授業ノート-リハビリテーション概論02
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-LESSON1 障害の分類-
1.ICIDH(International Classification of Impairments Disabilities and Handicaps):1980年、WHO
 ICIDHは障害を段階別にとらえたものです。

  Impairment level → Disability level → Handicap level

 (1)Impairment level:生物学的レベル(機能・形態障害)
 (2)Disability level:個人レベル(能力障害)
 (3)Handicap level:社会的レベル(社会的不利)
 (4)Illness:disablement as experience(体験としての障害、主観的障害)


●段階別でとらえたICIDHへの批判・誤解
 (1)矢印が運命論的:ある病気が起こると必ず社会的不利が生じる!?
 (2)矢印が時間的順序?:病気の後遺症が「障害」だという誤解
 (3)マイナスだけでなくプラスを見るべき:ICIDHはマイナス面だけを見て偏っている
 (4)環境が重要:ICIDHでは環境的因子が考慮されていない
 (5)社会的不利の分類が不備:社会的不利は7項目にしか分類されていない
 (6)障害のある人自身の参加がなかった:障害のある人の立場が考慮されていない
 (7)欧米中心である:分類項目が欧米の文化を前提に作られていた
 (8)主観的障害が重要:「体験としての障害」の理解が希薄だった
 (9)疾患から直接起こる社会的不利:能力障害の段階を経ないケースがあった


2.ICF(International Classification of Functioning):2001年、WHO
 ICIDHを改め、障害を同時並行・相互関連でとらえたものです。
客観的障害 健康状態
↑↓ ↑↓ ↑↓
心身機能
身体構造
←(同時並行)→ 活動 ←(同時並行)→ (社会的)
参加
↑↓ ↑↓ ↑↓
環境因子 個人因子
↑↓
主観的障害 主観的体験

●障害構造論の実践的意義
 1.障害を総合的にとらえる
  ・疾患、機能・形態障害は当然とし、生活能力面、社会生活、心理的問題までとらえます。
 2.各レベル(ICIDHの障害レベル)の間の相対的独立性を重視する
  ・基底還元論(物事の構成要素にさかのぼって考える)は全ての場合に有効ではありません。
  ・リハビリテーション医学では、各レベルの障害に、同時並行的かつ統合的に働きかけます。
 3.異なる専門職間の共通認識のため
  ・職種によって障害のとらえ方には特有の偏りがあり、各レベルの混同が起こりがちです。
  ・ディスコミュニケーションを防ぐため、共通認識の枠組みとして障害構造論が重要になります。
  ※ICFコードは専門家の共通言語として存在しています。
-LESSON2 障害の心理(障害の受容過程)-
1.ショック期
 肉体的苦痛はありますが、感情が鈍麻しています。

2.否認期
 身体的状態は安定しています。障害が容易に回復しないことが少しずつわかってきますが、心理的防衛機制としてそれを認めようとしません。

3.混乱期
 障害が完治しない現実に直面し、周囲に対して攻撃的になったり、逆に内向的、自罰的になったりします。

4.解決への努力期
 混乱期の攻撃的、内向的態度では問題が解決しないことを知り、客観的事実を認め、前向きな努力がなされます。

5.受容期
 価値観の転換が生じ、障害を自己の一部として受け入れます。
-LESSON3 各障害に対するリハビリテーション的アプローチ-
1.Impairment level:生物学的レベル(機能・形態障害)に対する、機能回復アプローチ
 ・機能障害を直接改善しようとするもの:関節可動域訓練、筋力強化訓練、バランス訓練など

2.Disability level:個人レベル(能力障害)に対する、実用能力向上アプローチ
 ・能力障害そのものを克服しようとするもの
 ・コーピングスキルの開発:障害を乗り越え、新しい生活を獲得すること
  (1)残存能力や潜在能力の開発・向上:ADL訓練など
  (2)適切な補助具の使用による能力向上:義肢、装具、杖、歩行補助具など

3.Handicap level:社会的レベル(社会的不利)に対する、環境改善的アプローチ
 ・家屋の改造など

4.Illness:disablement as experience(体験としての障害)に対する、心理的・実存的アプローチ
 ・客観的な状況の改善が、主観的障害の克服に大きな影響を与えます
-LESSON4 リハビリテーション・プログラム-
●段階論的アプローチ(機能障害回復に全力を尽くす→能力障害に対応→退院と退院先の決定)
 相対的独立性に立ち、直接能力障害や社会的不利に向けた働きかけを行なわないため、有効性は高くありません。

●同時並行的アプローチ
 障害の各レベルに直接働きかけますが、基本的には分立的分業に立ち、
  ・機能障害にはPT・OT
  ・能力障害はOTやNs
  ・社会的不利にはSW
  ・主観的障害にはCP
 というように、バラバラに対応します。ゴールもバラバラで、各職種間の目標や方針はしばしば互いに矛盾しています。

●目標指向的アプローチ
 障害各レベル間の相対的独立性と相互依存性の両方を重視します。
 障害、能力、因子などを把握・分析し、個別的・個性的な目標を一人一人の患者・障害者に独自のものとして設定します。目標はリハビリテーションチームが専門性に立った実現可能な複数の選択肢を提示し、患者側がその中から一つを選択します。
-LESSON5 ゴール-
1.必要性(ニーズ)
 必要性(ニーズ)とは、障害を持った人たちが社会生活を営む上で必要な事柄を指します。患者やその家族の「要求(デマンド)」とはしばしばくい違いが生じます。

2.評価
 必要性(ニーズ)が障害レベルの「社会的不利」を基盤にするのに対して、評価では機能障害、能力障害、社会的不利それぞれについて現状把握を行ないます。

3.ゴール
 ゴールとはその患者が到達しうる目標のことで、評価を根拠として設定されます。ゴールの設定が不適切な場合は、無駄な訓練や働きかけが生じることが増えます。「援助」とは、ニーズとゴールのギャップを埋めるものです。