授業ノート-解剖生理学09
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-LESSON1 消化管の役割-
●消化管:消化管の運動は消化管内容物を、消化液と混和し、肛門側へ移送します。
 ・消化管の機能:摂取、機械的処理、消化、分泌、吸収、凝縮、排泄、自身の防御。
 ・消化管は迷走神経(副交感神経)の支配を受けています。
 ・三大栄養素(蛋白質、糖質、脂質)の消化酵素が特に重要です。

●消化:飲食物を分解することです。
 ・例:飲食物(米、水分) → 分解(消化液による) → 吸収しやすい物質(アミノ酸・ブドウ糖)

●吸収:栄養素を体内に(血管・リンパ管を経て)取り込むことです。主に小腸上皮で行ないます。

 ※学校で教わった覚え方:
   「十二分(十二指腸)からまわり(空腸、回腸)して、もうすぐ(盲腸)ケツ(結腸)だ、肛門だ。」
消化管の流れ
口腔 食道 小腸 大腸 肛門
1.十二指腸
2.空腸
3.回腸
1.盲腸
2.上行結腸
3.横行結腸
4.下行結腸
5.S状結腸
6.直腸
●消化管の組織
 (1)粘膜:粘膜上皮、粘膜固有層、粘膜筋板からなります。
 (2)粘膜下組織:マイスネル(粘膜下)神経叢があり、自律神経による調節がされます。
 (3)筋層:アウエルバッハ(筋層間)神経叢があり、自律神経による調節がされます。
 (4)漿膜(外膜):大部分は漿膜に覆われますが、口腔、咽頭、食道、直腸は外膜で覆われます。
  a.腹膜:消化管や付属臓器の外面を覆う漿膜です。
      ※腹水の産生・吸収が絶えず行なわれています(7リットル/日)。
  b.腸間膜:腹腔内の消化管の大部分を支えています。
      ※消化管に出入りする血管、神経、リンパ管が通ります。
-LESSON2 口腔(1):咀嚼と唾液-
●口腔
 ・重層扁平上皮の粘膜で構成されていて、角化はしません。
 ・口腔での消化作用には、咀嚼と唾液分泌があります。
 ・口峡:軟口蓋の後縁、口蓋垂、口蓋咽頭弓、舌根からなり、咽頭へと続いています。

●咀嚼(そしゃく):食物を口に入れてから嚥下するまでの一連の過程です。
1.咀嚼の役割
 (1)消化の補助作用(食塊の形成)
 (2)味の受容
 (3)唾液分泌
 (4)異物排除

2.唾液(だえき)の性質
 ・性状:唾液腺や刺激部位、分泌刺激の性質や強さによって性状も変わります。
 ・分泌量:1日1.0〜1.5リットル(安静時は毎分0.1〜0.9ミリリットル)
 ・分泌量には年齢、季節、日内変動があります。
 ・唾液腺による分泌量の比:顎下腺(60%) > 耳下腺(23%) > 舌下腺(4%)
 ・比重:1.004〜1.009
 ・pH:5.5〜8.0(分泌量が多いときは弱アルカリ性で、少ないときは弱酸性です)

3.唾液腺(だえきせん)
 ・耳下腺(じかせん):漿液性の唾液を分泌し、舌咽神経支配を受けます。
 ・舌下腺(ぜつかせん):漿液性と粘液性混合の唾液を分泌し、顔面神経の支配を受けます。
 ・顎下腺(がくかせん):漿液性と粘液性混合の唾液を分泌し、顔面神経の支配を受けます。
  ※咀嚼によって分泌量の増加が著しいのは耳下腺です。

4.唾液の働き
 (1)消化作用:唾液アミラーゼがでんぷんを分解します。
 (2)粘膜の保護
 (3)緩衝作用:主にHCO3の作用によって、pHを中性に保ちます。
 (4)成熟・再石灰化作用:虫歯の再石灰化などを行ないます。
 (5)清浄作用:その流れによって、食片、細菌、異物を洗い流します。
 (6)抗菌作用:細菌の増殖抑制、殺菌などの作用を持ちます。
 (7)排泄作用:薬物、化学物質、重金属類などが唾液腺から排泄されることもあります。
 (8)潤滑作用:磨耗などを防ぎ、嚥下(えんげ)、発音機能を円滑にします。
 (9)体液量調節作用:脱水状態のとき、分泌を抑制して、口渇感(こうかつかん)を助長します。
 (10)内分泌作用:パロチンやEGFなどを分泌します。
 (11)その他:味の享受、熱、酸、アルカリなどの希釈を行ないます。

●歯
 ・表面から、エナメル質→象牙質→セメント質→歯根膜→歯髄腔の層に分かれます。
 ・歯の種類:切歯、犬歯、小臼歯、大臼歯
 ・生え変わり、乳歯は20本、永久歯は32本です。
-LESSON3 口腔(2):嚥下-
●嚥下(えんげ):食物を口腔内から胃に送り込む一連の運動です。
 ・嚥下中枢(延髄)によってコントロールされ、1日平均600回行なわれます。
 ・食物の位置によって3相(口腔相、咽頭相、食道相)に分かれます。

1.口腔相(随意運動):口腔から咽頭(いんとう)に送られる過程です。
 舌が硬口蓋(こうこうがい)に接しながら前方から後方へ食物を送り、舌背(ぜつはい)は後下方へ傾斜します。そのため、食物は咽頭に入ります。
 ※口唇(こうしん)は閉じ、上下歯牙(しが)は咬合(こうごう)します。

2.咽頭相(不随意運動):咽頭から喉頭蓋(こうとうがい)を通過する食道への過程です。
 舌根(ぜつこん)、咽頭、軟口蓋、喉頭蓋などの粘膜中の触・圧覚刺激による、意識的に調節できない反射性の運動です(嚥下反射)。
 ※嚥下性無呼吸:口腔、鼻腔、喉頭腔に食物が逆流しないよう、呼吸が一時停止する現象。

3.食道相(不随意運動):食道の蠕動(ぜんどう)運動が開始され、4〜6秒で胃へ送られます。
-LESSON4 食道-
・重層扁平上皮(粘膜)、粘膜下組織、筋層、外膜から構成されます。
・筋性の中空管で、気管の後方に位置します。
・胸腔内で縦隔の後壁に沿って下行し、横隔膜の食道裂孔を通ります。
・甲状頸動脈、外頸動脈、食道動脈、腹腔動脈、下横隔動脈から供給を受けます。
-LESSON5 胃-
●胃
 1.位置と構造
  ・第7胸椎〜第3腰椎の間に位置します。
  ・噴門、胃底、胃体、幽門の4つの領域に分かれ、内側面を小弯、外側面を大弯といいます。
 2.栄養血管
  ・左胃動脈:小弯部、噴門部へ供給します。
  ・脾動脈(左胃大網動脈):胃底部、大弯部へ供給します。
  ・総肝動脈(右胃大網動脈、胃十二指腸動脈):幽門部、小弯部、大弯部へ供給します。
   ※大網と小網:胃をぶら下げ、安定させます。大弯部は大網、小弯部は小網があります。
 3.組織
  ・胃の内面は単層円柱上皮です。
  ・胃小窩:粘液を分泌する部分です。
  ・固有胃腺
   a.壁細胞:塩酸を分泌します。
   b.主細胞:ペプシノーゲンを分泌します。
   c.副細胞(頸粘液細胞):粘液を分泌します。
   d.胃腸内分泌細胞
 4.運動
  ・運動:蠕動運動によって、食物と胃液を混和します。
  ・移送時間:糖質が一番速く、蛋白質は糖質の2倍の時間がかかり、一番遅いのは脂肪です。

●胃液
 ・大半は胃底腺から分泌されますが、噴門腺、幽門腺からも分泌されます。
 ・分泌量:1日1.0〜1.5リットル
 ・pH:1.0(強酸性)
 ・主成分
  (1)ペプシン:蛋白質を分解します。(ペプシノーゲンが塩酸によってペプシンとなります)
  (2)塩酸(HCl):殺菌作用を持ち、蛋白質を変性させます。
  (3)レンニン(凝乳酵素):乳蛋白質(カゼイン)を凝固させて、腸内に長時間留まらせます。
  (4)粘液:胃粘膜を保護します。(胃小窩から分泌されます)
 ・分泌機序
  (1)第1相(頭相、脳相):見る、嗅ぐ、味わう、連想など、大脳への作用で分泌亢進します。
  (2)第2相(胃相):食物が胃粘膜を刺激することで分泌亢進・抑制を行ないます。
  (3)第3相(腸相):十二指腸の粘膜を刺激することで分泌亢進・抑制を行ないます。

●嘔吐(おうと):胃の内容物を反射的に急激に吐き出す運動で、防御反応のひとつです。
 ・嘔吐反射の中枢は延髄にあります。
 ・前駆症状:悪心、唾液分泌過多、発汗、顔面蒼白など。
 ・原因
  (1)消化管粘膜への有害物質の化学的刺激   ※例:腐ったものを食べたとき
  (2)迷路の刺激(平衡器官への急激な変化)   ※例:乗り物酔い
  (3)特定化学物質による中枢刺激   ※例:モルフィン、ジギタリス(強心薬)
  (4)その他   ※例:高山病、過量飲酒
-LESSON6 小腸-
●小腸
1.位置と構造
 ・小腸のうち、十二指腸は第1〜4腰椎の間に位置します。
 ・長さ6m、直径は入り口で4cm、出口で2.5cmあります。表面積は200m2です。
 ・腹腔のほとんどを占めます。
 ・消化吸収の場で、栄養分の90%を吸収します。
 ・単層円柱上皮で、腸絨毛を形成しています。
   ※腸絨毛には微絨毛(刷子縁)が密集しています。

2.小腸の運動
 (1)蠕動(ぜんどう)運動:肛門側への移送を行ないます。
 (2)分節(ぶんせつ)運動:輪状筋が働き、消化液との混和を行ないます。
 (3)振り子運動:縦走筋が働き、消化液との混和を行ないます。

3.分泌:膵液(すいえき)、胆汁(たんじゅう)を十二指腸乳頭から分泌します。
 (1)膵液:弱アルカリ性の消化液で、分泌量は1日1.0リットルです。
  a.膵アミラーゼ: デンプン → 麦芽糖
  b.トリプシン、キモトリプシン、カルボキシペプチダーゼ: 蛋白質 → ポリペプチド、アミノ酸
  c.膵リパーゼ(ステアプシン): 脂肪 → 脂肪酸、グリセリン
 (2)胆汁:弱アルカリ性で、分泌量は1日0.5リットルです。消化酵素は持ちません。
  a.胆汁酸:コレステロールの代謝産物の非水溶性脂肪を乳化し、膵リパーゼの作用を助けます。
  b.胆汁色素:肝臓の破壊された赤血球の代謝産物で、便の色(黄褐色)となります。

4.調節機構
 (1)神経性調節:自律神経によって調節します。
  ・交感神経:抑制性に働きます。
  ・副交感神経:促進性に働きます。
 (2)液性調節:消化管ホルモンによる調節機構です。
  ・ガストリン、コレシストキニン-パンクレオザイミン、セクレチンなど。
分泌調節機構
(消化産物の流れ) ・ガストリン分泌:胃酸分泌促進、蠕動運動促進
↑(抑制)
十二指腸 ・GIP(胃酸抑制ペプチド)分泌:胃酸分泌抑制、蠕動運動抑制
・セクレチン、CCK(コレシストキニン)分泌:膵液・胆汁分泌促進
↓(促進)
小腸内消化促進

5.吸収:最終消化後に、小腸上皮表面の刷子縁(さっしえん)から吸収します。
 (1)毛細血管からの吸収
  a.アミノ酸:エレプシン(蛋白分解酵素)によって分解されます。
  b.単糖類:ラクターゼ、マルターゼ、スクラーゼ(糖質分解酵素)によって分解されます。
 (2)リンパ管からの吸収
  ・脂肪酸、グリセリン:腸リパーゼ(脂肪分解酵素)によって分解されます。
-LESSON7 大腸-
●大腸
1.構造:長さ1.5m、直径7.5cmで、絨毛はありません。
 (1)盲腸:回腸から回盲弁を経て続いたところで、袋状です。虫垂(リンパ系の気管)があります。
 (2)結腸:結腸隆起、結腸ひも、腹膜垂が特徴です。
 (3)直腸:長さ15cmほどで、近位側は単層円柱上皮、遠位側は重層扁平上皮で構成されます。
       ※肛門に近いところでは角化しています。

2.役割
 ・消化は行ないません。
 ・水と電解質(Na+、Cl-)の一部を吸収します。
   ※水と電解質の90%を吸収するのは小腸です。
   ※栄養素の吸収はしません(栄養素を吸収するのは小腸です)。
 ・便の形成をします。

3.運動
 (1)分節運動:水分の吸収を効率よく行なうために行ないます。
 (2)蠕動運動:肛門への移送を行ない(食後に顕著)、便意を催します。

4.排泄
 ・摂取から排泄までは1〜3日くらい(通常は24時間)です。
摂取したものの通過時間
小腸 大腸
液体 5分 4〜5時間
個体 4時間 12〜15時間

-LESSON8 肝臓-
1.位置と構造
 ・重量1.5kgの、赤茶色をした内臓で、人体で最も大きな臓器です。
 ・右下肋部、上腹部にあります。
 ・前方は肝鎌状間膜によって、左葉と右葉に分かれます。
   ※肝鎌状間膜の下縁には、臍静脈のなごりである、肝円索がみられます。
 ・後方ではさらに、尾状葉、方形葉に分かれます。
 ・栄養血管は、門脈(2/3を供給)、固有肝動脈(1/3を供給)です。

2.組織:断面が六角形で、その角に門脈域があります。
 (1)肝小葉:機能単位です。
  ・肝細胞
  ・中心静脈
  ・類洞(クッパー細胞)
 (2)門脈域
  ・門脈、固有肝動脈、胆管の枝(肝三つ組)

3.機能
 ・代謝調節
 ・血液調節
-LESSON9 胆嚢-
・洋ナシ状(ナス状?)の筋性の袋で、底、体、頸からなります。
・40〜70mlの胆汁を貯留します。
・胆嚢管と総肝管が合流して総胆管となり、大十二指腸乳頭に向かって開口します。
 ※十二指腸への出口部分は、オッディの括約筋が取り巻いています。
-LESSON10 膵臓-
・胃の後ろにあります。
・長さ15cm、重量80gで、細長くピンクがかった灰色の臓器です。
・膵頭、膵体、膵尾に分かれます。
・消化酵素を産生します。
・栄養血管は脾動脈、上腸間膜動脈、総肝動脈の分枝(膵動脈、後上膵十二指腸動脈など)です。