしたよ。
呼吸するのも途中から苦しくなるし。ひー。

1週間後、できたモノを装着すると締め付けられるような感じがしました。
ちょっと頭も痛くなるかんじ。
これをはめて寝るように言われました。できれば昼間も と、いわれたのでできる限りはめてみましたが、あまり症状が変わることはありませんでした。

磁気共鳴画像診断装置。電波と磁気を利用して身体を輪切り状態にして撮影する検査方法です。
骨や神経の病気によく用いられるようです。

金物がついたモノをはずし、検査服に着替えて説明を受けます。
「磁場を発生させて検査します。ドンドンという音が鳴りますが驚かないでリラックスして下さいね。
狭いところは大丈夫ですか?」など話をされ、いよいよ検査開始・・・

カプセルホテルのような筒状の装置の中へ寝台に寝ている自分がスライドされていきました。
なんだか妙な気分、宇宙にでもいくのかな??ってカンジ。
中は蛍光灯の照明がついていて、検査中ずっと明るかった。
体はベルトで固定されて動けないので目だけきょろきょろ・・・
遠くの方でラジオ音楽のようなモノが流れている、リラックスさせるためかな。
装置が動いてシェイクされたらどうしよう(宇宙飛行士の訓練じゃないっツーの)
ナーンテ考えてると

「じゃぁ検査始めます。動かないで下さい。」
説明通り ドンドン と音がしている。1度止まってまた ドンドン。
これを数回して検査が終わり無事装置の外に出してもらえた。

15分くらいかな?後半は目を閉じて寝てました。周りの景色が変わることもないし、
シェイクされる事もないので、暇をもて余しました。

「結果については後日、診察でお知らせします。今日は帰っていいですよ」
といわれたので着替えて替えることに。初体験でしたねー。重病人にでもなったみたいです。

1週間後検査の結果を聞きに行った。
「顎関節円板に癒着が見られます。この円板が関節の手前にきていて、引っかかって口が開かなくなっています。 手術をしましょう。」
やっぱりそうですか。『手術して治った』って聞いていたからそんなに驚かなかったけど、不安状態はテンパってました。一体どんなことするんだろう。。。
手術日を決め、入院に関する案内の紙を渡され、大まかな手術の内容を説明されて帰ってきました。
大手術じゃないけど落ち着かないですよねー。
とにかく手術日まで片付けしまくりの掃除しまくりの買い物しまくりの緊張状態。
入院中の唯一の楽しみは自分で作らずにご飯が食べられること。
上げ膳据え膳嬉しいな♪♪そうこうしているうちに手術日が近づいてきた。

ナースステーションに行くとケロケロけろっぴのシールを名札に貼った若い男の先生が出てきた。
「あいにく口腔外科の病室は満員なので、隣の小児科の病室をご案内します。少し我慢して下さい。」帽子を被って自転車に乗っていると小学生と間違われる私。違和感ないと思って小児病棟につっこまれたかそれとも偶然か????
ま、子ども達かわいいし意外と静かで いっか。
8月の暑い日だったが病院内は空調が効いていて、手術服に着替えると肌寒いくらいだった。すぐに血圧、体温、脈拍のチェックをされた。

まず手術説明。「耳の横を数センチ切って内視鏡を入れ、癒着している部分を削ります。麻酔は全身麻酔です。手術前にアレルギー反応テストや気持ちをリラックスさせる薬の入った注射を2本打ちます。ここは大学病院なので手術中、術後経過を資料として写真撮影などさせて頂きます。ご協力下さい。こちらの承諾書に目を通してサインをし、終わったら麻酔科に行って問診を受けて下さい。」

と、言われたので麻酔科へ。こちらも若いお兄ちゃん先生だいじょうぶかいな?
「アレルギーはないですか?気分はどうですか?手術、麻酔の経験は?手術後だるいカンジがすると思いますが、気持ち悪くなったりしたら言って下さいね。では、こちらの承諾書にサインして下さい。」麻酔でも承諾書がいるんだ・・・知らなかったなぁ。

病室に戻ってしばらくすると看護士さんが注射を打ちに来た。手術する部分の毛を剃られ、手術室に案内された。重病人じゃないから自分で歩いて行くんだよな。そうだよな。
初めての事だけに勝手にいろんな想像をしてしまいます。車付担架で運ばれるとか・・・ほとんどテレビのシーンが背景だけど。

看護士さんが2人いる。
「お名前と生年月日言って下さい。」手術の準備をしながら声をかけてくる。酸素マスクのようなものを顔に当てられた。この時点では麻酔は背中に打たれるモノと思っていて、「痛いんだろうなぁー」ナンテ人から聞いた話でまた勝手な想像をして憂鬱な気分になっていました。
しかしこのマスクが実は麻酔だった!「10数えてくださーい。」「1.2.3.4.・・・」と数えているうちに担当の先生の声が聞こえた。(あー先生来た・・・)安心したのか5.6あたりまで数えてその後眠ってしまったようです。

見舞いに来た夫の声で目が覚めた。自分の病室に戻っていた。
麻酔で眠ってから一体何時間経ったのかなぁ。薄く開いた目からは窓の外の夕焼けが見えた。起きあがることはできない。気分は悪くないが猛烈に眠い。夫を横に悪いが二度寝する。

数時間後、尿意で目が覚めた。さっきと違って身体も覚めたというカンジ。とにかくトイレへ・・・
うぉぉ!、チューブつけられてるよ、しかも溜まってる・・・なんだか恥ずかしいやらショックやら、はずしてもらわなくちゃとナースコール。無事はずしてもらって起きあがる。ちょっとふらふらするがめまいなどはない。トイレについてふと鏡を見ると
うぉぉ!縦横10cm、厚さ5cmくらいのデッカイ絆創膏が両耳に貼られ髪ボッサボッサの自分がそこに・・・ヘッドホン掛けてるみたいといえば聞こえはいいけど顔もむくんでパンパンで信じられない姿にまたまたショック。

用を済ませて病室に戻り、あーこの絆創膏いつはずしてもらえるんだろう・・お腹空いたなー朝から何にも食べてないよ・・といろいろ考えているうちにまだ残っている身体の怠さも手伝ってかまたすぐに眠りに入ってしまいました。

翌朝、すぐ絆創膏ははずしてもらえました。出血もないということでテープのような絆創膏になりました。よかったぁぁいくら病院でも両耳に鏡餅でもくっつけてるみたいで恥ずかしいッス。
「口、開けてみて」と先生。自分ではあまり変わったカンジはしない。
「痛くないですか、ま、こんなモノね。午後また診察しますから。戻ってご飯食べて下さい。」やったぁぁやっとご飯です。はっきり覚えてないけど柔らかいご飯に細かく刻んだおひたしに煮魚、牛乳だったような。。。とりあえず食欲は満たされました。

食事が終わりしばらくくつろいでいると、病室などいろいろ教えてくれたけろっぴ先生がやってきました。手に木製洗濯ばさみを大きくしたようなモノを持っています。→
「これから口を開ける練習するからね、この先の方を口に入れて握り、なるべく大きく開くように頑張ってごらん」長い間顎関節が動かない状態が続いていたので強制的に口を開けるのはなかなかつらい。手術も終わったばかりだしぃー傷口も心配だから興味本位で気が向いた時だけ無理のない程度にやっていました。

午後の診察になった。担当の先生が「けろっぴ君やってみた?」開口器(デカ洗濯ばさみ)をけろっぴ先生に渡している。そして私の口につっこんで開きだした。。。イテテテッ。
「けろっぴ君ダメダメ!!涙出てないじゃない。貸してっ!」といって思いっきり・・・
 メキメキメキッ イターーーーーーーッイ!!!!!
ご期待に応えましたよ、涙ボロボロ。顎の骨、粉砕するかと思いました。マジで。
「ね、このくらいやらなきゃ!」って先生、かわいい顔して すごい。。。けろっぴ先生退いてますって。
「これから毎日3回、開口器で口を開ける練習して下さいね。じゃないとまた開かなくなっちゃいますから。」
次の日、開口器というお土産つきで無事退院した。6万円くらいかかったかナー。

開口練習を頑張ったおかげで口はだいぶ開くようになりました。
耳横の傷口も病院でもらったテープ絆創膏を先生のいうとおり2年間くらい貼り続けたのできれいに治り、何処にあるのかわからないくらいです。。

大きく開くと関節がジャリジャリいったり、顎に負担がかかると痛くなったりするけど、病院に行かなくてはならない程の再発はなく、親知らずの抜歯治療もできてホントよかったです。