授業ノート-解剖生理学13
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-LESSON1 感覚について-
●感覚:環境の変化(刺激)を感覚装置を使って感知することをいいます。
●感覚装置:受容器(神経終末)、感覚神経線維(上行性伝導路)、脳(大脳皮質感覚領野)の3つの要素をいいます。感覚装置によって受容され生じた感覚は、受容部位に投射されます。
 ※適刺激(閾値以上の刺激)→感覚受容器→感覚神経→上行性伝導路→大脳皮質感覚領野

1.感覚の種類
 (1)体性感覚:皮膚感覚(表面感覚)、深部感覚
 (2)特殊感覚:嗅覚、聴覚、視覚、味覚、平衡感覚
 (3)内臓感覚:臓器感覚、内臓痛覚

2.感覚の質
 ・音の違い、味の違いなど、同じ聴覚や視覚であっても感覚が異なります(感覚の質の違い)。

3.刺激の種類とその受容器:各受容器は特定の刺激に敏感です。
 (1)力学的刺激(音・振動・圧力・張力・加速度など)、電気的刺激 → 機械受容器
 (2)電磁的刺激(可視光線など) → 光受容器
 (3)熱刺激(温度) → 温度受容器
 (4)化学的刺激(味物質・臭い物質・CO2・O2) → 化学受容器

4.適刺激と順応
 (1)適刺激 てきしげき(適当刺激):最も小さなエネルギーで興奮する刺激をいいます。
  ※痛み刺激に関しては適刺激がなく、すべての刺激が痛み刺激となり得ます。
 (2)順応:刺激が持続的に与えられたとき、自覚した感覚が次第に弱まる現象です。
 ※痛み刺激は順応しにくく、臭い刺激(嗅覚)は順応しやすい傾向があります。

5.感覚受容器と感覚受容細胞
 (1)感覚受容器:一次感覚神経線維の終末が感覚を受容する器官であるものです。
 (2)感覚受容細胞:二次感覚神経線維末端に接続する感覚上皮細胞が受容するものです。
   ※特殊感覚に多く分布し、感覚受容細胞との間にシナプスを介します。

6.感覚器に生じる電気現象
 ・刺激によって受容器は脱分極(視細胞は過分極)を生じます。
 ・全か無かの法則に従わず、刺激の大きさに比例します。
 ・このような性質の電気現象は、活動電位とは区別し、起動電位(受容器電位)と呼びます。
-LESSON2 体性感覚-
●皮膚感覚
 皮膚の機械受容器にはマイスナー小体、メルケル触盤(しょくばん)、ルフィニ小体、パチニ小体、毛包器(もうほうき)などがあり、各々皮膚の変形に応答します。また、自由神経終末である温受容器と冷受容器は別個に存在します。痛覚を引き起こす侵害受容器も自由神経終末です。

1.皮膚感覚の分布密度: [敏感]痛覚 > 触覚 > 圧覚 > 冷覚 > 温覚[鈍感]
 (1)痛覚:100〜200個/cm2(自由神経終末)
 (2)触覚・圧覚:25個/cm2(マイスナー小体、メルケル触盤、ルフィニ小体、パチニ小体)
 (3)冷覚:2〜13個/cm2(自由神経終末)
 (4)温覚:1〜4個/cm2(自由神経終末)

2.二点弁別閾:2点を分離して感じ取れる最小の間隔をいいます(小さいほど敏感です)。
 ・舌の先や指先で1〜2mm、背中で50〜150mmくらいです。

●深部感覚
 深部感覚の機械受容器は、筋紡錘やゴルジ腱器官などの骨格筋に存在するほか、関節にも存在します。関節の位置や運動の検出に役立つのは、これらのうち主に骨格筋の機械受容器です。受容器には筋紡錘、腱紡錘、ルフィニ小体、パチニ小体があります。
 (1)運動感覚:位置感、運動感、抵抗感、重量感
 (2)振動感覚:パチニ小体
 (3)深部感覚:C線維、自由神経終末、持続的鈍痛、筋痛、頭痛
-LESSON3 内臓感覚-
●内臓感覚(臓器感覚)
 (1)空腹感:ブドウ糖(視床下部、肝臓、小腸)、飢餓収縮(胃)
 (2)口渇感:浸透圧(視床下部)、体液量(血管、心房)、咽頭粘膜乾燥
 (3)便・尿意:直腸壁、膀胱壁
 (4)性感:外性器

●内臓痛
 内臓へ行く自律神経と一緒に走っている求心性線維および脊髄神経の求心性線維によって痛みが伝えられると考えられます。平滑筋などの伸展や痙縮(けいしゅく)、発痛物質(ブラジキニン、ヒスタミン、セロトニン)などが引き起こします。

●関連痛(かんれんつう)
 原因が生じた部位から離れた場所に感じる痛みです。つまり、本来の部位の痛みとして感じないで、他の部位の痛みとしてあらわれることです。原因部と同側に生じます。

●内臓における関連痛
 痛覚伝道路の同一ニューロン群に、内臓器官からの求心性線維と皮膚からの求心性線維が収束し、それぞれがこのニューロン群を興奮させます。通常、このニューロン群は皮膚から送られてくるインパルスによって興奮し、脳はこのニューロン群の活動を皮膚の痛みと結びつけることを学習します。たまたま内臓に異常を生じて、そこから痛みの原因となるインパルスが送られ、このニューロン群が興奮すると、脳は過去の学習に基づいて判断を下し、このニューロン群にインパルスを送る皮膚に痛みがあると定位されます。
-LESSON4 特殊感覚-
特殊感覚の受容細胞と適刺激
(特殊感覚) (受容細胞) (適刺激)
1 味覚 味細胞
2 嗅覚 嗅細胞 匂い(順応が速い)
3 聴覚 有毛細胞
4 平衡感覚 有毛細胞 加速度、重力
5 視覚 視細胞

-LESSON5 特殊感覚(1):味覚-
1.味覚の生理的意義
 ・栄養になる物質を摂取し、有害な物質を拒否します。
 ・唾液、胃液、膵液の分泌を促進します。
 ・飲食物の味わいを享受します。

2.味覚の神経
 ・前2/3は顔面神経(鼓索神経、大錐体神経)、後1/3は舌咽神経、舌根部は迷走神経です。
(舌尖) ← ←   → → (舌根)
(感覚神経) 顔面神経(鼓索神経・大錐体神経) 舌咽神経 迷走神経
(運動神経) 舌下神経
3.舌乳頭(ぜつにゅうとう):味蕾(みらい)は舌乳頭に存在します。
 (1)茸状乳頭 ※幼児期のみ存在します。
 (2)葉状乳頭
 (3)有郭乳頭
 (4)糸状乳頭 ※糸状乳頭には味蕾は存在しません。

4.四基本味 よんきほんみ(基本味質 きほんみしつ)
 (1)甘味:ショ糖
 (2)塩味:食塩
 (3)酸味:酢酸
 (4)苦味:塩酸キニーネ

5.味覚閾値(みかくいきち): [閾値が高い]甘味 > 塩味 > 酸味 > 苦味[閾値が低い]
 (1)検知閾値:判断閾ともいわれ、水と区別できる値です。閾値は低めです。
 (2)認知閾値:知覚閾ともいわれ、味質がわかる値です。閾値は高めです。
 ※甘いものは感じにくく、苦いものは感じやすいということです。
 ※酸味だけは温度による影響があまりありません。

6.味覚障害:健者の示す味の感受性や嗜好性の範囲を逸脱することです。
 ※原因:遺伝性、内分泌系の機能異常、放射線性、薬剤等によるものなどさまざま。
 ※特発性味覚障害:
   ・血清亜鉛値の低下によって味蕾細胞が減少し、味覚が突如なくなります。
   ・硫酸亜鉛の内服によって、2週間前後で回復します。

7.味覚異常
 ・義歯:温度、触圧覚の感覚入力の減少によって、風味障害を生じます。
 ・充填物(つめもの):重金属(銅・亜鉛など)によるガルバニー電流が生じ、異常が起こります。
 ・歯磨剤(歯磨き粉)など:粘膜への直接刺激によって、味覚の変化が起こります。

8.味盲(みもう):特定物質に対して、味を感じない現象です。
 ・代表物質として、PTC(フェニルチオ尿素)があります。
 ・日本人の10%に存在し、劣性遺伝します。
 
-LESSON6 特殊感覚(2):嗅覚-
●嗅覚
 においに対する感覚をいい、嗅受容器(きゅうじゅようき)の嗅細胞(きゅうさいぼう)によって感じます。人において嗅覚は、生きるためにはあまり重要な役割は持ちません。

1.嗅覚の特徴
 (1)個人差が大です。
 (2)鋭敏ですが順応しやすい感覚です(敏感だけどすぐ慣れる)。※順応しにくいのは痛覚です。
 (3)識別される種類が多くあります(色々なにおいがある)。
 (4)嗅覚閾値は加齢と共に上昇します。
  ※嗅覚の伝導路は視床を通らずに、直接旧皮質に伝わります。
  ※嗅細胞は基底細胞から生じ、その寿命は30日です。

2.においの種類
 ・におい分子は、3〜20の炭素を含む比較的小さな物質で、たくさんの種類があります。
 ・におい分子は、揮発性であることがほとんどです。

3.嗅覚異常:においに対する感覚の異常をいいます。
 ・原因:嗅覚異常は神経障害、鼻疾患、薬剤等さまざまな原因で起こります。
 ・種類:嗅覚鈍麻、嗅覚消失、嗅覚過敏などがあります。
  ※例1:前頭葉の腫瘍の患者の半数以上で嗅覚閾が上昇。
  ※例2:副腎障害で嗅覚過敏に。
  ※例3:ビタミンA不足で嗅覚閾値が上昇。

4.嗅盲(嗅弱):特定のにおいを感じない人をいいます。
 ・日本人で青酸臭を感じないのは男で18.2%、女で5.5%、イソバレリン酸に対しては2%、メルカプタンに対しては0.1%存在します。
-LESSON7 特殊感覚(3):聴覚-
●聴覚:音に対する感覚のことで、聴覚器の有毛細胞によって感じます。
 ・ヒトの可聴域は20〜20000Hzです。※犬やコウモリでは数万Hzの超音波を聞くことができます。
 ・加齢により高音域が聞こえなくなります。
 ・空気の振動 → 骨の振動 → リンパの振動 → 基底膜の有毛細胞

●聴覚の病態
 (1)感音性難聴:蝸牛(かぎゅう)や有毛細胞、聴覚伝導路の障害で聞こえにくくなる場合です。
   ※ストレプトマイシンは有毛細胞を障害することがあります。
 (2)伝音性難聴:外耳や内耳の異常(炎症など)によって音が聞こえにくくなる場合です。
-LESSON8 特殊感覚(4):平衡感覚-
●平衡感覚
 身体の位置や運動による重力の変化に対する感覚をいい、聴覚器にある有毛細胞によって感じます。内耳にある前庭器が平衡感覚を担います。

●めまい
 (1)悪性のめまい:脳腫瘍や脳血管障害などの命に直接関わるような病気が原因で起こります。
 (2)良性のめまい:メニエール病、頭位めまい症、中耳炎、起立性調節障害、心身症等が原因。
-LESSON9 特殊感覚(5):視覚-
●視覚:光に対する感覚で、視覚器の視細胞により受容します。
 ・可視光線:ヒトが視覚として感じられる光のことで、波長では380〜780mmの範囲です。
 ・網膜 → 視神経 → 視交叉 → 視索 → 外側膝状体 → 視放線 → 視覚野(ブロードマン17野)

1.眼球の構造
 (1)外膜
  ・強膜:眼球を保護する滑らかで強靭な線維性膜で、外膜の後方5/6を占めます。
  ・角膜:外膜の前方1/6を占め、厚さ1mmの無血管透明の膜です。
     ※角膜反射や涙分泌反射を起こします。
 (2)中膜
  ・脈絡膜:強膜の内面にあり、眼球内部を暗黒にして散乱光を吸収します。
  ・毛様体:脈絡膜の前方にある海綿様肥厚部で、遠近調節をします。
  ・虹彩:毛様体の前端で、水晶体の前面を取り囲むドーナツ状の膜です。
  ・瞳孔:虹彩の中央の孔です。
 (3)内膜
  ・網膜:光を受容する視細胞を含みます。
  ・視神経乳頭部:視神経線維が放射状に集まる部分で、動静脈の出入り部位でもあります。
     ※乳頭部には視細胞がないため、視覚のうえでは盲点となります。
  ・黄斑部:黄斑部のうち、網膜が薄くくぼんだ中央部分を中心窩といいます。
  ・中心窩:視軸に一致するところで、網膜のうちもっとも視力の強いところです。

2.視細胞
 (1)杆体:明暗のみを感知します。感光色素はロドプシンです。
   ※中心窩にはほとんど存在しませんが、その周辺には多く存在します。
 (2)錐体:3種類あり、色(赤・青・緑)を識別します。感光色素はヨドプシンです。
   ※中心窩に多く存在します。
   ※錐体は杆体に比べて感度は低くなっています。

3.眼球に関する反射
 (1)対光反射:光が当たると瞳孔は縮小し、暗いところでは散大します。※死亡時に消失します。
 (2)輻輳(ふくそう)反射:近いものを注視すると、視軸は内転(鼻側寄り)し、縮瞳します。
 (3)眼瞼(がんけん)反射:ものが急に眼球に接近したり、角膜を刺激すると、眼瞼が閉じます。

4.色覚異常
 (1)全色盲:色相の区別が全くできない状態で、明度のみ合わせられます(一色型色覚者)。
 (2)部分色盲
   ・第一色盲:赤錐体の機能を欠きます。
   ・第二色盲:緑錐体の機能を欠きます。
   ・第三色盲:青錐体の機能の欠損が考えられます。
 (3)色弱:第一(赤)、第二(緑)、第三(青)色弱があり、各錐体の機能低下とみられます。