第27回「肝寿会」肝臓教室

講演1:新しいC型肝炎の治療

2014.4.12

講師:高原照美

要旨

C型肝炎の治療はこの数年で目覚ましい進歩があります。本日は最近始まったばかりの最新の治療を紹介し、さらに今後飛躍する新規治療法を紹介します。

まず最初にC型肝炎の基礎的な話から始めます。現在C型肝炎の患者様は日本に約150万〜200万人おられますが自覚症状はほとんどなく、たまたま発見された方が多くおられます。輸血や手術後に感染した人ばかりではなく、予防接種などで感染したりどこで感染したかわからない人も半数を占めます。C型肝炎に感染すると慢性肝炎から20年から30年を経て肝硬変、肝癌になることが知られています。そうなる前に、自覚症状はなくてもC型肝炎の治療をしてウイルスを排除することが非常に大切です。

現在、C型肝炎の治療は遺伝子型(1型・2型)とウイルス量(高ウイルス、低ウイルス)によって治療法や有効性が異なっています。現在は治療の基本はペグインターフェロンという注射薬を使いますが、2型ウイルスの方や1型低ウイルス量の方は90%近くの方がウイルス排除が可能です。しかし、日本で多数をしめる1型高ウイルスの方は従来60%くらいしかウイルス排除ができず難治とされてきました。

2011年、1型高ウイルス量の患者さんにC型肝炎に直接作用する内服薬(DAA)「テラプレビル」が使えるようになり、ペグインターフェロン+リバビリン+テラプレビルで70%以上の方がウイルス排除できるようになりました。効果が高くなったのですが、残念ながら皮疹や腎障害といった副作用がみられること、また以前インターフェロンが有効でなかった患者様にはやはり3−4割の方しか有効性は示されませんでした。昨年12月からテラプレビルに代わり、シメプレビルというDAA内服薬が使えるようになりました。

本日はその成績をお話します。

ペグインターフェロン+リバビリン+シメプレビルの3剤併用療法は治療期間は24週間です。ペグインターフェロン(週1回注射)+リバビリン(朝夕内服)は24週間治療しますが、最初の12週間のみシメプレビル(商品名:ソブリアード)を1日1回内服します。それにより現在約90%の方がウイルス消失することが報告されています。さらに詳しく調べると、男女差、年齢、線維化の程度に関係せず、治療が初めての方や、インターフェロンで一度ウイルスが消えて再度出てきた再燃例も90%以上で有効であることが示されました。

副作用もあらたに報告されたものはなく、比較的忍容性が高いと考えられています。しかし欠点もあり、今までどんな治療をしてもウイルスが全く消えたことがない無効例の方は、やはり50%程度しか有効性はしめされていません。現在インターフェロンが使える方の第一選択の治療法はこの3剤併用療法になっています。

次に、本年秋から新たに登場するインターフェロンフリーDAA2剤併用の治療法について紹介します。これはインターフェロンは使用しない新しい治療法です。アスナプレビル、ダクラタスビルという内服薬を2種類24週間服用するだけの治療法です。

夢のような治療法ですが、現在のところ制限があり、インターフェロンがいろんな理由で使用できない人、過去にインタ−フェロンを使ったが副作用がひどくて止めた人、また過去の治療ではウイルス量が全く減らなかった人、のみが対象になります。どれくらい有効か、というと、約85%程度の方がウイルスが消失します。飲み薬のみで85%の方が治癒するのですから、ものすごい医学の進歩です。副作用は、頭痛、悪心、発熱、肝機能障害がありますが、10%程度と言われています。

この2−3年以内にさらに飲み薬が新しく出てくる予想です。将来的にはインターフェロンは使わずに内服薬を12週〜24週間飲めばほほ100%完治できる時代が来ます。医学の進歩はめざましく、本当に驚かされます。希望をもって治療に取り組んでいただきたいと思っています。

有効率グラフ

要旨(PDF)

スライド

目次

ページ 1 新しいC型肝炎の治療

ページ 2 C型慢性肝炎に対する抗ウイルス治療の変遷

ページ 3 IFN治療の進歩と有効率(SVR率)の向上

ページ 4 1.C型肝炎の基礎知識

ページ 5 C型肝炎の自然経過

ページ 6 慢性肝炎が進行すると肝硬変になります

ページ 7 抗ウイルス治療は肝炎の進行を抑え、 肝臓を回復させます

ページ 8 抗ウイルス治療は肝臓癌の発生を予防します

ページ 9 抗ウイルス治療は寿命を延ばします

ページ 10 C型肝炎の治療

ページ 11 C型肝炎ウイルスの種類と量

ページ 12 C型肝炎治療関連因子

ページ 13 2.新規のC型肝炎の治療

ページ 14 C型慢性肝炎に対する抗ウイルス治療の変遷

ページ 15 HCVの遺伝子構造と直接作用型抗ウイルス薬

ページ 16 プロテアーゼ阻害剤の構造式による分類

ページ 17 シメプレビルの特徴

ページ 18 シメプレビルの作用機序

ページ 19 投与方法

ページ 20 血漿中HCV RNA量の推移

ページ 21 投与中のウイルス陰性化率

ページ 22 シメプレビルを用いた3剤併用療法のウイルス著効率

ページ 23 年齢別におけるウイルス著効率

ページ 24 シメプレビルとテラプレビルの有効性

ページ 25 主な副作用 (全投与期間)

ページ 26 シメプレビルとテラプレビルの安全性

ページ 27 IFN治療の進歩と有効率(SVR率)の向上

ページ 28 治療失敗例における NS3プロテアーゼ領域の変異

ページ 29 C型慢性肝炎に対する初回治療ガイドライン

ページ 30 3.今後の治療の方向性

ページ 31 HCVの遺伝子構造と直接作用型抗ウイルス薬

ページ 32 世界の直接作用型抗ウイルス薬の開発状況

ページ 33 日本で開発中のDAAs,遺伝子1型

ページ 34 第一世代IFNフリー薬の臨床試験

ページ 35 適応される患者の定義

ページ 36 ウイルス著効率

ページ 37 ベースライン因子の違いによる著効率

ページ 38 第一世代IFNフリー薬の抗ウイルス効果のまとめ

ページ 39 NS5A Y93耐性関連変異株からみた著効率

ページ 40 DCV/ASV国内第2相試験

ページ 41 ASV/DCVで耐性出来てしまったら

ページ 42 さいごに

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