過日、友人たちと盛里で青紫の美しい花を咲かせた野草を見つけました。その美しさに見とれたあとで「身近にこんなきれいな野草があるんだ」と話し合いました。
家に帰って図鑑で調べました。花びらが五枚と思ったのはまちがいで筒状の花が途中から五つに分かれていることが分かりました。その基部に特徴があり、白く浮き上がっているのです。ワスレナグサなどとともにムラサキ科とありました。
その名はホタルカズラ
ホタルカズラという花の名前は「花の色をホタルの光にたとえたもの」とありました。私たちが見たところでは五メートルくらいの範囲に自生し、ほかには見当たりませんでした。
草花の生育地域のことではいつも不思議に思います。タンポポのように種子が遠くまで飛んでいくものはどこに生えていても驚きません。しかし、そうでないものもあります。「なんでここだけに生えているのか」、孤立して自生しているものを見ると首をひねってしまいます。
ところが、その数日後、久しぶりに集まった子どもたちとお城山に登り、頂上付近でまたもこのホタルカズラに出会ったのです。子どもたちに教えながらちょっといい気持ちになりました。草花に詳しい知人に話すと「それは感動するよ」といわれました。この気持ちは山に登るようになり、草花に関心を持つようになってからのものです。
同じような例は野鳥でも経験しました。アオジという小鳥との出会いです。
やぶに逃げ込むアオジ
川茂からリニア見学センターに抜ける裏道を通ったときに木の枝にとまる鳥を見ました。これはアオジだと直感し図鑑で確認しました。スズメ大のホオジロの仲間です。
目からくちばしにかけて黒ずんでいて腹の黄色っぽいのが特徴です。全体に緑色がかっているように感じました。図鑑には「人を見るとやぶに逃げ込む」とあります。逃げ込んだやぶのあたりを見てももちろん見つかるものではありません。
その後、中央道の側道を車で走っていて木の枝からやぶに逃げ込むアオジを何回か見かけました。気がつけば身の回りにかなりいるようです。現時点でアオジは私が最後に覚えた鳥です。ですから出会うとなんとなくうれしいのです。
珍しくないが知らない
ホタルカズラは特に珍しい花ではないという知人は四十年前から知っているといいます。しかし、私の回りにこの花を知っている人はいませんでした。名前も分かりやすいし、色もきれいで形も特徴があります。一度覚えれば忘れにくい花です。それでいながら知っている人は少ない、この落差は何でしょう。アオジも、野鳥に詳しい人に言わせれば特に珍しい鳥ではないのでしょう。しかし、やはり私のまわりに知っている人はいません。
日本野鳥の会の機関誌「野鳥」によれば会員は毎月減り、先月はついに五万人を割っています。私のように山に登るようになってから「自然」に関心を持った立場から言えば、登山人口が増えているといわれながら野鳥の会の会員が減るというのは理解しにくいことです。
多忙な生活を強いられていることで自然とかかわることの楽しさを奪われているとすれば、その時間を確保することは大事なたたかいです。