第33回「肝寿会」肝臓教室

講演:肝臓病の検査と最近の知見

2017.4.22

講師:河合 健吾

要旨

 今回は上記のテーマに基づき、@肝臓病の臨床検査技術の進歩と題して、CT検査・腹部超音波検査・採血検査・PET検査などにおける新たな技術を皆さんにご紹介を、また、A治療学の進歩と題して、肝がんの遺伝子異常とこれからの治療の展望などについて、若干の私見も交えてご紹介させていただきました。

 これらのお話の中で聞きなれない話題や単語が多数でてきたと思います。そして内容的にも少し複雑で難しかったかもしれません。しかし、今回のお話を通じて自分が皆さんにお伝えしたかったことは非常にシンプルです。“検査や治療法が近年これだけ目覚ましい進歩を遂げているのですから、ご自身のお病気の状態がどのような状況であっても落ち着いて前を向いて、そして希望をもって検査や治療に専念していただきたい”ということです。過去20年、いや10年間を振り返ってみても、以前は発見できなかった病変が認識できるようになってきた、これまで治せなかった病態・病変が治療できるようになってきたなど、患者さんやご家族にとって、そして我々医師にとっても大いなる前進が続いているのが今の時代なのです。

 私が本大学附属病院で主に入院患者さんの担当をさせていただいております立場にある故、入院なさる方々の様々なお心の葛藤を窺い知る機会が多々あります。(病状を重く深く受け止められる方から、ここまで楽天的にお考えになることができるのかと思う方まで本当に様々です)。一般に入院精査・加療を要する病状というのは少し複雑で込み入ったものである場合が多いのですが、逆に考えると腰を据えてじっくりと検査や治療に取り組んで、しっかり治すチャンスであると言うこともできます。実際に自分は、入院される皆さんやそのご家族がそれらの心の葛藤を乗り越え、決意をもって検査や治療に望まれるお姿を何度も何度も目の当たりにし、そして病気に打ち克っていかれる過程を数多く経験してきました。そんな自分だからこそ上記のことを心の底から感じ、皆さんに強くお伝えしたいと考えるに至った次第です。

 患者さんやご家族の方々が、“頑張って病気を治そう!”という意志を持って我々に向き合ってくださる限り、我々は何らかの形でお力になれると信じていますし、自分にはその努力を続けていく覚悟があります。そして今回この肝臓病教室に熱心に足を運んでくださった皆さんなら、それができると確信しています。さあ、これからも(時には深く、そして時には楽天的に考えながら)一緒に頑張っていきましょう。皆さんの身体的にも精神的にもお健やかな生活が、これからもずっと続きますことを心よりお祈り申し上げます。

スライド

目次

ページ 1 肝疾患の検査・治療の進歩とその未来

ページ 2 性・部位別がん死亡数の年次推移

ページ 3 本日の内容

ページ 4 従来の検査・治療について

ページ 5 各種検査を行うにあたって

ページ 6 1.最近のCT検査

ページ 7 CT画質の向上@

ページ 8 CT画像の向上A

ページ 9 CT画質の向上B

ページ 10 CT画質の向上C

ページ 11 CT画像を用いた仮想超音波検査

ページ 12 CT検査による弊害

ページ 13 2.最近の腹部超音波(エコー)画像

ページ 14 超音波(エコー)検査とは?

ページ 15 超音波(エコー)検査の短所

ページ 16 超音波(エコー)検査の応用

ページ 17 @ 微小気泡造影剤を用いた超音波検査

ページ 18 

ページ 19 A エラストグラフィ(硬さを画像化)の利用

ページ 20 A エラストグラフィ(硬さを画像化)の利用

ページ 21 肝線維化と肝硬度との関係

ページ 22 3.その他の検査

ページ 23 採血検査の進歩

ページ 24 MRI検査の進歩

ページ 25 4.各肝疾患に対する治療の進歩

ページ 26 C型肝炎の抗ウィルス療法は日々進歩してます

ページ 27 C型肝炎ウイルスを遺伝子レベルまで研究し、その弱点を見つけ出して治療法を確立しました。

ページ 28 B型肝炎治療法の変遷

ページ 29 B型肝炎ウイルスは、ヒトのDNAの中にこっそり忍び込むため、見つけづらく排除も難しくなります

ページ 30 原発性胆汁性胆管炎の治療

ページ 31 小括

ページ 32 A これからの検査・治療について

ページ 33 従来のがんの治療法と新しいがんの治療法

ページ 34 遺伝子異常と癌化

ページ 35 遺伝子とは、いわゆる生き物の設計図です

ページ 36 本研究から、肝がんの中の統計学的に有意な30個の異常遺伝子が同定されました。これらの異常の改善・修復を目指した創薬が研究されています

ページ 37 新しいがん治療薬として登場した分子標的抗がん剤

ページ 38 進行肝細胞がん患者さんを対象に、レゴラフェニブ(分子標的治療薬)の有効性と安全性が確認されました

ページ 39 その他の最近の論文・研究内容

ページ 40 自分の考えるイメージ

ページ 41 性・部位別がん死亡数の年次推移

ページ 42 

要旨(PDF)

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