第36回「肝寿会」肝臓教室
2018.12.1
講師:田尻 和人
肝細胞癌を取り巻く環境は大きく変わってきています。まずはわが国の肝細胞癌の最大の原因であったC型肝炎ウイルスが治癒できるようになったことで、そのためもあり肝細胞癌の患者数は減少傾向にあります。
その反面、肥満や糖尿病を背景とする肝細胞癌は増加傾向であり、ウイルス肝炎に比べスクリーニング体制が確立されていないこともあり、その拾い上げは重要な課題です。
エコーやMRIなど診断技術の進歩に加え、わが国の肝細胞癌スクリーニング体制は世界の他の国々に比べ優れており、肝細胞癌がより早期に発見できるようになっています。
また。治療法の進歩がここ数年飛躍的にみられています。これまでは肝細胞癌に対し有効な抗がん剤はほとんどありませんでしたが、近年分子標的薬が次々と登場し、また更に抗体薬や免疫チェックポイント阻害剤など有望な薬剤が登場予定です。
肝細胞癌の治療成績、予後は年々改善しています。
様々な治療の恩恵に預かるためにも、肝予備能の保持、体力の維持がとても大切であり、原因疾患の治療、生活習慣の維持・改善を行っていきましょう。
目次ページ 1 肝細胞がんの最近の治療 ページ 2 我が国の肝細胞がんの原因の割合 ページ 3 HCV治療の劇的な進歩 ページ 4 糖尿病があるとがんの発症の危険増加 ページ 5 肥満だけでもがんの発症の危険増加 ページ 6 肝細胞がんをとりまく環境 ページ 7 肝細胞癌サーベランスアルゴリズム・診断アルゴリズム ページ 8 腹部CT検査 (ダイナミック造影CT ページ 9 腹部MRI検査 ページ 10 腹部超音波検査 ページ 11 わが国の優れたスクリーニングシステムの結果 ページ 12 肝がんの治療ガイドライン ページ 13 BCLCステージングに基づく肝がん治療アルゴリズム ページ 14 小さな肝がん(BCLC-0/A)に対して⇒ラジオ波焼灼療法(RFA) ページ 15 多発肝がん(BCLC-B)に対して⇒肝動脈化学塞栓療法(TACE) ページ 16 進行肝がん(血管浸潤、遠隔転移あり:BCLC-C)に対して ページ 17 進行肝細胞がん治療の進歩(1) ページ 18 進行肝細胞がん治療の進歩(2) ページ 19 免疫チェックポイント阻害剤 ページ 20 進行肝細胞がん治療の進歩(3) ページ 21 HCV関連HCCに対するIFNの発癌抑制作用 ページ 22 サルコペニアと肝がんの関係 ページ 23 肝細胞がんの予後は改善しつづけている ページ 24 肝がんに負けないために |