授業ノート-基礎運動学07
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-LESSON1 運動処方-
●運動処方:ある目的のために運動をするとき、最適な運動課題を決定することです。

1.運動処方の対象
 (1)競技選手のトレーニング・第一線復帰
  ・競技種目ごとに詳細に分析されています。
 (2)一般健常者の健康維持・増進
  ・個人の目的に沿って処方します。
 (3)障害者の治療
  ・どの程度の運動で、どこまで機能回復が可能かを予測して処方します。

2.運動処方の基本条件
 ・有効性と安全性(運動の量と質)が基本条件です。
 ・運動処方は、有効限界と安全限界の範囲内に設定されます。

3.運動量をあらわすもの
 (1)運動強度:心拍数、酸素摂取量、代謝当量(MET)、主観的運動強度(RPE)、最大筋力に対する割合などです。
 (2)時間:1日に何分実施するかをあらわします。
 (3)頻度:1週間に何回実施するかをあらわします。
  ※通常は漸増抵抗プログラムによって、運動量の調整を行ないます。

4.身体運動の種類
 (1)有酸素性運動
  ・最大心拍数75%、1日30〜50分、週3〜5回程度行ないます。
  ・例:歩く、ジョギング、ゆっくり泳ぐ。
 (2)無酸素性運動
  ・最大筋力の40〜50%、1回4〜5分程度行ないます。
  ・例:懸垂、ボール投げ、重量挙げ、全力疾走。

5.メディカルチェック
 (1)病歴の問診:最も重要な情報で、理学検査や臨床検査への示唆となります。
 (2)身体所見に関する理学検査:呼吸循環器系の所見が重要です。
 (3)臨床検査
-LESSON2 運動負荷試験の方法-
1.目的
 (1)潜在的な異常や疾病の誘発(発見)をします。
 (2)心疾患患者の心予備力の評価をします。
  ※心予備力:最大運動時の仕事量と安静時の仕事量の差をいいます。

2.様式:動的運動負荷試験が主です。
 (1)静的あるいは等尺性運動負荷試験:握力など、局所の筋力によるものです。
 (2)動的あるいは等張性運動負荷試験:階段昇降、歩く、走るなど、動的身体運動によるものです。

3.方法
 (1)マスター2階段試験
  ・年齢、性別、体重で定められている回数を、一定時間で、凸型の2段の階段昇降を行なう単一負荷法です。
  ・心電計と昇降台があればどこでも実施でき、集団テストにも有効です。
  ・負荷が少なく、正確性に欠けます。
 (2)トレッドミル(無限走行盤)
  ・ベルトの移動速度と台の傾斜で負荷量を制御します。
  ・適応範囲が広く、慣れの影響もありません。
  ・生理的反応を定位置で記録することが可能です。
   ※多段階漸増負荷法を行ない、運動中の全酸素摂取量や心拍数を記録します。
  ・転倒の危険があり、高負荷では血圧測定が困難です。
 (3)エルゴメーター
  ・車輪の回転数と抵抗の大きさから、仕事量を定量的に定めます。
   ※仕事量(kgm/min) = 1分あたりの回転数(回) × 1回転で進む距離(m) × 重錘の重さ(kg)
  ・トレッドミルより価格や重量が下で、移動も容易です。
  ・慣れの影響が大きく、全身運動ではありません。
  ・自転車エルゴメーター:体重が負荷とならないので、その分の考慮が必要です。
  ・腕エルゴメーター:下肢が利用できない者などが利用します。自転車よりも低値を示すので注意です。

4.運動負荷試験の種類
 (1)最大運動負荷試験
  ・それ以上運動が続けられなくなるまで運動強度を増加します。
  ・直接的にVO2maxを計測することが可能です。
  ・運動終点(end point):運動を停止する時点。運動強度の上限です。
  ・目標心拍数(THR)の設定
   a.運動負荷試験の運動終点:最高心拍数の85〜90%
   b.心肺機能向上の目標:最高心拍数の70〜85%
   c.緩やかな代謝機能改善:最高心拍数の50〜60%
    ※最高心拍数:VO2maxと同時に記録された心拍数です。
 (2)最大下運動負荷試験
  ・安全性と簡便性を考慮し、間接的にVO2maxを計測します。
   ※心拍数をもとに、計算図表でVO2maxを予測します。
 (3)主観的運動負荷試験(RPE)
  ・主観的負担度を15点尺度で数値化します。
  ・15点尺度の10倍値は、運動時の心拍数にほぼ一致します。
-LESSON3 運動負荷試験での遵守事項-
1.運動強度は充分低いレベルから行ないます。

2.負荷強度は徐々に増加(漸増)していきます。
 ※健常者は2METSずつ、患者は1/2METSずつ増加させます。

3.開始前や運動中の、中止すべき徴候に注意します。
 ※中止すべき徴候が現れた場合は、ただちに中止します。

4.負荷試験終了後、少なくとも回復期の7〜10分は観察を続けます。

5.METSは各プロトコールから計算します(VO2maxからも算出可能です)。
METSの計算
※原則 1MET = VO2 ÷3.5
1.歩行時 VO2 = 速度(m/min) × 0.1 + 3.5
2.ジョギング・走行 VO2 = 速度(m/min) × 0.2 + 3.5
3.自転車エルゴメーター VO2 = { 仕事量(kgm/min) × 2 +300 } / 体重(kg)
4.階段昇降 VO2 = 高さ(m) × 回数(/min) × 1.33 × 1.8 + 3.5 × 回数(/min) / 10

-LESSON4 練習の諸原理-
●トレーニング(一定の練習による身体の適応を利用した体力増強)によって最大の効果をもたらすためには、最適の運動(質と量)が重要です。

1.過負荷の原理:トレーニングにはある程度以上の強度が必要です。

2.頻度の原理:有酸素運動を1日15〜60分、週3〜5日実施します。

3.転移の原理:ある要因強化のトレーニングが、予期しない要因の強化に結びつくこともあります。
 ※危険因子を顕在化することもあるため、注意が必要です。

4.特殊性の原理:目的とするものに最も適当な種目を選択します。

5.訓練可能性の原理:トレーナビリティ(増強の限界)があります。
 ※トレーニングを重ねるたびに、増強されるもの(可能性)が減少していきます。

6.随意刺激の原理:筋の随意収縮による運動が必要です。

7.漸進性の原理:運動強度と運動時間を漸増していきます。

8.過剰訓練の原理:過負荷によって一過性に体力は低下します。
 ※低下した体力は休息によって回復し、以前よりも高い体力となります(超回復)。

9.動機づけの原理:疲労・努力・退屈さを克服する目的意識が必要です。

10.適合性の原理:個別性を重視します。