スウェーデンは生活安心の政治
先週の「手紙」で、市長が「北欧でも国民の税・社会保障負担は収入の70%、日本の二倍になっている」と言ったのにたいして「機会をみて厳密な反論をする予定」と書きました。厳密な反論というのではありませんが、分かりやすい本がありましたので、この本の文章を借りて反論したいと思います。
本は「スウェーデンはどう老後の安心を生み出したのか」(竹崎孜著 あけび書房)。著者は現在、常磐大学大学院教授、スウェーデンに関する著書ばかりたくさんあります。二十数年にわたって続けられている著作活動ですが、この著書は今年七月十日に出されたばかりの新刊です。以下、何ヶ所か抜書きをしてみます。
「高い税金」の実際
…1992年からは国の補助金が取りやめられたことと、所得税が国から自治体へ移譲されたことで、地方分権がいよいよ本格化することになった。公共の財政構造の組み替えがあったあとは、国民からの税金が、国に対する雇用主税32%と消費税25%、そして自治体に対する所得税(平均)30%となっている。
…ここで税金が雇用主と消費者と勤労者の三者による分担となっていることから推察できるように、単純に消費税率と所得税率を55%と合算してしまい、だから普通のサラリーマンでさえ給与の半分以上も税金に取られると決めつけるのはナンセンスでしかない。そもそも「税金を取られる」、または「税金ドロボー」などの感覚をスウェーデン国民は持合わせておらず、税金の種類や課税率はあくまでも自分たちが自主的に決めた政治の結果と割り切っているからである。
信頼の上に「至れり尽くせり」
…ここで税制度をより分かりやすくするために個人納税者の立場で考えてみよう。賃金からはまず所得税が約30%差し引かれ、手元に残る所得は70%だが、ただし、多くが夫婦共働きなので家庭所得は2人分と計算できる。一方では、家計から定期的に支払われるはずの教育費、医療費、民間保険料などはゼロ、しかも、よほどの特殊な事情でもなければ貯蓄はせず、毎月の固定費が最小限度に抑えられているだけに、所得税を差し引いたあとの手取りはそのまま全額が消費へ、すなわち使い果たせるのである。
…消費税の率は25%だが、例外もあり、食品には12・5%、文化関係などには6%の率とされている。
…ところで、消費税については25%もの重税によく耐えられるものと国外からは同情されるが、ストックホルム大学の学生たちと意見を交わしてみたところ、消費税はみんなが払えるから何が争点なのか分からないと、見事に肩透かしをくった。むしろ、日本での消費税とわずかな5%へ風当たりが強いのは不可解で、貧しいひとがそんなに多いのだろうかと、いぶかしがる…。
消費税にたいする見方もまったく違いますね。生活レベルが高く格差が少ないため、消費税は公平な税制という見方です。政治の信頼度も決定的に違います。