第40回「肝寿会」肝臓教室
2021.12.4
講師:村山 愛子
食べ物を摂取すると、糖質・脂質は小腸で吸収されて肝臓で分解され、全身の筋肉・内臓に必要なエネルギーとして使われ、余ったエネルギーは中性脂肪となって貯蔵されます。糖質・脂質を摂取しすぎている場合、また運動不足でエネルギー消費が少ない場合は中性脂肪が肝臓に溜まり、肝臓の30%以上の細胞に脂肪が溜まっている状態を脂肪肝と言います。最近、食生活の欧米化などによって肥満の人やメタボリックシンドロームの方が増加してきており、脂肪肝の患者さんも増加傾向です。日本では約30%の人が脂肪肝であると言われていています。
脂肪肝の原因として、主にアルコールによるものと、そうでないものに分けられます。1日あたり純エタノールとして男性で30g(ビール大瓶1本、日本酒1合半、ワイングラス2杯、ウイスキーダブルで1杯半に相当)以上、女性では20g以上のお酒を毎日飲み続けるとアルコール性肝障害・脂肪肝を引き起こします。これよりも1日の飲酒量が少ない人にみられる脂肪肝を、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)といいます。このうち80〜90%は長い経過をみても病気はほとんど進行しませんが、残りの10〜20%の人は肝硬変に進行したり、肝臓癌を発症したりすることがあります。この脂肪肝から徐々に進行する肝臓病のことを「非アルコール性脂肪肝炎」、英語表記nonalcoholic steato-hepatitisから「NASH(ナッシュ)」といいます
NASHは年率2%の割合で肝臓癌になると言われており、また脳梗塞や心筋梗塞、肝臓以外の発癌のリスクが高くなり、全身の臓器に影響を及ぼしうる病気です。また脂肪肝やNASHであったとしても自覚症状はほとんどありません。黄疸・腹水が出現している場合はすでに肝硬変が進行した状態であり、このような症状が出る前に検診をうけて早期に診断し対処することが重要となります。
以上脂肪肝についてお話ししました。脂肪肝は自覚症状がなく、気づいた時には肝硬変になっている方も少なくありません。当院では、問診・血液検査を行い、腹部エコー検査で脂肪肝の程度・肝臓の硬さなどを確認し、必要時は肝臓の組織を取る検査(肝生検)も行っています。検診などで肝障害・脂肪肝を指摘された際には一度肝臓内科を受診してみてください。
目次ページ 1 増えてます 脂肪肝 ページ 2 脂肪肝とは? ページ 3 近年脂肪肝は増加傾向 ページ 4 脂肪肝の原因 ページ 5 非アルコール性脂肪肝炎 ページ 6 わが国の肝臓癌の原因 ページ 7 症状は? ページ 8 必要な検査 ページ 9 治療について ページ 10 体重を減らす(7%以上の体重減量を目標) ページ 11 食事療法 ページ 12 運動療法 ページ 13 運動療法 ページ 14 最後に必須 |