授業ノート-運動療法学01
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-LESSON1 運動療法とは-
1.運動療法とは
 「身体が障害を受けたり、疾病に侵された際、その機能の回復をはかり、よりよい状態を維持するために、身体の運動を科学的に適用する治療手段」。「筋骨格系、神経系、内臓諸器官の不調、不全、破綻などに起因する運動能力の障害に対し、医学ならびに運動療法学などの基礎理論を背景にした運動をその治療に応用するもの」。

2.運動療法の目的
 (1)変形の矯正
 (2)関節の機能の改善
 (3)筋力の増大
 (4)筋肉・運動器官の共同性の獲得
 (5)筋力の耐久性の増加
 (6)運動スピードを高める

3.実施上のポイント
 患者が運動療法の意義・目的を理解し、医療スタッフに協力的であることが大切です。

 そのためには、
  ・医療スタッフの思想や態度が共通していること。
  ・やさしい部分から始めて、徐々に難しいものを習得させること。
  ・ゴール設定を適切に行なうこと。
  が必要です。
-LESSON2 運動療法の種類-
1.運動要素別の種類
 (1)関節可動域運動
 (2)筋力増強運動
 (3)筋持久力運動
 (4)協調性運動
 (5)平衡運動(バランス運動)
 (6)全身持久力運動

2.技法別の種類
 (1)神経筋再教育
  ・系統的発生的治療法:Temple Fay
  ・神経筋促通法(PNF):Kabat、Knott
  ・神経発達学的促通法(NDT):Bobath
  ・発達学的治療法:Rood
  ・回復段階的治療法:Brunnstrom
  ・超早期療育:Vojta
 (2)徒手療法(骨・関節・筋膜・筋)
  ・関節運動学的アプローチ(AKA)
  ・マイオセラピー(筋・筋膜摩擦伸張法)
  ・関節モビライゼーション(関節授動術)
  ・Mckenzie、Maitland:疼痛緩和
  ・Kaltenborn、Paris:関節の動きを正常化

3.疾患別運動療法の種類
 (1)腰痛症:Williams-exercise
 (2)脊椎椎体圧迫骨折:Bohler's-exercise
 (3)末梢神経障害:Buerger-exercise
 (4)失調症:Flenkel-exercise
 (5)脊柱側彎症:Klappの匍匐運動
 (6)肩関節周囲炎:Codman's-exercise
-LESSON3 運動療法の適応と禁忌-
●適応
 (1)痛み
 (2)関節拘縮
 (3)軟部組織の硬結
 (4)筋・腱の器質的変化
 (5)骨の破壊
 (6)神経の変性
 (7)内臓器官の機能低下
 (8)脈管系の機能低下に対して
 (9)脳の器質的障害に対して
 (10)精神機能の異常
 (11)全身機能調整
●禁忌
1.絶対禁忌
 (1)絶対安静の重篤な患者
 (2)持続的あるいは不安定な狭心症
 (3)発作直後の不安定な心筋梗塞
 (4)安静時血圧拡張期120mmHg以上、収縮期200mmHg以上
 (5)全身疾患の急性期
 (6)高熱・悪寒
 (7)激痛時

2.相対禁忌
 (1)安静時血圧拡張期110mmHg以上、収縮期180mmHg以上
 (2)運動に伴なう血圧の異常な上昇
 (3)伝導異常:左脚ブロック、WPW症候群、LGL症候群、二枝ブロック
●その他
 冷汗、胸痛、激しい動悸、顔面蒼白、チアノーゼ、息切れ、めまい、嘔気、筋肉・関節の痛み、脱力感などを患者が訴えたときには運動療法を中止し、様子を見ます。
-LESSON4 各運動の特徴(1)-
●等尺性運動(isometric-exercise)
 1.概容
   関節を動かすことなく筋が収縮する運動です。筋の全長は変化しません。
 2.長所
  (1)関節運動を伴なわないので、関節リウマチや変形性関節症などの有痛性疾患に有効です。
  (2)筋力強化の効果が出やすい運動です。
  (3)等張性運動比べてエネルギー消費が少ないので、術後などに有効です。
  (4)訓練時間が少なくてすみます。
 3.短所
  (1)関節可動域訓練を兼ねることができません。
  (2)関節運動感覚が入力されません。
  (3)実際の運動に即していません。
  (4)血圧に大きな影響を与えます(心疾患・脳血管疾患に注意します)。

●等張性運動(isotonic-exercise)
 1.概容
   関節運動を伴なって筋が収縮する運動です。
 2.長所
  (1)筋張力、筋持久力の双方の強化が期待できます。
  (2)筋力強化だけでなく、関節可動域訓練、協調性訓練としての効果も期待できます。
  (3)実際の運動に即しています。
 3.短所
  (1)有痛性関節疾患には不適応な場合が多くあります。
  (2)消費エネルギーが大きく、疲れます。

●等速性運動(isokinetic-exercise)
 1.概容
   筋の収縮力に関係なく、運動速度を一定に保つような運動です。
   ※サイベックス・マシーン(Cybex isokinetic exerciser)を用いて訓練します。
 2.長所
   筋力がうまく発揮されていない角度の把握ができ、関節角度全般にわたって効果的な筋力強化が期待できます。
 3.短所
   機械がないとできません。
-LESSON5 各運動の特徴(2)-
●自動介助運動(MMT1〜2のとき、MMT3以上で痛みがあるとき)
 1.概容
  筋力が弱く、患者自身の力で運動できない場合には、自動的な収縮に加えて、理学療法士や器械器具の助力によって運動を行ないます。
 2.適応
  (1)麻痺の回復期
  (2)自動運動で痛みのある場合
  (3)骨折や術後で、骨片の転位が起こる可能性があるとき
 3.目的
  (1)関節可動域の維持
  (2)筋力増強
  (3)固有受容器を刺激して筋を再教育
 4.注意点
  代償運動がおこりやすい運動です。

●自動運動(MMT3のとき)
 1.概容
  患者自身の筋力のみによって行なわれる運動です。
 2.目的
  (1)関節可動域の維持
  (2)持久力訓練
  (3)協調性訓練
  (4)全身調整運動

●抵抗運動(MMT4〜5のとき)
 1.概容
  抵抗に逆らって行なう運動です。
   ※抵抗は徒手、器械(重錘・バーベル・鉄アレイなど)によって加えられます。
 2.筋力増強を目的とする場合
  負荷は最大筋力の2/3以上必要で、1/3以下では作用しないとされています。
   ※1/3〜2/3の間では、負荷の大きさにほぼ比例します。
 3.持久力強化を目的とする場合
  負荷を比較的小さくして、運動回数(または時間)を多くし、疲労を感じるまで行ないます。
 4.徒手抵抗運動の長所
  (1)訓練中、患者を観察することができます。
  (2)運動方向を正しく導くことができます。
  (3)筋力が弱い場合に、適当な抵抗を与えることが容易です。