授業ノート-神経学08
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-LESSON1 反射とは-
●反射
 刺激に対して生体がみせる合目的、不随意な応答で、比較的一定の様式を示し、反射中枢で統合されています。主に脊髄・脳幹レベルの運動制御は反射によって行なわれ、生体を侵襲から防ぐ上で重要な役割を果たしています。

●特徴
 1.応答は意志を必要としません。
 2.応答パターンは単純で定型的です。
 3.応答パターンを引き出す刺激も単純です。
 4.充分な刺激があれば、必ず応答が得られます。

●反射運動の種類
 1.加えられた刺激による区別:伸張反射、加速反射など
 2.刺激受容器による区別:表在反射、深部反射など
 3.反射弓を構成するシナプス数による区別:単純シナプス反射、多シナプス反射など
 4.反射弓の関与する脊髄節による区別:脊髄節反射、脊髄節間反射など
 5.応答運動による区別:屈曲反射、伸展反射など

●反射統合
 ・中枢神経系は基本要素となる反射(単純反射)を複数統合しています。
 ・上位中枢は統合している応答パターンを利用して、合目的な運動を行なっています。
 ・下位の中枢は、上位の中枢から抑制性制御を受けています。
 ・運動統合レベルが上位へ移行(脊髄→大脳)すると、運動は複雑になります。
-LESSON2 反射弓-
●反射弓 はんしゃきゅう
 ・反射に関与する神経系の構造のことです。
   →構成要素のいずれかが障害されると、反射が低下します。
 ・反射弓を構成する中枢神経よりも、より上位に位置する中枢神経によって抑制されます。
   →上位の中枢が障害されると、抑制がなくなり、反射が亢進します。

●反射弓の構成要素
 1.受容器:感覚刺激を神経信号に変えます。
 2.求心性ニューロン:神経信号を反射中枢に伝えます。
 3.反射中枢:末梢からの入力神経信号を識別して、出力神経信号を形成します。
 4.遠心性ニューロン:反射中枢からの神経信号を効果器に伝えます。
 5.効果器:神経信号にしたがって応答をおこします。
反射弓
受容器 求心性(感覚)ニューロン 反射中枢(切り替えの場所)
効果器 遠心性(運動)ニューロン

-LESSON3 筋紡錘・腱紡錘と神経線維-
●筋紡錘 きんぼうすい
 1.特徴
  ・筋の長さを検出する受容器です。
  ・筋内の筋腹にあり、長さは6〜8mmです。
  ・筋線維と並列に並んでいます。
  ・中央は非収縮性で、受容器を含みます。
  ・両端は収縮性の錘内筋線維があり、錘外筋線維に結合します。

 2.錘内筋線維:太い核袋(かくたい)線維と、細い核鎖(かくさ)線維に分けられます。
  (1)動的核袋線維:動的γ線維の活動で興奮します。
   ・1次終末の長さ変化への感度を高めます。
   ・2次終末にはあまり影響しません。
  (2)静的核袋線維:静的γ線維の活動で興奮します。
   ・1次終末やIa群線維の発射間隔を制御します。
   ・II群線維の発射頻度に影響します。
  (3)核鎖線維:静的γ線維の活動で興奮します。
   ・2次終末の感度を調節します。

●腱紡錘 けんぼうすい(腱受容器、ゴルジ終末)
 ・筋の張力を検出する受容器です。
 ・筋腱移行部(筋線維の終末近く)にあり、Ib線維が多数分布します。
 ・筋線維と直列に並んでいます。

●筋紡錘・腱紡錘関連の神経線維(「総論」の分類表参照)
 1.神経線維の種類
  (1)遠心性線維
   ・α線維:錘内筋線維を支配する、閾値が低く太い線維です。
   ・γ線維:筋線維(錘外筋線維)を支配する、閾値が高く細い線維です。
  (2)求心性線維
   ・Ia群線維:筋紡錘の1次終末(筋紡錘らせん型終末)から出る線維です。
   ・Ib群線維:腱紡錘から出る線維です。
   ・II群線維:筋紡錘の2次終末(筋紡錘散型終末)から出る線維です。

 2.α運動ニューロンとγ運動ニューロンの関係
  (1)α運動ニューロン
   ・末梢からの求心性入力(Ia群線維による)と、上位中枢からの入力を受けます。
   ・上位中枢からの入力の一部は、「γ運動ニューロン-筋紡錘-求心性(Ia群)線維」という経路(ガンマ環)で入力されます。
   ・筋紡錘はγ運動ニューロンによって感受性が制御されます(ガンマ・バイアス)。
  (2)アルファ・ガンマ連関
   ・γ運動ニューロンが興奮すると錘内筋線維が収縮し、α運動ニューロンへの求心性入力(Ia群)が増加します。
    →すると、α運動ニューロンも興奮して筋収縮が起こり、筋紡錘の緊張が緩み、求心性入力(Ia群)が減少します。
    →このままでは、筋が短縮して、筋紡錘が弛緩したままになってしまいます。
    →そこで、上位中枢からの運動指令が、αとγ運動ニューロンを同時に興奮させます(アルファ-ガンマ連関)。
-LESSON4 伸張反射・屈筋反射-
●伸張反射 しんちょうはんしゃ:単シナプス反射です(介在ニューロンはありません)。
 ・反射の経路
  (1)骨格筋を急速に伸ばすと、筋紡錘が興奮します。
  (2)筋紡錘の発する求心性入力が、Ia群線維を通り、脊髄に伝わります。
  (3)同じ筋の運動ニューロン(α線維)に単シナプス性に興奮を伝えます。
  (4)興奮によって筋収縮が起こります。
  (5)筋が短縮すると筋紡錘への刺激が減り、求心性入力が減少します。
   ※伸ばされた筋がもとの長さに戻るように働きます(自己調節機構)。

●屈筋反射 くっきんはんしゃ:多シナプス反射で、介在ニューロンが入ります。
 ・四肢の皮膚に疼痛刺激が加わると、刺激から遠ざかるように四肢の屈筋が収縮します。
 ・肢の動きから屈曲反射、運動の目的から逃避反射、刺激の性質から侵害受容反射ともいいます。
 ・刺激が強いと肢全体の屈筋が活動して、屈曲共同運動になります(反射の拡延)。
 ・求心性ニューロンには、皮膚神経線維、筋紡錘のII群線維、筋膜のIII群線維、関節内からのものがあります。
 ・屈筋には興奮性、伸筋には抑制性にニューロンが結合します(相反神経支配)。
-LESSON5 交叉性反射-
●交叉性伸展反射 こうさせいしんてんはんしゃ:下肢に屈筋反射が起こると、対側肢が伸展します。
 ・片側肢で体重を支持して、刺激から身体を遠ざけるのに役立ちます。
 ・求心性ニューロン側枝の結合が反対のため、両側肢の運動パターンが逆転します(二重相反神経支配)。

●交叉性屈曲反射 こうさせいくっきょくはんしゃ:肢を伸展位にして対側肢に刺激を加えると、肢が屈曲します。
 ・刺激(求心性インパルス)によって、脊髄が逃避最終位置を決定します。
-LESSON6 脊髄節間反射-
●脊髄節間反射(長脊髄反射)
 頸膨大と腰膨大部において、左右連合線維を介して、両上下肢に複雑な応答を起こします。

 1.引っかき反射:脊髄動物の背部を刺激すると、同側後肢でひっかくような運動が起こります。

 2.前肢後肢反射(四肢間反射):四足歩行に関係するパターンです。
  ・前肢から後肢への下行性反射と、後肢から前肢への上行性反射があります。
  ・例えば左前肢の刺激によって、左前肢屈曲、右前肢伸展、左後肢伸展、右後肢屈曲が起こります。
-LESSON7 反射の中枢制御-
1.脊髄の抑制機構:上位中枢の制御を受けます。
 (1)弱い刺激:反射応答は限局性です(脊髄の抑制機構によって反射の拡延が防止されます)。
 (2)強い刺激:反射応答は同一体節内両側、あるいは複数体節同側性です(反射の拡延=集合反射が起こります)。

2.網様体脊髄路(もうようたいせきずいろ)による制御
 ・網様体による脊髄の制御の大部分は興奮性です。
 ・抗重力筋の緊張維持、姿勢や歩行に重要な働きをします。
 ・通常は基底核や大脳皮質から抑制性制御を受けています。
  ※抑制が除去されると、筋緊張亢進が起こります(除脳固縮)。

3.前庭脊髄路(ぜんていせきずいろ)による制御
 ・延髄の外側前庭核(ダイテルス核)から脊髄同側を下行し、伸筋の運動ニューロンと屈筋のIa抑制ニューロンに興奮性結合をします。
 ・卵形嚢と球形嚢からの入力を伝えて伸筋緊張を高め、緊張性迷路反射にも関係します。
 ・三半規管から入力を受けて、眼と頭部の協調運動、加速的な頭部の動きに対する平衡速動反射に関係します。

4.赤核脊髄路(せきかくせきずいろ)による制御
 ・多シナプス反射が促通されます。

5.小脳による脊髄の制御
 ・脊髄や脳幹の反射を間接的に制御します。
 ・小脳障害で、筋緊張低下が起こります。