ジャンクカメラの研究 4 
 キヤノンFTb
僕の所属する写真クラブのYさんよりキヤノンFTbの修理の依頼を受けた。巻き上げができずミラ-があがりっぱなしであった。とりあえずやるだけやってみようということで引き受けた。

キヤノンFTbは、2台所有して、レストアもやっているので多少の自信はある。
まず巻き上げられない原因を探るために底蓋を開けてみると、無理に巻き上げたのかギアが食い込んだようになっている。正常な状態を見るために自分のFTbも開けて比較してみた。
結局ギアを3個外す事になり、夜中の3時頃までかかり、ようやく巻き上げられる状態になった。翌日の朝、忘れないうちに、昨夜外しておいたスプリングやバネを組み立てて、ほぼ正常にする事ができた。

スロ-ガバナ−はまったく駄目でミシンオイルを少しつけて何回もシャッタ-を切っているうちに1秒まて正確に出るようになった。

このあたりのレストアが本当は大事なのだが、夜中であったこともあり、デジカメで撮影していないのと、やや特殊なので省略し、ペンタプリズムまわりと露出計のレストアを報告することにします。



ジャンクカメラの研究 INDEXに戻る


まずは、不良個所をすべてメモにとり、ひとつひとつをチェックしながら修理および清掃します。
これをやる理由は、修理個所が今回多い事と忘れないためです。
組み立ててから、あ、あれを忘れていたということで、再度バラさなければならないということが僕の場合多いからです。
メモは以下の通りです。
レンズ FD50/1.8    前玉、張り合わせ部裏側の周辺のカビ
                   後群絞り面のカビ

露出計              不動、
                  水銀、アルカリ電池の露出差の補正

ボディ              フィルム巻き上げできず
                  スロ-ガバナ-1/8秒より低速はすべて駄目
                  絞り込みレバ−戻らず
                  フィルムカウンタ−まったく動かず
                  ミラ−の汚れおよびモルトの汚れ

ファインダ−          スクリ−ンの汚れとゴミ
                  ペンタプリズムの汚れと接眼レンズの汚れ       
まずは電池室をあけてみます。あけてびっくり。
水銀電池の液漏れがこびりついている。
しかし、これをやすりで綺麗におとしてLR44を入れてみたら、なんと露出計の指針が動いていた。これは一件落着。
次に上カバ−、軍幹部を開けようと巻き戻しレバ−のカニ目を開けようとしたら、あれれ?
ぜんぜん回らない。こういう場合あせってはいけない。逆ネジの可能性があるからである。
少しずつ様子をみると、案の定逆ネジ。しかし僕のFTbは正ネジだったと思うのだが、記憶が定かではない。
やっと軍幹部を開ける事ができた。そこでフィルムカウンタ−を指でまわしてみる。あれ!
まったく動かない。
かなり固そうである。結局これもばらさなければならない。これは予定外。バネが外れているのが原因とたかをくっていたら大間違いである。
結局ここまでばらしてしまった。さびついていたのかまつたく回らず、はずすのにもかなり苦労した。ミシンオイルを少しつけくるくる指で回しているうち、なんとか楽に回るようになった。
バネをカウンタ−パネルに通すのが難問であるが、そこは昔とったキネズカ、糸を使って誘導しながら引っ張り込むことで難なくクリア。
スタ−ト位置を軍幹部をかぶせたりしながら微調整して、ここは予定通りうまくいった。
さて、いよいよペンタプリズム周りのレストアである。写真の赤の矢印のビスを2本はずすと簡単にプリズムが外せる。これは2台のFTbのレストアで経験済みである。
プリズムを仔細に観察してみる。年式のわりにプリズムの銀浮きがなくいい状態である。
ただよく見ると細かい銀浮きが点状に多少はある。
撮影には支障ないのでこれくらいは仕方ないだろう。
ここが部分測光のファインダ−レンズである。
軽くふき取った後に空拭きをする。この時に露出計の針を引っ掛けないように注意が必要である(これも経験済み)。
それとこのときに一緒に接眼レンズの内側も掃除をしておくことを忘れてはならない。
これ忘れると、またばらさなければならないからである。
さて、ファインダ−周りのお掃除が済んで、今度は露出計の補正である。
シャッタ−ダイヤルの下にある十字上に切れ込みのはいったギア、これがポイントである。
これはピンセットで軽く持ち上がるので、このギアの噛み合わせで水銀電池とアルカリ電池の露出差の補正が可能である。
バッテリ−チェックの際ASA100で1/1000秒のところでちょうど一直線になる。
ここに最初から赤い印がついている。多分組み立ての際もここを基準に調整したのだろう。
これも経験済みで、僕の持っているFT、FTb、
FTbN、TLbはすべてこの方法で補正して、アルカリ電池で露出計をそのまま使えるようにしてある。
これて゛組み立てて完成である。このカメラは機械式なのでわりと簡単であり、一眼レフのレストアの基本的な基準みたいなもの、初心者にはお勧めである。
知り合いから頼まれたものは、自分のお遊びレストアとは違い、緊張してしまう。しかし確実にしていくという点では、これに勝る練習は無いともいえるだろう。

お金をもらうわけではないから、駄目なら駄目でそのまま返せばいいが、やはり完成してあげたい。それは決して知人の為ではない。カメラ本体のためである。カメラのために直してあげたいのである。カメラに対する愛情といっていいのかもしれない。機械や道具には心があると思う。ましや昔高価だったカメラである。プライドも持っているだろう。
今回はそれに応える事ができて僕も満足満足のレストアであり、やりがいもあったと感じている。