「はぁ……」
鍾会は寝台に腰掛けながら、何度目かの大きな溜め息を吐いた。
毎日のように訪れていたケ艾が、ここ数日一度も姿を見せていなかったからだ。
当初は辱めを受けずに安堵しているようだったが、四、五日経った頃からその様子は変わって
きていた。
『今日は何もされなかった』と安心していた彼が、『今日も何もしてくれなかった』と失意の息を
漏らすようになったのだ。
「(私…、もう……)」
太く硬い肉棒で犯される快感を知ってしまった身体は、たった数日放っておかれただけでどうし
ようもなく疼いていた。
…とその時、寝台の横の机に置かれたままの香油の瓶が目に留まった。
「……」
鍾会は虚ろな眼差しのまま、助けを求めるようにその瓶に手を伸ばした。
その頃、仕事を終えたケ艾は久方振りに鍾会の部屋へと向かっていた。
「(鍾会殿も、さすがに我慢がきかなくなっているだろうな。)」
鍾会への調教を中断したのは、勿論計算ずくの行動だった。
正気の時だけはまだ抵抗を示す彼を心から屈服させる為、敢えて放置という選択をしたのだ。
「(…素直になれば楽になれるというのに。)」
そんな事を思いつつ部屋の扉を開けると、気配を感じた鍾会が寝台から跳ね起きた。
「と、ケ艾殿っ…!?」
自慰の最中だったとはいえ、毛布を掛けていた為ケ艾の目に触れずに済んだ事にほっとした
様子だった。
しかし、ケ艾が意地の悪い笑みを浮かべている事に気付くと、鍾会の顔は見る見るうちに赤く
染まっていった。
「…一人でしていたのか? 鍾会殿。」
「ち、違う…、私は…、そんな事……、っ…!?」
ケ艾は鍾会の上に覆い被さると、両手を着物の帯で纏めて縛り上げた。
そして、抵抗する術を失った鍾会を容易く押さえ込むと、先程まで彼が自分で弄っていた肛門
に指を這わせる。
「ひっ…!」
「…滑っているな。やはり自分で弄っていたか。」
言い逃れの出来ない事実を突き付けられると、鍾会は真っ赤になって口ごもってしまう。
「ぅ……」
恥ずかしさからか、執拗に押し付けられる指から必死に逃げようとする。
だが、すでに両手の自由を奪われ、尻たぶも押さえられている状態ではそれも出来なかった。
そうしているうちに人差し指が少しずつ潜り込み、半分ほど収まったところで止まった。
「だいぶ解れている…。随分長い間弄っていたのだな。」
「…っ! 言うな…っ!!」
腸内を指の腹で擦るように刺激すると、鍾会の息が荒くなってくる。
先程までの自慰で敏感になった粘膜を擦られ、身体が急速に熱を持っていく。
「うぅ…、い、嫌だ……」
そう言いながらも、鍾会の内部はケ艾の指を迎え入れるかのように震えている。
その様子を感じ取ったのか、ケ艾は指を更に奥へと潜り込ませていった。
「あぁ…っ!」
理性を保つ余裕が無くなってきたのだろうか、鍾会の口からは甘い声が漏れてきていた。
「どうした鍾会殿、声が出ているぞ?」
ケ艾は更に鍾会の理性を削り取ろうと、指を激しく動かし始める。
「んひぃ…っ!? や、止めて…くれ…、あぅっ……」
声を抑えられないほどにまで情欲は膨らみきっている筈だが、それでも最後の理性が残ってい
るようだ。
「何故だ? 自分から指に吸い付いているくせに。」
「な…っ!? 違う…、私…は…、あぁっ…!」
腸内の敏感な場所を指で抉るように刺激され、鍾会は一際大きな嬌声を上げた。
身体がガクガクと震え、一度も触れられていない性器から透明な液が溢れ始めている。
「いい加減、身体と同じように正直になったらどうだ、鍾会殿。」
「…っ、嫌…だ……」
「ほう…。」
ケ艾はニヤリと笑い、鍾会がそう言うのを待っていたとばかりに激しく動かしていた指を止めて
しまう。
「あ……、あっ…?」
突如動きが鈍ったケ艾の指を、腸内が物欲しげに締め付ける。
「…嫌だったのだろう?」
「っ…、でも…、こんな…、これでは…、私……」
鍾会は切なげな眼でケ艾を見つめ、耐えられないと訴えているようだった。
それもそのはず、理性が崩れる一歩手前まで高まっていた身体にしてみれば、今の状態は生
殺しだ。
そこに追い打ちをかけるように、根元まで埋まっていた指もすぐに引き抜かれてしまった。
「ぅ…、そんな…ぁ……、っく…、ううぅ……」
理性と欲望の板挟みに耐えきれず、鍾会はとうとう泣き出してしまった。
「…泣いているだけでは解らないな。どうして欲しいのか言って頂かなければ…。」
「……もっと…、弄っ……、ち…、違う、私は……」
どうしようもない身体の疼きに苛まれているはずだが、それでも鍾会はあと一歩の所で踏み止
まる。
…彼の高すぎるプライドだけが屈服を拒んでいるのだと、ケ艾も分かっていた。
だからこそこうして鍾会を追いつめ、彼の最後の砦を少しずつ崩しに掛かっているのだ。
「…分かった、鍾会殿が嫌だというならここで止めよう。」
「ケ艾…殿…?」
「…帰らせて頂く。続きはご自分ですれば良い。」
「そ、そんな……」
身体の疼きに耐えられなくなって自慰をしてみたが、それだけでは満足出来なかった。
その上、身体が昂ぶった状態で置いて行かれては、もう自分一人ではどうにもならないだろう。
勿論、ケ艾の突然の行動はそんな鍾会の状態を全て分かった上での事だった。
「ケ艾殿……」
ケ艾は鍾会の両手を縛り付けていた紐を解き、ゆっくりと体を起こした。
「…では。」
寝台から下りたケ艾が背を向けると、鍾会は思わず飛び起きて彼の着物の袖を掴んだ。
ケ艾が振り向くと、鍾会はボロボロと涙を零しながら必死に声を絞り出した。
「っく……、い、嫌だ…、ケ艾殿…っ…、ひっ…く…、行かないで…くれ……」
しゃくり上げながら必死に制止する鍾会の姿に、ケ艾は思わず笑みをこぼした。
「…やっと素直になってくれたか、鍾会殿。」
ケ艾は震える鍾会の身体を抱きしめると、その耳元に囁きかける。
「…では、どうして欲しいのか正直に言って頂きたい。」
そう言って身体を離すと、鍾会はフラフラと寝台へ登り、自ら尻たぶを広げて恥ずべき場所を
晒した。
今までに見たことのないその淫らな姿に、ケ艾も思わずゴクリと喉を鳴らした。
「…わ、私…は…、ケ艾殿の…、その…、立派なモノでないと、もう満足できない…から…、せ、
責任をとって欲しい…!」
「ふふ…、鍾会殿らしい。」
ケ艾は満足げに笑いながら鍾会の腰を手で支え、無防備に晒された肛門を勃起したモノで貫
いていく。
肉棒が根元まで埋め込まれると、鍾会は身体を悦びに打ち震わせた。
「あうぅ……、奥まで…っ、入ってる…!」
余程待ち遠しかったのか、早速腸内が肉棒にまとわりついていく。
軽く動かして粘膜を擦ると、それだけで鍾会の口から喘ぎ声が漏れ出した。
「ふぁっ…! と、ケ艾殿ぉ…、あぁ…っ、もっと……」
「挿れられてすぐお強請りとは…、はしたないぞ鍾会殿。」
何日も放っておかれた挙げ句散々焦らされたのだから、そうなってしまうのも無理はなかった。
それでも鍾会は、いつものように憎まれ口を叩く事もなく謝罪の言葉を口にした。
「っ…うぅ……、す、すまない……」
「…本当に素直になったな。」
そう言うとケ艾は、絡みついてくる粘膜を押しのけるようにしながら抽送を速め、奥の方まで蹂
躙していく。
「ひぅ…! あぁっ…、お、奥が…、いっぱいに…なって……」
鍾会はその動きに反応し、腸内を締め付け粘膜を密着させて快感を貪った。
肉棒が奥を突けば更に奥へ引き込むかのように蠢き、引き抜くような動作をすれば腸内が逃
がすまいと吸い付いていく。
「ぁ…、嫌だ…っ…、抜かないで…、もっと突いて欲しい…!」
鍾会はケ艾の動きに合わせるように腰を振り、惚けた顔で更なる快感を強請る。
ケ艾がそれに応えるように腸壁を擦ると、鍾会は甘い声を上げて仰け反った。
「ふあぁ…、んんっ、凄い…、うぁ…っ…!」
汗ばんだ身体がガクガクと震え、肛腔が射精を促すかのように強く収縮し始める。
「鍾会殿、中に出して欲しいのか?」
「あ…ううぅ…、欲しい…。中に…、出してくれ…!」
肉棒が深く挿入されると、腸内が包み込むように蠢く。
中で出して欲しい、という鍾会の言葉が嘘ではない事がすぐに解る反応だった。
「ふぁ…っ…、ケ艾殿…、私の中…に…、っ…、出して、くれ…。」
鍾会は抽送の快感に打ち震えながら、腸内射精を求めて声を絞り出していた。
肛腔が今まで以上に強くケ艾のモノを締め付け、射精欲を刺激する。
「ふふ…、了解した。」
熱く湿った粘膜に包まれ、ケ艾の射精欲も限界に達していた。
程なくして、腸内を出入りしていた肉棒がその限界を伝えるかのように微かに膨らんだ。
「ひぃっ…、大きく…なって…、あうぅ……」
鍾会は体を震わせ、射精を受ける悦びを今か今かと待ち構えていた。
「くっ…、出すぞ…、受け取れ…っ!」
ケ艾は鍾会の腰を引き寄せ、肉棒を腸腔の奥深くまで押し込み、そのまま叩き付けるように欲
望を解き放った。
「っ…、うあぁ…!」
同時に鍾会も絶頂に達し、それに呼応するかのように腸壁がケ艾のモノを強く締め付ける。
「ふぁ…、まだ…出てるぅ……」
どうやら、鍾会を放っておいたここ数日、ケ艾の方も溜まっていたらしい。
その溜まったものを吐き出すように、ゆっくりと抽送しながら最後の一滴まで絞り出していく。
暫くしてようやく射精が終わり、肉棒が抜き取られると、肛門から白く濁った液が大量に漏れ出
した。
「っ…、はぁ、はぁ…、ふあぁ……」
肛門から粘液を吐き出す感触に、鍾会は恍惚としながら深い溜め息を吐いた。
「ケ艾…殿……」
ケ艾を見つめる鍾会の表情は、わだかまりや躊躇いが無くなった、晴れやかなものだった。
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