授業ノート-基礎運動学08
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-LESSON1 姿勢と重心-
1.姿勢(posture):身体の構えあるいは全身の形をあらわします。
 (1)構え(attitude):頭部、体幹、四肢の各体節の相対的な位置関係をあらわします。
   ※例:上肢外転位、体幹前屈位など。
 (2)体位(position):身体が重力の方向とどのような関係にあるのかをあらわします。
   ※例:立位、背臥位、側臥位など。

2.重心
 (1)重心について
  ・物体の重心:物体の各部にかかる重力の作用点を、ひとつに合成したものです。
  ・重心線:重心を通る垂直線のことです。
 (2)人体の重心
  ・人体の重心は、骨盤内の、仙骨のやや前方(S2前縁)にあります。
  ・男性は足底から56%の位置、女性は55%の位置になります。
  ・小児の重心は、これよりも高くなります。
 (3)重心動揺
  ・立位では、頭部や重心はいつも動揺しています。これを重心動揺といいます。
  ・重心動揺は、床反力計で測定します。
  ・重心動揺の面積は、幼児から10歳代で減少していき、20歳代で最小になります。
   ※20歳代を越えると面積が増加していきます。
  ・閉眼すると動揺が増強し、重心がやや前方へ移動します。
-LESSON2 立位姿勢-
1.安静立位姿勢
 (1)立位姿勢保持の3要素
  ・安定性
  ・非対称性
  ・交代性
 (2)安静立位姿勢の特徴
  ・自発的な身体動揺がわずかです。
  ・重力の影響が最小です。
  ・保持のための筋活動、エネルギー消費が最小です。
 (3)安静立位姿勢で持続的な筋活動を行なう筋
  ・抗重力機構:重力に抗して立位姿勢を保持する機構です。
  ・抗重力筋:抗重力機構で働く筋群のことです。
  ・主要姿勢筋:安静立位姿勢を保持するための抗重力筋群のことです。
   ※例:頸部筋、脊柱起立筋、腹筋、腸腰筋、大腿筋膜張筋、大腿二頭筋、腓腹筋、ヒラメ筋、前脛骨筋

2.立位姿勢での安定性について
 (1)重心の高さ:低いほど安定性が良くなります。
 (2)支持基底の広さ:広いほど安定性が良くなります。
   ※支持基底:両足底およびその間の部分を合計した面積です。
 (3)支持基底と重心線:重心線が支持基底の中心に近いほど、良くなります。
 (4)質量:大きいほど安定性が良くなります。
 (5)摩擦:床との接触面の摩擦抵抗が大きいほど良くなります。
 (6)分節構造物:単一構造物のほうが安定性が良くなります。
 (7)心理的要因:視線の遮断や、高所から見下ろした場合に安定性が低下します。
 (8)生理的要因:姿勢反射や抗重力機構の異常があると、安定性が低下します。
基本的立位姿勢の理想的アライメント
(左右方向) (前後方向)
・外後頭隆起
・椎骨棘突起
・殿裂
・両膝関節内側の中心
・両内果間の中心
・耳垂
・肩峰
・大転子
・膝関節前部(膝蓋骨後面)
・外果の前方

-LESSON3 姿勢の分類-
1.臥位 がい(lying, supine) ※「背臥位(はいがい)」ともいいます。
 [特徴]支持基底が広く、重心位置の低い、安定した姿勢です。
 (1)prone lying(腹臥位 ふくがい)
 (2)side lying(側臥位 そくがい)
 (3)half lying(ファウラー体位)
 (4)crook lying
 (5)across prone lying
 (6)sit lying

2.座位 ざい(sitting)
 [特徴]重心は低いのですが、重心線の位置は支持基底の後縁に片寄ります。
 (1)long sitting(長座位 ちょうざい)
 (2)forward lean sitting
 (3)half sitting

3.膝立ち位 ひざだちい(kneeling)
 [特徴]支持基底は両下腿前面で構成されますが、重心が高く、重心線も支持基底の前縁に近く、不安定です。
 (1)kneel sitting(正座 せいざ)
 (2)half sitting
 (3)prone kneeling(四つばい位)
 (4)side sitting(横すわり)

4.立位 りつい(standing)
 [特徴]支持基底は狭く、重心も高いのですが、下肢に力があれば保持が容易な姿勢です。
 (1)close standing(ロンベルク肢位)
 (2)high standing
 (3)step standing
 (4)half standing
 (5)toe standing

5.懸垂位 けんすいい(hanging)
 [特徴]両手は肩幅よりも広い間隔を取り、つよく把握して、全体重を支持しています。
 (1)arch hanging
 (2)half hanging
 (3)prone falling
-LESSON4 立位姿勢の検査法-
1.ベッドサイドにおける検査法
 (1)支持基底を変える:立位姿勢で両足の内縁を密着させたり、つぎ足、片足立ちを試みます。
 (2)閉眼する:ロンベルク試験を行ないます。
 (3)肩甲帯(胸部)あるいは骨盤帯を前後左右に急に押して、バランスを崩します。

2.バランス安定性時間計測検査
 ・水平枠内に両足をつけて、片足で30秒立ちます。

3.バーグ・バランス検査
 ・高齢者のバランス能力を、姿勢、動作パフォーマンスで評価します。

4.機能的リーチ検査
 ・片方の肩を90°屈曲し、上肢をできるだけ遠くまで伸ばします。
 ・高齢者の転倒の危険性を予測します。

5.立って歩け検査
 ・高齢者が転倒しやすい動作を観察します。
 ・椅子からの立ち上がり→歩行→向きを変える→椅子へ座る、の順に行ないます。

 ※立って歩け時間計測検査(TUG)
  ・「立って歩け検査」の時間を計測します。
  ・20秒以下だった場合は自立、30秒以上かかった場合は補装具の使用を検討します。

6.椅子間移動
 ・脳性麻痺児や痙性麻痺患者の動作の連合を判定します。
-LESSON5 疾患による異常姿勢-
1.骨関節疾患による異常姿勢
 (1)円背、脊柱前彎症
  ・骨粗鬆症、脊椎圧迫骨折、脊椎カリエスなどが原因です。
 (2)脊柱側彎症
  ・先天異常、背筋の麻痺、神経線維腫症、左右脚長差、股関節の内外転拘縮、疼痛性に伴なう筋緊張異常など。

2.神経疾患による異常姿勢
 (1)ウェルニッケ・マン肢位
  ・脳卒中による痙性片麻痺、脳性麻痺による痙性四肢麻痺でおこります。
 (2)頭部・体幹の前屈姿勢
  ・パーキンソン病の錐体外路障害でおこります。
 (3)両足を開いて支持基底を広くした構え
  ・小脳障害で見られます。