第39回「肝寿会」肝臓教室
2020.12.5
講師:田尻 和人
肝がんは予後不良な病気ですが、ではここ数年で薬物療法が格段に進歩してきています。 2009年に初めて肝がんにおいて生存延長のエビデンスを示したソラフェニブが登場して以降、約10年にわたり新規薬剤はでてきませんでしたが、ここ2,3年でレゴラフェニブ、レンバチニブ、ラムシルマブ、カボザンチニブと計5剤の分子標的薬が使用可能となりました。また、近年他臓器のがんで有効性が報告されている免疫チェックポイント阻害剤も、肝がんにおいて分子標的薬の併用での極めて有効な成績が報告され、2020年10月に使用可能となりました。免疫チェックポイント阻害剤は、われわれが本来もつ免疫の力を最大限に発揮させ、効率的に抗がん作用を示すものです。今後肝がん領域では、こうした免疫チェックポイント阻害剤と分子標的薬の併用療法が登場してきて、治療の柱となっていくと思われます。副作用管理など含め、治療の工夫が必要な分野であり、今後ますますの検討が必要となります。
最後にいつも同じことをいいますが、慢性肝疾患の治療においては肝予備能、全身状態の保持が重要であり、慢性肝疾患の原因の治療のみならず、栄養、筋肉を含めた全身の管理が今後ますます大切となってきます。肝がん治療においては副作用なく治療を行い、抗がん効果を最大限に得るためにも、背景肝疾患の治療や全身状態の保持が極めて重要です。主治医の先生、肝臓専門医ともよく相談しながら肝予備能、全身状態の保持に努めましょう。
目次ページ 1 肝がんの最近の話題 ページ 2 肝細胞がんは予後不良の疾患 ページ 3 がん治療の4つの柱 ページ 4 肝細胞がん治療の柱(これまで) ページ 5 進行肝細胞がんに対して⇒全身化学療法 ページ 6 進行肝細胞がんに対する治療開発 ページ 7 進行肝細胞がん治療の進歩1 ページ 8 進行肝細胞がん治療の進歩2 ページ 9 進行肝細胞がん治療の進歩3 ページ 10 肝細胞がんにおける分子標的薬治療 ページ 11 進行肝細胞がん治療の進歩 ページ 12 分子標的薬と免疫チェックポイント阻害剤の併用による生存延長効果 ページ 13 免疫チェックポイント阻害剤 ページ 14 腫瘍免疫が効果的に作用するには、腫瘍抗原提示、細胞障害性T細胞の誘導が必須 ページ 15 進行肝細胞がんに対する治療の新たな展開 ページ 16 腫瘍由来のサイトカインや微小環境などによりTAM, MDSC, Tregが誘導され、腫瘍免疫阻害的に働いている ページ 17 免疫チェックポイント阻害剤登場による期待 ページ 18 肝細胞がん治療の柱(これから) ページ 19 肝細胞がんの予後は改善しつづけている |