フェド−2
                  鉄のカ−テンの向こうにあったもうひとつの世界

ロシアとソ連

ロシアカメラが市場に安価で登場してくるのは、ソ連崩壊後のことであるが、それまでは鉄のカ−テンに閉ざされていて我々のような一般市民はその製品にお目にかかれるようなことはめったに無かった。

僕が描いていたソ連のイメ−ジは抑圧されているという印象である。何かに押さえつけられているといつも感じていた。たしかにアメリカに対抗すべく宇宙開発に力を注いできたソ連という国は見た目には先進国であり、社会主義国のリ−ダ−という存在ではあったが、それが仮の姿であると感じていたのぱ僕だけではないだろう。
僕が描いているソ連のイメ−ジは、ショスタゴ-ヴィッチの交響曲である。あの重苦しい旋律を初めて聞いたのは22才の頃だと思う。なんともやりきれない気分にさせられたのを覚えている。

ここで社会主義の功罪を論ずるつもりはないし、また論ずる資格も僕にはないと思うが、20世紀に生まれた過去の思想と決めてかかるにはあまりにも多くの問題が残されていると思う。何故に社会主義思想が台頭してきたのかという歴史上の問題を常にこれからも振り返る必要があると思う。

さて、このカメラはフェド。初期型はバルナックライカをそのまま真似たコピ−ある。初期型には手袋を嵌めていても操作しやすいように巻き上げノブや巻き戻しクランクを大きくしたフェドシベリアなんていうモデルもあってなかなかユニ−クである。
2型からは距離計部とファインダ−を一体化した一眼式連動距離計方式を採用している。もちろんこちらのほうが使いやすいのであるが、これが発展していくと3型、4型、5型となりだんだん個性がなくなり、面白くもないモデルとなってくる。
一番おもしろくてユニ−クなのぱ、やはりこの2型である。ドイツの模倣でも日本の模倣でもないこのモデルは、カメラマニアの興味を惹くのに十分な魅力を持っている。特筆すべきは使いやすさであろう。ライカほどではないにしろ、他のロシアカメラよりも一歩優れているのである。もちろんロシアカメラは個体差がものすごくあるので、僕の所有するものが特別に操作性にすぐれている可能性もあるのだが。

このフェドという名前は、刑務所の所長の名前からとったという説がある。つまりこのカメラは刑務所で作られたという可能性が高い訳で、そうすると社会主義に抵抗した人たちが思想犯として刑務所に入れられて、このカメラを製作したと考えられなくもない。このカメラのビスをとめた人たちはどんな人たちだったのだろうなどと考えていると、ちょっとやりきれなくなってくる。

ライカよりも優れているのは、裏蓋が着脱式であるということである。ライカを使っている人はそんなことを言う人はあまりいないが、あれほどフィルムの装てんが難しいのはバルナックライカだけであろう。もちろんキヤノンとかもそのコピ−みたいなものだから同じことがいえるのだが。

昨年の今ごろに発売されたクラカメ専科という雑誌におもしろい記事が載っていた。なんと中国にはフェド2型をそっくりコピ−したモデルがあるのだ。モデル名は「南京」である。

      

詳しくは朝日ソノラマ刊 「クラシックカメラ専科」No63 ライカブック ’02 のバックナンバ−を手に入れていただければいいのだが、ライカをコピ−して発展したフェドをまた社会主義国中国が真似をしているというのは、タダ一言「すごい!」と言いたくなる。いったい特許とかは社会主義国にはあるのだろうか。

みのかんのフェド2

手に入れたときの価格は送料を入れて一万前後だったと思う。レンズなしの価格である。これにジュピタ−の35mmのレンズを常時付けてスナップをしている。日本のカメラが忘れた金属の質感がそのままこのカメラには残っている。やはりカメラは金属でなくてはと、このカメラをながめていてつくづく思う。
ややゴツゴツした操作性も、アバタもエクボ。これもまたたまらない魅力である。

べたぼれのような評価であるが、欠点がある。低速シャッタ−に制限があるのは、使用頻度からして我慢できるが、アクセサリ−シュ−にかなり問題がある。ストロボでもファインダ−でも装着はできるが固定ができないのである。

                  
                     改造したアクセサリ−シュ−

仕方なく、お得意の改造に踏み切る。とはいっても本体に改造を加えるわけではないので簡単ではあるが。
まず最初に誰でも考えるのが、ジャンクのストロボの差込部を使うことであるが、これは強度の点で無理である。仕方なくジャンクの山のダンボ−ル箱から、シュ−差込型小型露出計のジャンクを見つけた。これは金属製なので強度の点ではまったく問題ない。
これを元に、ジャンクカメラのシュ−の部分を取り外し、ドリルでビス穴を開けて2液式の強力接着剤をかましてビス止めして出来上がりというわけである。
こんな改造ができるのも、ジャンクカメラの山があるおかげであるが、なぜこんなものがあるかといえば「いつか役に立つことがあるだろう」というだけで集めていたからである。

で、例の中国製のコピ−であるが、ここの部分はどうなっているかとよくよく見れば、シュ−の部分もやっぱりそのままのコピ−。少しは考えたらと言いたくなるのは僕だけではないだろう。

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