授業ノート-基礎運動学11 | ||||
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-LESSON1 異常歩行とは- | ||||
●異常歩行(跛行) ・歩容が健常者と異なるだけで、すべてが歩行障害に当てはまるわけではありません。 ・疾病診断の手がかりになることもあります。 ・個人差や心理的状態でも歩きぶりが異なるので注意します。 |
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-LESSON2 正常歩行の変形(歩き方のくせ)- | ||||
1.船乗り歩行(sailor gait) ・歩隔を広くして歩きます。 ・骨盤や肩が上下左右に大きく動揺する歩き方です。 ・腰椎の前彎が強いときにも起こります。 2.スイング歩行(swing gait):いわゆる、「モンローウォーク(Monroe walk)」 ・中殿筋の収縮をわざと妨げ、骨盤を左右に大きく降下させ、殿部を大きく振ります。 ・エネルギー消費の大きい歩き方です。 3.行進歩行(majestic gait) ・歩行率が低く、歩行周期の長い歩行です。 ・単脚支持期が長く、遊脚側の足底は地面の近くを通ります。 4.気取り歩行(mincing gait) ・踵接地のかわりに、足底全体で接地します。 ・歩幅は短くして、足早に歩きます。 5.前かがみ歩行(slouch gait) ・肩をすぼめ、腰を過伸展して、膝を屈曲した姿勢をとります。 ・短い歩幅でゆっくりと歩きます。 6.疲労歩行(fatigue gait) ・股と膝を屈曲して、重心を低くして歩きます。 ・足の運びはゆっくりとして、同時定着時期が延長しています。 |
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-LESSON3 異常歩行の観察- | ||||
●観察上の注意事項 1.症状の的確な把握 2.持久性、バランスおよび調整力の一般的な評価 3.筋力テストの結果の確認 4.歩行訓練計画の準備 5.歩行パターンの不安定性、不経済性の検出 6.残存する健常要素の発見 ※前後左右から歩行を観察し、痛みがあれば記録します。 ※どの時点で異常歩行が出現したかも記録します。 ●一般的所見 1.運動が左右対称か否か 2.運動の滑らかさ 3.腕の振り 4.体幹の動き 5.身体の上下運動 ●特殊所見 1.頭部の位置 2.肩の位置 3.骨盤の前後方向への傾き 4.股関節の屈伸、内外転、内外旋 5.膝関節の安定性、屈伸の程度 6.足関節の動き 7.踵接地、立脚中期、足指離地における足の状態 |
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-LESSON4 異常歩行の原因その1:運動器疾患- | ||||
1.脚長差 (1)3cm以下:他の身体部位の代償運動によって、外観的にみられないこともあります。 (2)3cm以上:立脚相に尖足位になりやすくなります。 (3)5cm以上:長いほうの下肢は、遊脚相に股関節や膝関節を過度に屈曲します。 ※脚長差によって生じる異常歩行を、硬性墜下跛行といいます。 2.股関節屈曲拘縮 ・腰椎と対側股関節の代償運動がおこります。 ・患側下肢の歩幅が短くなります。 3.膝関節屈曲拘縮 ・脚長差があるときの異常がすべて出現します。 ・患側は、立脚相に踵の接地が困難になり、立脚中期以降は下腿の前傾が著しくなります。 ・30°以下の拘縮では速い歩行のとき、30°以上では常に異常が見られます。 4.膝関節伸展拘縮 ・遊脚相には、股関節の大きな分回し運動がおこります。 ・踵接地時の衝撃が強くなります。 5.足関節拘縮 (1)尖足変形の場合:遊脚相に膝を高く上げ、足指から接地します(鶏歩:steppage gait)。 (2)踵足変形の場合:蹴りだしの力が弱くなります。 6.関節の不安定性 ・関節可動域が過大なため、体重負荷時に異常な関節運動が起こります。 |
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-LESSON5 異常歩行の原因その2:痛み- | ||||
●逃避性歩行(antalgic gait) ・痛みがある場合におこる、痛みを避けるような歩行です。 ・患側下肢がそろりと接地し、体重が負荷される立脚相は短くなります。 1.腰背痛 (1)両側性:体幹が前屈位となり、歩幅が短い、遅い歩行です。 (2)片側性:前屈と、健側あるいは患側への側屈姿勢で歩きます。 2.股関節痛 ・炎症性疾患では屈曲、外転、外旋位になりやすいため、膝を屈曲して代償します。 3.膝関節痛 ・20〜30°の屈曲位をとることが多く、患肢はつま先歩行となります。 ●間欠性跛行(間欠性歩行困難症) ・下肢の動脈硬化による血行障害や、腰部脊柱管狭窄症によっておこる、疼痛性異常歩行です。 ・痛みは下腿三頭筋の部分に多く生じます。 ・しばらく休息すれば、痛みが消失して歩行可能になります。 |
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-LESSON6 異常歩行の原因その3:神経筋疾患- | ||||
1.末梢神経筋疾患 (1)大殿筋歩行 ・大殿筋(股関節伸筋)の筋力低下によっておこります。 ・立脚相に重心線が股関節の後方を通るように、体幹と骨盤を後方に引いた歩行となります。 (2)中殿筋歩行 ・中殿筋(股関節外転筋)の筋力低下によっておこります。 ・トレンデレンブルク徴候:患側が立脚相になると、対側の骨盤の下がります。 ・トレンデレンブルク歩行:片側の障害で、代償的に頭部や体幹を患側に傾けます。 ・動揺歩行:両側の障害で、体幹を左右に振って歩きます。立脚相から遊脚相に著しくなります。 ・筋ジストロフィーで典型例が観察されます。 (3)大腿筋群の筋力低下 ・大腿四頭筋の筋力低下:立脚相に体幹を前屈し、大腿部前面に手掌をつき、膝を伸展位に保持して歩きます。 ・ハムストリングスの筋力低下:反張膝(膝関節の過伸展)が目立ちます。 (4)下腿筋群の筋力低下 ・前脛骨筋の筋力低下:垂れ足となり、鶏歩がおこります。 ・腓腹筋麻痺:踵歩行になります。 2.中枢神経疾患 (1)痙性歩行:脳血管障害など、皮質脊髄路(錐体路)の病変で生じます。 a.片麻痺 ・発症直後は弛緩性麻痺となり、上肢は振り子様の動き、下肢は鶏歩となります。 ・一定期間後に痙性片麻痺に移行します。 ・立位姿勢では、患側上肢は屈筋群、下肢は伸筋群の筋緊張が高まります(ウェルニッケ・マン肢位)。 ・歩行時は、上肢の振りがなく、下肢を外転して、円弧状の軌跡をとります(草刈り歩行)。 b.両側性麻痺:対麻痺、四肢麻痺、両麻痺、両側片麻痺があります。 ・弛緩性対麻痺で近位筋筋力低下:筋ジストロフィーに似た異常歩行がみられます。 ・弛緩性対麻痺で遠位筋筋力低下:垂れ足になり、鶏歩がみられます。 ・痙性対麻痺や両麻痺、両側片麻痺の屈曲型:高度な下肢屈筋群の緊張があると、立位保持や歩行は困難です。 ・痙性対麻痺や両麻痺、両側片麻痺の伸展型:はさみ足歩行(股関節伸展・内転・外旋位で歩行)が典型的です。 ・四肢麻痺:運動障害が重度で、歩行はほとんどできません。 (2)パーキンソン歩行 ・小刻み歩行:前屈姿勢で、歩幅が短く、足底を地面に擦るような歩行です。 ・すくみ足歩行、すくみ現象:静止立位からの最初の1歩の踏み出しが困難になります。 ・矛盾性運動:聴覚的、視覚的なリズムがあれば、すくみ現象が消失して、普通に歩行可能となります。 ・加速歩行:前傾姿勢で歩き始めると、次第に歩幅が狭くなり、足の運びも速くなります。 (3)運動失調性歩行 a.小脳性運動失調 ・よろめき歩行、酩酊歩行:身体動揺の大きい、歩隔を広くした不安定で遅い歩行です。 b.脊髄性運動失調 ・踵打ち歩行:遊脚相に足を高く上げ、踵接地に続いて足底を地面に叩きつけるように立脚相へ移行します。 ※踵打ち歩行では、深部感覚障害のため、視覚を頼って足下を見つめます。 3.心因性要因 ・器質的な異常所見がない場合に疑います。 ・ヒステリー性歩行:一定のパターンはありません。 |
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