第38回「肝寿会」肝臓教室

講演:肝臓病の最近の話題

2020.12.7

講師:田尻 和人

要旨

"慢性肝炎などの慢性肝疾患は肝硬変、肝がんにいたる病気ですが、最近は治療・診断法の進歩により病気のとらえ方が変わりつつあります。

まず、本邦の慢性肝疾患の最大の原因であるC型肝炎ウイルス(HCV)感染症に対して、直接作用型抗ウイルス薬(DAA: direct-acting antivirals)が使用可能となり、HCVは副作用もほとんどなく、極めて高率に排除できるようになりました。B型肝炎ウイルス(HBV)に対しても抗ウイルス薬も登場し、これまでコントロールが困難であったHCV,HBVの制御が可能となりました。

慢性肝疾患の原因の排除は肝障害の管理を容易にするだけでなく、続いておこる肝硬変、肝がんの発症を抑え、肝関連合併症も抑制することなります。また原因そのものの治療は固くなった肝臓の線維化を改善することも期待され、慢性肝疾患の診療において大きなインパクトとなりました。

今後はHBVの根本的な排除や、脂肪肝などへの対処、線維化改善などが課題となり、現在研究がすすめられています。

一方、肝がんではここ数年で薬物療法が進歩してきています。2009年に初めて肝がんにおいて生存延長のエビデンスを示したソラフェニブが登場して以降、約10年にわたり新規薬剤はでてきませんでしたが、ここ2,3年でレゴラフェニブ、レンバチニブ、ラムシルマブと計4剤の分子標的薬が使用可能となりました。また、近年他臓器のがんで有効性が報告されている免疫チェックポイント阻害剤も、肝がんにおいて分子標的薬の併用での極めて有効な成績が報告され、今後使用可能となってくると思われます。

いずれにしても慢性肝疾患の治療においては肝予備能、全身状態の保持が重要であり、慢性肝疾患の原因の治療のみならず、栄養、筋肉を含めた全身の管理が今後ますます大切となってきます。

主治医の先生、肝臓専門医ともよく相談しながら肝予備能、全身状態の保持に努めましょう。

スライド

目次

ページ 1 肝臓病の最近の話題

ページ 2 本日の内容

ページ 3 肝硬変症の最近の動向

ページ 4 肝疾患の大きなパラダイムシフト

ページ 5 HCV排除のインパクト (IFNによる)

ページ 6 HCV排除のインパクト (DAAによる)

ページ 7 本邦の肝硬変の最大の原因であるHCV感染症は治療可能となった。

ページ 8 肝硬変症の診断

ページ 9 肝線維化予測スコアとその肝硬変診断能

ページ 10 画像検査を用いた弾性イメージング

ページ 11 Strain imaging (RTE, Hitachi)・Shear wave imaging

ページ 12 超音波エラストグラフィー(GE Elastography)を用いた肝硬度測定

ページ 13 超音波エラストグラフィーを用いた肝硬度と予後との関連

ページ 14 HBV肝硬変におけるウイルス制御のインパクト

ページ 15 非代償性C型肝硬変に対するDAA治療

ページ 16 抗線維化効果が認められた肝疾患治療

ページ 17 肝硬変に関してもまず原因疾患の治療を

ページ 18 肝線維化に対する治療開発

ページ 19 肝硬変に対する肝再生療法

ページ 20 肝硬変症における最近の新規治療薬

ページ 21 肝硬変とサルコペニア

ページ 22 肝硬変における全身管理の重要性

ページ 23 肝細胞がんの予後は改善しつづけている )

ページ 24 進行肝細胞がんに対して⇒全身化学療法

ページ 25 進行肝細胞がん治療の進歩(1)

ページ 26 進行肝細胞がん治療の進歩(2)

ページ 27 進行肝細胞がん治療の進歩(3)

ページ 28 免疫チェックポイント阻害剤

ページ 29 免疫チェックポイント阻害剤の肝細胞がんに対する効果

ページ 30 免疫チェックポイント阻害剤と分子標的薬の併用効果

ページ 31 

ページ 32 肝細胞がん診療も新時代に突入へ

要旨(PDF)

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