授業ノート-精神医学04
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-LESSON1 老年期精神疾患-
●老年期に問題となる主な精神症状
 1.認知症:アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症
 2.うつ病、抑うつ状態:抑うつ、不安、引きこもり、孤立、喪失体験
 3.せん妄

●初老期・老年期の認知症性疾患
 1.治療が困難な疾患
  ・変性性疾患:アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、脊髄小脳変性症など。
 2.予防が重要な疾患
  ・脳血管性疾患:多発性脳梗塞、脳出血、ビンスワンガー病など。
   ※血圧・血糖値・コレステロール値のコントロールを行なって予防できます。
 3.治療が可能な疾患
  ・外科的疾患:正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、脳腫瘍など。
  ・代謝性疾患:甲状腺機能低下症、ビタミン欠乏症など。
  ・炎症性疾患:脳炎、髄膜炎など。
-LESSON2 認知症の定義-
●認知症の定義
 脳機能のうち、特に知的機能の全般的低下で、慢性および進行性な症候群です。記憶、思考、見当識、理解、計算、学習能力、言語、判断などの脳高次機能が広範に障害されます。意識の混濁はありません。障害が重篤な場合には、いわゆる植物状態になります。

●認知症の原因
 神経細胞の脱落・減少が原因となって、多数の高次皮質機能障害に基づく症状がおこります。
 有病率は加齢とともに増加し、女性の方が高くなっています。
-LESSON3 認知症の症状-
1.記憶の障害:認知症では、初期に記憶が障害され、新しいことが覚えられなくなります。
   ※進行すると、失見当識(日時・場所・人がわからなくなります)、作話が認められます。
2.言語の障害:聞いたり読んだりして理解できなくなり、スムーズに喋れなくなります。
 ・反響言語:話しかけられたことをオウム返しで繰り返します。
 ・同語反復:同じ言葉を繰り返します。
 ・語間代:言葉の語尾を繰り返します。
3.認知能力の障害:失認、失行、失読など。
4.作業能力の障害:簡単な図形を書いたり、料理、更衣、洗面などがうまくできなくなります。
5.人格変化:怒りっぽい、涙もろい、疑い深い、自発性に乏しいなど、性格傾向がひどくなります。
6.その他:心気症(些細な身体の不調にこだわる)、うつ状態、幻覚・妄想、せん妄状態など。
-LESSON4 喪失体験とせん妄-
●喪失体験:加齢と共に様々な「喪失」を体験します。
 ・身体面:運動機能(心肺機能、視力)の喪失、種々の病気(癌、糖尿病、高血圧)など。
 ・精神面:知的機能(記憶力、判断力)の喪失。
 ・生活面:定年退職、配偶者・友人の喪失、子供の自立・別居、生活環境の変化など。

●せん妄:認知症とはまったく別物なので注意です!!
 ・基礎疾患や代謝疾患患者に、環境的変化(入院など)が加わって生じます。
 ・意識混濁、意識の変容した状態で、外見的には「ねぼけた」状態に見受けられます。
 ・多くは1〜2週間のうちに回復します。
 ・このときの記憶はほとんど障害されている(覚えていない)ことが多いです。
 ・夜間に多いので、夜間せん妄とも呼びます。
 ・アルコール離脱時に生じるものを振戦せん妄と呼びます。
 ・環境調整(夜間の睡眠の確保)や基礎疾患の治療、抗精神病薬で治療します。
-LESSON5 生理的健忘と認知症による健忘の違い-
老化に伴なう生理的健忘 認知症による健忘
原因 加齢による生理的な脳の変化 脳の器質的疾患
健忘の範囲 体験の一部分を忘れる 体験したこと自体を忘れる
判断力 判断力の低下は見られない 判断力の低下を伴なう
病識 忘れっぽいことを自覚し、思い出そうとする 忘れたことを自覚しなくなる
学習能力 新しいことを学習する能力は残っている 新しいことは覚えられない
日常生活 ほぼ差し支えない 障害される
進行状況 少しずつしか進行しない 増悪傾向

-LESSON6 いろいろな認知症性疾患-
●アルツハイマー型認知症
 ・アミロイド沈着物や老人斑が神経を変性・壊死させておこる?(仮説)
 ・老年期の認知症の50%を占めます。

●ピック病
 ・大脳神経細胞の中に、ピック小体と呼ばれる異常な塊が形成されます。
脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症の鑑別
脳血管性 アルツハイマー型
病識 初期にはある ないことが多い
進行 階段状
(良くなったり悪くなったり)
緩徐に進行
神経症状の有無 部分的な麻痺やしびれ、
知覚障害があることが多い
初期には少ない
身体の持病との関係 高血圧、糖尿病など、
基礎疾患を持つことが多い
基礎疾患との関係は少ない
特徴的傾向 精神的に不安定になることが多い
情動失禁
落ち着きがなかったり、
深刻味がないことが多い
認知症の性質 まだら
部分的に能力が低下している)
全般性
全般的に能力が低下している)
人柄 ある程度保たれる 変わることが多い

-LESSON7 患者への対応-
1.基本姿勢
 ・尊敬の念を忘れないようにします。
 ・「認知症だからできない」と思い込まず、できることを見つけます。
 ・言語以外の意思表示(表情など)をよく見ます。
 ・認知症=気楽、などという間違った見解は捨てます。
 ・家族のつらい気持ちも察するようにします。

2.何度言ってもすぐ忘れる場合
 ・繰り返し何度も言い聞かせ、根気よく指導します。
 ・「後で」、「次に」というより、「○時に」、「○曜日に」と具体的に約束します。

3.暴力行為のある場合
 ・表情の変化を見逃さない:急速に表情を変化させたら、「○○さん」と呼びかけます。
 ・身の危険があれば逃げて人を呼び、危険がなければじっと目を見て手を握ります。
 ・ストレスの原因を探ります。
 ・昼間に充実した活動をさせ、ストレスを解消させます。

4.徘徊する場合
 ・時間が充分にある場合:一緒に散歩につきあいます。
 ・時間がない場合:ケースバイケースで。その場限りの嘘も必要となります。
 ・衣類や靴に名前と電話番号を書いたり、縫い付けたり、徘徊センサーをレンタルします。

5.被害妄想がある場合
 ・納得いくまで話しを聞きます(共感)。
 ・「ものを盗られた」と言っている場合には、一緒に探します。
 ・関係が良好なら、妄想の訂正を試みます。
  ※はっきり否定はせず、「私は○○だと思います」などのように。