2003/05/10 (土)
【あの同好会は今】
ちと用事があって、自分の卒業した高校に行ってきました。
んでですね、まぁついでだし色々久しぶりに中をブラブラ見ていたら、私が在学当初一番ツボだった部がまだ存在してまして。部っていうより同好会なんですけれど、別にそこに籍を置いていたわけでもないのに、そのあまりの興味深さからちょくちょく参加してたりしました。
当時その同好会は4人。部活に昇格させるには少しばかり規模が小さかったために、同好会止まりの現実に部員はいつも舌打ちしてました。「チィッ!」って。
でもですね、俺は知ってます。
彼らの熱い鼓動を。
彼らの熱い魂を。
彼らの活動に対する熱意を。
して、その同好会の名前ですけれど、
その名も
「空想研究同好会」
コレどう!?
『何事も進歩の第一過程は空想からスタートする』という大義名分を掲げ、彼らは明日のテクノロジーを開発すべく日々研究するわけですよ。
まぁ確かに今私たちは、昔手塚治虫が描いた未来の初めに立ったといえるのかもしれません。本田技研のASIMO然り、SONYのAIBOだってそう。誰もが初めは机上の空論だと罵り、実現はしないとしてきたものが今、そう今、目の前に現実としてあるわけなのですよ。『すべては空想から』という彼らの言い分は決して的を外してはいません。
というわけでですね、高校生だった私はその興味深さにつられ、フラフラと活動している部屋へ向かったわけであります。
教室の扉を開くと既に部員3人が集っており、私がちょっと見ていきたいと言うと、快く応じてくれたのでした。
彼らは見るからに知的な風貌で、なんだかオーラが見えるようでした。なるほど、おそらく未来の技術はこういう人たちが切り開いていくものなのかもしれないな。
その後5分ほどして、部員最後の一人であるリーダーっぽい人がやってきて活動はスタートします。
「さて、今日の議題であるが・・・」
部員みんなに緊張の色が見えます。同好会といえども、みんな真剣。
ゴクリ。
「え〜、かめはめ波は打てるかどうかについて」
こういう同好会です。
部員は口々に
「かめはめ波かぁ、難しいもんだいだなぁ〜」
とか呟くわけですよ。
「こう手首を合わせるだろう?そしてこう・・・、気をためて・・・ハァッ!だよな」
「そうそう、コレが結構難しい!」
「俺、毎日腕立てとかしてるけど全然でねぇよ・・・」
え〜とですね、読んでる方は「ただのギャグだろう?」と思われるかもしれませんけれど、彼らいたって真面目です。本気の討論ですよ。17,8歳の高校生が、かめはめ波の撃ち方についての討論会。
もうね、アホかっていうより、
イタイ。
でも見てるとホント面白いんですよ。
A君がかめはめ波を撃とうと気をためてるんですね。もう頭に欠陥血管とか浮かばせながら。「んおおおおぅ〜〜〜!!!」とか言って。
そしたらB君。
「ぅお!すごい!なんかボウって光ったよ一瞬!気が見えたよ!」
A君。
「え?ウソ?見えた?」
B君。
「見えた!あ、でもすぐ消えちゃったけど・・・」
A君。
「フフ、そうか、アレが見えたってことは、お前も結構戦闘力があるってことだ」
B君。
「マジ!?じゃあ俺も撃てるかもしれない!練習しよう!」
もう一度言っておくと、彼らも一応高校生で17,18歳。そろそろ分別のつく年頃だと言われてもいいくらいの時期ですよ。
でも彼らはかめはめ波に夢中。
同年代には学業と恋愛を上手に両立させ、未来に明るい光を灯そうとする立派な若者もいます。
でも彼らは気の光が見えたとか言って騒いでます。
「空想研究同好会」って確か、『何事も進歩の第一過程は空想からスタートする』が信条では無かったでしたっけ。
確かに空想だよこれは。
でも、でもね。
これは空想よりどっちかっていうと妄想に近いんじゃなかろうかと思ってみたり。
なんてことを部員に言ってみました。
そしたらそいつ、
「なんてこと言うんだ!かめはめ波だってお前はバカにするけど、未来ではみんな日常茶飯事で撃ってるかもしれないんだぞ!未来は誰にも予想できないんだよ!」
って。
もし万が一かめはめ波を撃てることが実証される日が来るとしても、そんなのを日常茶飯事で撃たれるような未来ならいりません。俺は普通が良いです。
なんてことも言ってみると、
「お前はなんにもワカっちゃいない・・・」
とため息混じりに言われましたとさ。
なんかスゲェむかつくんですけど。
結局ですね、結論としては『かめはめ波は人間が生来もっている気から精製されるものだから出すことは可能なはず。だが将来的に、かめはめ波は天下一武闘会などの戦いの場以外で出すと懲役をくらうことになる』というところで落ち着いたのでした。
落ち着いてんじゃねーよバカ!
そもそも議題からしておかしいことに気付けよ。お前も真剣にまだ気をためてたりするな。口で「ブウゥン・・・」とか「ピシュン!」とか効果音つけたりもすんな。イタイから。
でもそんなバカの巣窟の同好会にちょくちょく出席する俺。
何を発言するわけでもなし。
ただ、見ているとこの上なく面白い。もうね、真剣なのが何よりも笑える。17,8歳の青年が、
「ドラゴンボールってホントは大昔にホントにあった話なんじゃないか?」
とか言ってるんですよ。
「そういや昔、旅行先でスーシンチュウ見た!」
とか言ってるんですよ。
「ドラゴンレーダー、おじいちゃんが持ってた」
とか言ってるんですよ。
「スゲェ!マジ!?」
とか言ってるんですよ。
そんなの俺が問いたいです。お前らの頭に対して。
そんな同好会にちょくちょく出席する俺。
ただおちょくりに行ってただけとはいえ、ホントに結構面白かった。
そんな淡い思い出がフラッシュバックした週末の午後。
思い出のアルバムに閉じて、
速攻で閉めました。
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