1.主な肝臓の病気
2.肝臓の検査
3.肝炎ウイルスマーカー
4.肝生検と画像診断
5.生活について
6.薬物治療について
7.栄養治療について
・A型肝炎(急性肝炎)
・B型肝炎(急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝癌)
・C型肝炎(急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝癌)
・肝腫瘍(血管腫、肝癌など)
・アルコール性肝障害(肝炎、脂肪肝、肝硬変など)
・自己免疫性肝炎
・原発性胆汁性肝硬変
・脂肪肝(過栄養性:肥満、糖尿病)
・薬剤性肝障害
・先天性・遺伝性肝疾患
肝炎の型 | 起因ウイルス | 病型 | 感染経路 | 備考 |
---|---|---|---|---|
A型肝炎 | A型肝炎ウイルス(HAV) | 急性肝炎のみ | 経口 | 家族内感染に注意 |
B型肝炎 | B型肝炎ウイルス(HBV) | 急性肝炎 慢性肝炎 肝硬変 肝癌 | 非経口 | 家族内に肝疾患がみられることがある |
C型肝炎 | C型肝炎ウイルス(HCV) | 急性肝炎 慢性肝炎 肝硬変 肝癌 | 非経口 | 急性肝炎は慢性化しやすい |
肝疾患の種類や病態が複雑なため、診断・治療方針・治療効果などを知るうえで、さまざまな検査が必要となる。
以下に主な検査項目を簡単に説明したが、正常値は病院、検査方法などによって異なる。患者自身が個々の結果だけから病状を判断するのは危険である。主治医とよく相談して、療養を進めることが大切。
検査項目 | 当病院の 正常値 | 単位 | 異常 | 説明 |
---|---|---|---|---|
トランスアミナーゼ | 肝細胞の傷害の程度に応じて血中で増加する酵素。非常に鋭敏な検査 | |||
GOT(AST) | 11〜31 | IU/l | ↑ | |
GPT(ALT) | 7〜52 | IU/l | ↑ | |
ALP (アルカリフォスファターゼ) | 85〜253 | IU/l | ↑ | 肝臓から胆汁へ排出される酵素で、胆汁の流出障害で上昇する。また、アルコール(飲酒)による肝障害や骨が作られる時〔成長期の小児)にも増加する。 |
LDH(乳酸脱水素酵素) | 122〜201 | IU/l | ↑ | GOT・GPTとほぼ同様の意義をもつが、変化が速い。又、肝臓以外(心臓など)からも血中へ放出される。 |
血清ブルビリン | ヘモクロビンの分解産物で、肝臓を通して胆汁へ排出される。胆汁の流出障害(胆石など)や肝細胞障害で血中に増加する(黄疸という)。 | |||
総ブルビリン | 0.2〜1.2 | mg/dl | ↑ | |
直接型ブルビリン | 0〜0.4 | mg/dl | ↑ | |
Ch-E(コリンエステラーゼ) | 0.50〜1.18 | 冪H | ↑↓ | 肝臓でつくられ血中に放出される酵素で、タンパクの合成能を示す。肝炎、肝硬変で減少するが、脂肪肝では上昇する。 |
γ-GTP(GGT) | 0〜67 | IU/l | ↑ | ALPとほぼ同様の意味をもつ他に、アルコールによる肝障害で鋭敏に増加する。 |
TP(総タンパク) | 6.6〜8.2 | g/dl | ↓ | アルブミンとグロブリンの和。総タンパクの増カはグロブリンの増加を、低下はアルブミンの減少を示す。 |
アルブミン(Alb) | 4.2〜5.3 | g/dl | ↓ | 肝臓で作られる主要なタンパクであり、肝臓の働きを知る指標となる。肝硬変や栄養不良で低下する。 |
血中アンモニア | 12〜66 | μg/dl | ↑ | 肝臓で解毒されるためにその上昇は肝機能の障害が強いことを示す。肝性脳症の原因となる。 |
血清総コレステロール | 131〜239 | mg/dl | ↓ | 肝臓で合成されるために肝機能の指標となる。低下は肝障害の程度を示し、増加は胆汁排泄障害を示す。その他に動脈硬化の指標として用いられる。 |
lCG 15分停滞率 (R15) (インドシアニングリーン試験) | 10以下 | % | ↑ | 肝臓の血流量および全般的な肝機能を示す。慢性肝炎や肝硬変で低下する |
PT(プロトロンビン時間) | 11〜14 (80〜100) | 秒 (%) | ↑ ↓ | 肝臓で合成されるタンパクで、血中寿命が短い。低下は強い肝障害を示す。劇症肝炎の予知に用いられる。 |
AFP (アルファフェトプロテイン) | 20以下 | ng/ml | ↑ | 肝癌で高値となる。肝硬変でも一時的に高くなることがある。 |
血小板 | 16〜34 | ×104個/μl | ↓ | 血液を固まらせる血液中の細胞。肝臓 病の進行とともに減少する。 |
ウイルスの種類 | 検査項目 | 正常 | 異常 | 説明 |
---|---|---|---|---|
A型肝炎ウイルス | IgM‐HA抗体 | (−) | (+) | lgM‐HA抗体はA型ウイルス肝炎の早期診断に役立つ。 |
IgG‐HA抗体 | lgG‐HA抗体は過去にA型肝炎にかかったことを示す。 | |||
B型肝炎ウイルス | HBs抗原 | (−) | (+) | B型肝炎ウイルスの殻の部分の抗原で、陽性の場合は感染状態にある。 |
HBs抗体 | HBs抗原に対する抗体。陽性の場合は過去にB型肝炎ウイルスに感染し、現在は完治していることを示す。 HBワクチン接種で陽性となる。 | |||
抵抗体価 | 感染早期より出現して長年持続する。低抗体価は過去のB型肝炎ウイルスの感染を、高抗体価は感染状態の持続しているB型肝炎ウイルスキャリアにみられる。 | |||
HBc抗体 | ||||
高抗体価 | (−) | (+) | ||
IgM‐HBc抗体 | (−) | (+) | 感染初期に一時的に血中に出現するが、キャリア状態でもみられる。B型急性肝炎では一般に高抗体価(陽性)を示す。B型慢性肝炎の増悪期に低抗体価(陽性)を示す。 | |
HBe抗原 | (−) | (+) | 陽性の場合はウイルスが盛んに増殖していて、感染性が強いことを示す。HBs抗原、HBe抗原がともに陽性で、 GOT、GPTに異常があればB型慢性肝炎が疑われる。 | |
HBe抗体 | (−) | (+) | HBe抗原に対する抗体。陽性になればウイルスが減少し 感染力が弱まっていることを示す。肝炎は鎮静化することが多い。 | |
HBV‐DNA DNAポリメラーゼ | (−) | (+) | 血中のB型肝炎ウイルスの量と増殖能を反映する。 | |
C型肝炎ウイルス | HCV抗体 | (−) | (+) | C型肝炎ウイルスの抗体で、陽性の場合はC型肝炎ウイ ルスによる肝疾患である疑いが濃厚。 |
HCV‐RNA | (−) | (+) | HCV抗体陽性でHCV‐RNA陰性は過去の感染を示す。 |
肝臓の病変の程度をみたり、治療方針を決めるためにおこなわれる検査。
超音波を体内に入れて肝臓などの内臓で反射してくる音波(エコー)をとらえ、テレビ画面やフイルムの像にする。
胆石、肝腫瘍、脂肪肝、腹水、肝硬変、肝のう胞な
どの診断に役立つ。
肝臓を針で刺して、ごく微量の肝臓の組織を取り出
し、顕微鏡で観察する検査。
脂肪肝の程度、慢性肝炎の活動性の把握、肝硬変や
肝癌などの最終的な診断法となる。
みぞおちあたりに1cm大のキズをつけ、腹腔鏡 (内視鏡)を腹腔内に入れ肝臓などの表面を観察し、肝 生検をする。肝臓の色、形、大きさ、表面の性状、線 維化の程度、血管の拡張・閉塞などを観察する。
ヨウ素の放射性同位元素を静脈から体内に入れ、15分経つと肝臓に取り込まれる。肝臓が正常のな場合は全体にまんべんなく取り込まれるが、障害のある部分はこのヨウ素を取り込むことができない。放射性同位元素が出す微量の放射線で像をフイルムに写し、障害のある部分を診断する。
肝臓に360度方向からX線を照射して、臓器や組織によるX線吸収度のわずかな差をコンピュータで解析し、肝臓を輪切りにした像を得る検査。全身や他の臓器の検査にも使われる。
肝腫瘍、肝血管腫や肝のう胞の診断に有効。
足のつけ根のところを少し切って、そこから細いカーテルを動脈の中に入れ肝臓内の血管を造影剤で写し出すX線検査。
肝腫瘍や肝血管腫の診断には必須。
体に磁場をかけることにより、体内の水素原子のふえるのを利用してX線CTと同等の精密な画像を得る検査。放射線を便わない安全な検査。
症状の出ているときや検査値の悪いときは安静にし、 疲れないように心がける。また、食後はしばらく静か にしていることは良い習慣である。
医師と相談のうえ、適度な運動を心掛ける。
三食を規則正しく、バランスのとれた食事を心掛け る。塩分(10g程度)はとり過ぎないよううす味にする (腹水がある時は強く塩分を制限する)。
医師の指示に従い、自分の判断で服用を止めたり、 量を減らしたりしないようにする。
便秘をしないように心掛ける。また、医師の指示に 従い、お酒を飲み過ぎないようにする。
インターフェロン(抗ウイルス薬)、肝作用薬(強力 ネオミノファーゲンC、ウルソなど)、漢方薬(小梁胡 湯など)、その他。
ステロイド(副腎皮質ホルモン)、ウルソなど。
原因となる薬剤をやめる。
肝作用薬、利胆薬など。アルコール性肝硬変では禁酒。
利尿薬、アルブミン製剤など。
二糖類(ラクツロース、ラクチトール)、難吸収性抗生物質、アミノ酸(分岐鎖アミノ酸:BCAAを多く含む)の経口剤や輸液剤によって肝性脳症を改善する。
病状にあわせて食事の量や質を変えるとともに、分岐鎖アミノ酸(BCAA)など体に必要な栄養素を薬として取り入れ、栄養状態を改善し肝臓の働きをよくする。
・5つの栄要素(糖質、タンパク、脂質、ビタミン、ミネラル)をバランス長くとることが大切。
・肝臓病が進行するとBCAAが慢性的に不足し、体に必要なタンパクの合成が十分できなくなる。またBCAAはエネルギーの源となるとともに、肝臓にかわって筋肉でアンモニアを処理する。
・肝臓病がさらに進行して肝性脳症が発現するとタンパクを制限する必要がある。この際、必要な栄養素も不足するので肝臓病用のBCAAの多く含まれる経口栄養剤という薬を補うことが必要になる。
(主治医や栄養士の指導に従って下さい)
このページは、私たち会員に配布された肝臓手帳の1〜7章を転記したものです。内容は簡潔ですが、患者の皆様に参考になるように良くまとめられていると思い掲載しました。
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