第29回「肝寿会」肝臓教室

講演1:インターフェロンフリーのC型肝炎治療

2015.4.25

講師:安村 敏

要旨

1.日本でのC型肝炎の現状
日本でのHCV感染者は150万から200万人存在すると推定されています。その中でも65歳以上のHCV抗体陽性者の割合は54.2%(2005年時点)で、ジェノタイプでは1b, 2a, 2bの3種類が多く、それぞれ70%、20%、10%を占めます。肝癌は約68%がC型肝炎が原因で、日本の癌死の第4位となっています。

2.C型肝炎の治療
C型肝炎の治療は抗ウイルス治療が主流となりました。
抗ウイルス治療をお勧めする 理由は
@ウイルス治療は肝臓の破壊を抑え、肝臓を回復させること
A肝癌の発生を予防すること
B糖尿病を合併している方の腎障害・心筋梗塞・脳梗塞を低下させること
C延命効果が期待されること
D治療効果はとても向上したこと
の5点です。
 インターフェロンを用いた最近の治療であるペグインターフェロン・リバビリン・ テラプレビルの3剤併用治療では、インターフェロンが効きやすい体質かどうかを調べる インターフェロン・ラムダ(IL28B)遺伝子の変異や、治療抵抗性のウイルスかどうかをみるウイルス変異(Core70)の有無によって治療効果が予測されてきましたが、インターフェロンを用いない直接作用型抗ウイルス薬治療が開発されました。
1型のインターフェロンフリー療法として、日本で最初に使えるようになった薬はダクラタスビルとアスナプレビルの併用療法(24週)です。ダクラタスビルは、HCV NS5Aを選択的に阻害し、ウイルスの複製及び/又は増殖を阻止し、アスナプレビルは、HCVの複製過程において重要な初期段階を停止させます。この治療の利点は、HCVを急激に減少させ治癒率も高く、IL28B (体質)の違いによる効果に差がないことです。しかしながら、薬剤が効きにくいウイルスがいる場合は40%しか効かず、さらに治療抵抗性のウイルスがでる危険性があるため、投与開始前にウイルスのNS5A領域(Y93, L31)に薬剤に耐性のある変異があるかどうか調べる必要があります。また副作用として肝障害に注意しなければなりません。大学病院においてDAA(2剤)併用療法を検討された患者様は28名おられますが、ほとんどの患者様に効果が得られています。
さらに新しい1型の抗ウイルス薬にレディパスビル・ソフォスビルの合剤(ハーボニ)治療(12週)があります。日本での治療結果が4月に発表されました。1日1錠の投与で治療患者171名(初回治療 83名 再治療 88名)に対して全例ウイルス消失(100%)得られ、大きな副作用は報告されませんでした。この薬は、これまでの薬が効きにくい変異があっても効くことが示されています。さらに8週の治療でも高い抗ウイルス効果が期待されます。
2型へはソフォスビル(ソバルディ)・リバビリン(コぺガス)の治療が有効です。これも80%以上の治療効果が得られます。ただし、リバビリンの副作用である貧血に注意が必要です。

3.ウイルスが消えた患者様へのお願い
C型肝炎ウイルスが消えても、肝臓がんの定期検査は必要です。4年間で高ウイルス治療 を行わなかった患者の発癌率は年率2.5%ですが、ウイルスが排除できた方の発癌率は0.5%に低下します。それでも4年間で200人に1人は肝がんができることになります。
発がんしやすい方は、65歳以上、治療後もAFPが高い人、肝硬変の患者様です。ウイルスが駆除できても完全に治ったのではありません。必ず医師の指示に従ってください。

4.終りに
新薬が登場するたびにC型肝炎の治療効果は向上し副作用も軽減されています。C型肝炎ウイルスから「さよなら」ができた方には、新しい人生が待っているかもしれません。 今それが無理でも、開発されつつある新しい治療の恩恵が受けられるのも遠い先のことではありません。希望をもって頑張りましょう

要旨(PDF)

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