2013/2/12(火)
【バレンタインストーリー】
池山が最近やたらとバレンタインのことを気にかけているようですが、まぁ僕らはただの木曜日で終わってしまうことでしょうよ。ちょっとチョコが買いにくい一日ってだけだ。だから既にチョコを買いだめしておいてやったわ!フハハハハ!!
………ハハ。
しかしね、もうこんなんなってくると、妄想ですらチョコが貰いにくい。
どういうことかというとですよ、学生の頃なんかは机の引き出しにチョコと手紙が入ってたりして!とか、下校しようとしたら後輩の女の子が待ち伏せていて、「あの…!これ!!」なんて言って手作りのチョコを渡してきたりだとか、そういう妄想できるじゃないですか。
社会人は社会人で、同僚の女性が職場に義理チョコケーキなんかもってきたりして、みんなに配るんですけど、僕のところにきたときにはちょうどケーキが無くなっちゃってて、「あ〜あ、俺、義理チョコももらえねぇのかよ〜」なんて思ってたら、その女性が「藤月さんにはこっちです」ってチョコレート色のマフラーなんか巻いてくれたりしてね、その拍子にチュッとキスなんかされちゃって、「甘いもの、これじゃ駄目ですか…?」なんて言われちゃって、イーヒッヒッ!!すいません、興奮してきて高田純次が出てきてしまいました。
そんな感じで、妄想するだけでも楽しくやってきたわけなんですけど、こうもパート生活が板に付いたオッサンになってしまうと、どんなシチュエーションならチョコがもらえるスイーツ体験ができるんだよと頭を抱えてしまう。ポストに見知らぬ女性からのチョコが入っていたら、嬉しいどころか心当たりが無さ過ぎて怖いもの。前の住人に恨みを抱いていた女性からだったらどうしよう、毒入ってんじゃないかしら、とか、もう心がやさぐれている。
かといって、職場の弁当屋にはおばちゃんしかいないし、お客さんもおっちゃんしかいない。「あなたが朝イチでご飯を仕込んでいるところにキュンときたんです!」という若く美しい女性がいたらどうだろう?と妄想してみましたが、そんな午前5時とかから物陰から見られてたのかと思うとゾッとするわ。狂気の沙汰ですよ。
じゃあ、街をブラブラしてたら突然美少女からチョコを渡されるのはどうだろう?なんかそれも、ほくほくして受け取って仲良くなって彼女の実家に行ってみたら宗教をオススメされるなんてことになるんじゃなかろうかと昔のトラウマという名の扉がクパァ…と開いてしまいます。八方ふさがりだよ!
いや、待て。一つまだできる妄想があるぞ!
夕方、暮れゆく町並みを眺めながら歩く僕。
そこに後ろから声をかける美少女。
少女:「あの、これ、もらってください!」
突然差し出されるチョコレートに僕はとまどう。
しかし、恥ずかしさで顔を真っ赤にしながらも、勇気を出して僕をまっすぐ見てくるその少女はあまりに可愛らしく、恋に落ちるのに時間はかからなかった。
僕:「あ、ありがとう。でも、ごめんね、僕、キミとどこかで会ったっけ…?」
会っていれば忘れるはずがない。それほど魅力的な女の子。僕はのぼせ上がってぽーっとした頭で必死に記憶を探るが、どうしても出てこない。
少女:「すいません、私が一方的に見てただけなんです」
少女:「neutralを。」
僕は走って逃げた。
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